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(2001.7.21 あきる野・日の出乗馬倶楽部)
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トリコのアップ
この日の騎乗馬、トリコロール。トリコと呼ばれています




トリコに騎乗
緑あふれる環境なのがお分かりいただけるかと思います。でもこのラチの外はちょっとした谷になっている・・・ここで落馬したら死ねるかも(びくびく)
これまでずっと千葉のオリンピッククラブで乗ってきましたが、あと2日(4鞍)でライセンス取得コースが終わります。オリンピックはうちから片道2時間かかることと、経済的な問題(こっちの方がでかい)で、継続は考えず、他のクラブを雑誌『乗馬ライフ』やネットで探していました。条件は、手頃な値段であることと、少なくともオリンピッククラブより近いこと、あとできれば外乗ができたら楽しいなぁ。

上記条件にかなったのは、国立市「国立乗馬クラブ」と、あきる野市「日の出乗馬倶楽部」のふたつ。
いろいろ調べてみると、国立はあまり馬術をやる感じではないみたい。日の出は、しょっちゅう競技会をやっているわけではないものの、馬術向上を目指せそうな感じがする。
ホームページを見ても、なんだかアットホームな気配がしました。
試しに電話をしてみると、オーナーの奥さんらしき女性が出て、とっても丁寧な応対をしてくれました。地図をファクスで送って欲しいと言うと、3分後には送られてきて、30秒後に確認の電話が。すごいアフターフォローだぁ。

そんなわけで、ビジターで1鞍乗せてもらうことにしました。
交通は、JR五日市線の終点よりひとつ手前、武蔵増戸駅から徒歩15分とあります。クルマ嫌いな私には、電車だけで行けるのが嬉しい。
朝9時からの騎乗を予約したので、8時45分には来てくださいとのこと。電車の接続の都合で、8時10分ごろに駅につき、朝ご飯用に買ったおにぎりを橋の途中の休憩所(?自転車寄せのような引き込み)で食べて、ハイキング気分でてくてく歩くと、「日の出乗馬倶楽部」の看板が。看板のわきの道を入ると、乗馬倶楽部はもうすぐそこでした。

比較的大きい馬場の前にある、「事務所」という看板が出ている小さな建物の前に、雑種の犬がねそべっていました。
犬に目がない私、思わず手を出したら噛まれてしまいました。ケガはしませんでしたが、大概の犬はなつかせる自信があったのになぁ、けっこうショック。
犬の声で気がついたのか、建物のなかから女性が出てきました。おそらくオーナーの奥さんです。愛想がよく、なおかつ丁寧な物腰の人で、「そちらの入り口からクラブハウスにお入り下さい」と案内してくれました。この建物がクラブハウスだったのね。

中は、大きなテーブルを10脚くらいのイスが囲んでいて、ログハウスっぽい作りです。オーナーの奥さん(これからママさんと呼ぶことに決定。ご自分で「乗馬倶楽部のママ」と名乗ってらしたし)が
「どうぞ座ってゆっくりして下さいね…今日はあとお急ぎですか?」
「いえ、そんなには」
「今日はちょっと朝、トラブルがあってねぇ…騎乗が遅くなっても大丈夫かしら?」
「あ、それはいいですけど。」
「ちょっとね、うちの馬が。もう30歳だから」
そういえば馬場の向こう、厩舎らしいところにトラックとクレーン車が止まり、ばたばたやっているらしい様子。
「あんまり見ない方がいいわよ」
それで、馬が死ぬところなのだと分かりました。30歳と言えば人間で90歳くらい、老衰なのでしょう。

そんなときですからオーナーもママさんも大変で、しかもゆうべはクラブのバーベキュー大会があったそうなので、相当忙しかったはずなのですが、きちんと応対してくれました。
8時40分ごろクラブについて、騎乗の準備ができたのが9時10分ごろ、30分くらいクラブハウスの中で待っていたのですが、会員のおじさんがいろいろとかまって下さって、退屈はしませんでした。
彼もまだ会員になりたてだそうですが、「人生で一番大事なのは出逢いだよ」と、いろんな話をして下さいました。

