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(2004.2.27 あきる野・日の出乗馬倶楽部)
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今日もいつものように日の出へ。今日は2鞍の予約にしていますが、配馬はどうなるかなぁ。先週ちょっといい感じで乗れたので、アルフォンスとか乗りたいところだけど。
そう思いながら倶楽部に到着すると、ちょうど先生達がホワイトボードの前にいて、ほぼ配馬が終了したところでした。さっそく自分の配馬を見ると、11時がジュンヨー、14時がロッキー。「これまたイケイケな配馬ですねー!」「そう、今日はKYOKOさんはちょっと動く馬に乗ってもらおうと思って」とO先生。いつまでもスピードに慣れない私への親心(?)でしょう。
実は日の出の貸与馬の中で、乗ったことがない馬が3頭だけいます。ジュンヨーはそのうちの1頭で、乗ってみたいなと思っていたところでした。昔はすぐ引っかかって走る馬だったので、女性は絶対乗せてもらえなかったのですが、最近とみに穏やかになって、軽いけど引っかからなくなったらしいので、女性に配馬されるようになっています。

ジュンヨーはよく動く馬だが、ジュンヨーにはよく乗っている相方に聞いたら「丸拍車でいい」ということなので、丸拍車を装着。鞭はいいや。
馬装をしに馬房へ行くと、馬繋場で他の馬の準備をしていたスタッフ達に「ジュンヨーたぶん下乗りナシですけど、昨日いっぱい動かしてるから大丈夫ですよ」と言われました。ジュンヨーの馬房へ行くと、ジュンちゃんは馬詮棒の上から鼻面を出してきました。無口をつけようとすると、鼻面をこすりつけて甘えてくるから、なかなかつけられない。この甘えんぼめ。
馬繋場に出して、あらためて見るとデカイなー。日の出の馬の中では、背の高さではハイセイコーJRと1・2を争うでしょう。でもジュンちゃんは、いつも困ったような目をしていて、ちょっと何かあるとすぐ耳を倒す、気の小さい子。でも耳を倒すのも「絞る」感じではなくて、「なんかイヤだよう」っていう程度。しかもそれ以上、噛むとか蹴るとかは及びもつかないような子です。
ブラシをかけていても、デカくてお尻の上なんかは手が届かないっちゅーの。なのに馬房の中で寝っ転がったらしく、体中オガだらけ。んもー。背の低い私には、鞍を乗せるのも一苦労です。

馬装を終わって、馬繋場でストレッチなどしていると、レッスン開始10分前、クラブハウスからO先生が出てきて「KYOKOさん、ジュンヨー出しましょう」と言います。てっきり私が早めに乗るのだと思って、急いで頭絡をかけます。背が高いので頭の位置も高く、これで頭を上げられてしまったらアルフォンスの比じゃないよなぁ。無口を外して、ハミを口に当てると、自分から口を開けてきました。あらー、素直だねぇ。
すっかり馬装をして馬場に出ると、O先生が「昨日動かしてるから大丈夫だとは思うんですけど、ちょっとだけ僕乗りますね」ということで、10分だけ下乗りをしてもらえるそうです。
背の高いジュンヨーに、「うわーデッカイなー」と言いながら、O先生は踏み台ナシで飛び乗りして「今、見栄だけで乗りました。こんなの、仕事じゃなかったら絶対やらない」ってO先生、それなら踏み台使ったらいいじゃないですか…(苦笑)。

いったん馬場の外に出て時間まで待機し、自分で踏み台を持って馬場へ入ります。騎乗してみると、やっぱジュンちゃんデカいわー。でも横幅は思ったほどデカくないので、かえって安定感あるかも。「最初だけちょっと動きにくいかも」ということで短鞭をもたされ、とりあえず蹄跡に出て常歩しようとすると、O先生から「KYOKOさんはジュンヨー初めてなんでしたっけ?」「そうなんです」「そうですか。KYOKOさんは大丈夫だとは思いますけど、この馬に初めて乗る人にはまず止まり方を教える必要があります」要するに止まらない馬なんだな、この子…(笑)。
止まり方を教えてもらうためには、まず常歩で歩かせないと。ちょっと脚で圧迫するだけで歩き出すジュンヨー、しかもあわてて歩く感じではありません。もしかしてロッキーより乗りやすいのと違うか。「じゃあ止めてみましょう。この馬は拳を引っ張っても止まりません。拳に向かって自分の体を引き付ける感じで止めましょう」あ、なるほどね。がっちり座って腰張って、そこを土台にして止める感じだ。以前、雑談の中でO先生から「馬の鼻の前に壁を作って、そこに向かって馬を押し込む感じ」と習ったことがありますが、あれのことだな。
1度目はちょっと失敗してうまく止められず、だらだら歩かれてしまいました。2度目、今度はきっちり腰を張って拳を止め、壁に向かって押し込む、よし止まった。「そうそう、そうやって止めれば、きちんと四肢が揃ってます」と言われて馬の腹の下を覗き込むと、おお、きちんと四肢が揃った停止。こんなのロゼッタでもなかなかうまくできないのに。

「列へ」で馬場中央に整列し、挨拶。「自分で配馬しといて、どうやって部班組んだらいいか分からない部班にしちゃいました」と悩むO先生。
結局、ジュンヨー、モンブラン、ダンス、アルフォンス、コスモの順で蹄跡へ。「ジュンヨーはちょっと足が速いですから、あんまり後ろがついてこないようだったら巻き乗りして待ってあげてくださいね」と言われながら、数周常歩。常歩のうちに私も体をほぐしておこうと思って、ちょっと馬上体操。片腕ずつ上に上げて、馬のお尻に向かってゆっくり下ろしたり、足を片方ずつ鐙を外し、手で足首を持って膝を曲げたりしていると、O先生に「それだけ体が柔らかければ、何でもできますね」と言われて「い、いや、それとこれとはっ」とアセる私。

「では始めましょう。気をつけ、速歩すすーめ」かるーくふくらはぎで圧迫するだけで、すっと速歩になりました。おぉ、楽だこと。そうして出た速歩は確かに速いけど、これくらいの速さだったら他のクラブで乗ったことのある馬と変わらないし、ペースも一定なので全然怖くない。クラブハウスの横ではためく洗濯物とか、遠くで吠える犬の群れとか、やばいかなーと思うところがあっても、ジュンちゃんはあんまり気にしないみたい。物見しないし、音にもそんなに過剰反応はしない。落ち着いてるじゃん。
軽速歩で走りながら、クラブハウスにいたS田さんに、「全然安全じゃん、この子」と言ったら「だからそう言ってるじゃないですか! みんな最初は走るから怖いとか言っといて、乗ると気に入るんだから!」と反撃されたので思わず笑うと、O先生から「おや、笑う余裕がありますね」とツッコミ。はい、けっこう楽しく乗れているみたいです。

昔はハミを引っ張ると引っかかっちゃう馬だったらしいジュンヨー。いくら今は引っかからなくなったとは言っても、たぶんハミには敏感だろうと考え、できるだけ軽めに持つことにします。
そうやって走っていると、かなり軽快なんだけど、この子ってすっごくぶきっちょだな。隅角を深く回りなさいね、真っ直