ママさんが「もうすぐいい馬を出しますからね、着替えは?」
私はブーツを持っているのでメットだけ持ってきてもらったのですが、相方はブーツとメットを借りるので、クラブハウスの外にサイズあわせに出ました。
中でブーツを履いて待っていると、 厩舎の前の軽トラックが動き出すのが見え、馬場を抜けてクラブハウスの前で一度止まりました。荷台に栗毛の馬がうずくまっています。獣医さんもすでに来ているらしいけど、これからどこかに連れて行くのでしょう。
トラックがふたたび動き出したとき、馬が一度だけ首を持ち上げました。あっ、まだ生きてるんだ…ちょっと神妙なきもち。

そこで、私たちの乗る馬の準備が出来た(馬装もやってありました。ビジターですしね)ので呼びに来て、小さく区切ってある方の馬場に出ました。
トラックが隣の馬場に停車し、オーナーや獣医さんが集まって何かしています。

体験乗馬は1鞍30分、一頭の馬に相方と私が続けて乗ることになりました。
騎乗馬はトリコロール。鹿毛の牡馬です。
先に相方が乗ることになったので、私はラチの外から写真を撮りつつ見学することに。
ふと振り返ると、さっきの馬をトラックに乗せたまま、獣医さんが点滴をしています。

相方の騎乗を見てると、これが悔しいことに私より上手いんだよねー。バランスがいいっつーか。
指導員さんが、相方が走ってるときにはラチ側にいて、私の方にも話しかけてくれたりするんですが、彼も「上手いですね」と言ってました。

相方が常歩で歩いてるときに、「速歩で巻き乗りってやったことあります?」
オリンピッククラブでやっていたのは軽速歩ばっかりで、軽速歩のまま輪乗りくらいはしたことがあるけど、巻き乗りまではやったことがない。(輪乗りはほぼ馬場の短辺が直径、巻き乗りは直径がもっと短い。10メートルくらい)
「ないですねぇ」
「ないですか?じゃあやってみましょうか」
そして相方に、「正反動で速歩」という指示が出る。なんかイメージとしては分かるが、実は正反動というのも今までやったことがない…
今までずっとやっていた、軽速歩の歩様に合わせて立つ、座るというのではなく、鞍にぺったり座って、速歩の歩様からくる振動に体を合わせ、反動を抜くというものらしいです。
指導員さんが近くに来たときに、「正反動って実はやったことないんですよ、聞いたことがある程度で」と言ったら、
「えっ、やったことないんですか?」
「軽速歩ばっかりやってたんで、つい立つ・座るをやってしまうんですよね」

ふと見ると、ママさんが切ったたてがみを持ってクラブハウスに入るところで、軽トラックが出ていきました。
人間と同じで、死んだ馬の形見はたてがみのことが多いです。そうか、死んじゃったか…
そっちを見てると、指導員さんが「聞きました?」
「だいたいは」
「大変な日に来ちゃいましたねぇ」
「いえいえ…30歳だったんですってねぇ」
「もうちょっと頑張って欲しかったんですけどね。でもこの夏はダメかな、と思ってたから」

さて、30分が経って相方が下馬し、続けて私が騎乗します。
指導員さんが当然のように踏み台(ここでもビールケースだった、笑)を持ってきてくれましたが、もう慣れてしまったので「この子の高さなら踏み台いらないです」と乗ってしまう。
ちょっとびっくりされてしまいました。

これまで部班運動しかやったことがなく、1頭立ては初めてだったのですが、ずいぶん勝手が違う。馬を動かすだけでも、なかなか上手く行かないんですよね。
部班で動いてるときは、馬の方も部班で慣れている馬だったので、扶助を送らなくても馬が勝手に前の馬につられて走り出したり、止まったりしている部分があったんでしょうね。(あとでママさんにそのことを言ったら、「そういうのはメリーゴーランドって言ってね、なかなか上達しないね」だそうです)
馬の個性もあるんでしょうが、踵でちょっと腹を押したくらいではびくともしないのです。蹴って蹴って、やっと歩き出し、また蹴って蹴って、やっと軽速歩が出るという具合。でも軽速歩の最中、ちゃんと脚で扶助が送れていないと、またすぐ止まる。
手綱の長さとか、座る位置など、オリンピッククラブで体得したと思ったことが全部抜けてしまいました。
するとバランスもすぐ崩れるし、なんかぎこちない騎乗になってしまう。
「もっと柔らかく乗って下さいね、立つ・座るがぎしっ、ぎしって感じになってますよ」

「なんか一生懸命乗ってますね、もっとリラックスして。」
いろいろ考えながら乗ってしまってるのがばれたらしい…ちなみにこのとき、ラチ外で写真を撮っていた相方が聞いた、私に対するコメントは「真面目に乗ってますね」という言葉だったそうです。いかんよね、趣味でやってるんだから、もっと楽しくやらなくては。

騎乗開始がずれこんだので、私の騎乗は10時15分まで。10時過ぎたので、隣の馬場に別の馬「ホクト」が出てきました。
するとトリコは突然隣の馬場との区切りになっているラチに寄っていき、歯をむいていななきます。おいおいっ。
その前にママさんが、ホクトに騎乗する人に「××さん、15分からでいい?ほら、トリコとホクト一緒に出すと」と言っていたので、指導員さんに
「この子と隣の子、仲悪いんですか?」と聞いてみると、
「仲悪いっていうか…トリコが仕切りたがりなんですよ」
「”俺に挨拶がないぞ”って感じ?」
「そうそう」

常歩のときに、「じゃあ、ちょっと鐙外してみましょうか。」
「えっ!?」ちょっと慌てる。外すって、鐙から足を抜いちゃうってこと?
「鐙から完全に脚を外して、足をすとーんと下に落とす感じで。力は入れなくていいから」
やってみると、腰のバランスだけで馬と歩いている感じがすごく伝わってくる。
「そんな感じで、深く鞍に腰を落としちゃっていいんですよ」
その状態で常歩2周ほどしましたが、自分の騎乗がすごく手綱と鐙に頼っていたんだなと実感。これは貴重な体験をさせてもらったかも。

相方がやすやすとこなした速歩の巻き乗りも、自分には無理かなぁと思っていましたが、まぁなんとか出来て、この日の騎乗はタイムアップ。
馬装解除はもちろんなく、「クラブハウスに行ってください」と言われ、中に入ると、先客のおじさん2人が「お疲れさま」と言ってくれる。
なんとなく座ってだらだらと休憩していたのですが、何というか、山小屋で居合わせた客という感じで、みんなが自然にかまってくれるんです。別にビジターだから特別扱いされてるという感じもないし。

そこに先ほど死んだ馬(フェニックスというそうです)の火葬手配などが終わったのか、技術顧問のI野先生が入ってきました。ここで一番偉い先生のはずなのに、これまた気さくに話しかけて下さる。よそのクラブのこともよくご存じみたいで、
「馬乗りであるからには、馬に触れないと。せめて馬装や、馬を引いて歩くときどこを持つか、くらいは知っておきたいね。始めから終わりまで、馬に触らないで騎乗が終わるクラブもあるんだよ、それはつまらないよね」
ご年輩ですが、テンガロンできめた粋な先生です。
続いてオーナーも帰ってきて、ようやくオーナーに会えました。
クラブの雰囲気も指導も良かったので、入会申し込みをするつもりになっていたのですが、オーナー夫妻が実に商売っ気がないぞー(笑)
入会に関して、こっちから聞かないと何も勧誘めいたことを言わないんです。
逆に言えば、入会するつもりはないけどビジターだけ、という人にはやりやすいですね。

ここでもう入会手続きをしてしまいました。
ダンナが個人会員で[入会金150,000円 + 年会費36,000円]、私が家族会員で[入会金75,000円 + 年会費18,000円]、締めて292,950円(税込み)。これを2で割ると、一人頭146,475円です。
これに一回の騎乗料2000円と指導料1000円をその都度払うことになります(回数券割引あり)。
さらに良心的なのは、ブーツやメットのレンタルが無料なこと。

帰りも、気さくなおじさん達に見送られてクラブを出ました。
なんか、私にとって新しい乗馬との出逢いのように思えた日でした。

私の騎乗
上が私、下が相方。私がへっぴり腰で乗ってるのがばればれですなぁ。
相方の騎乗

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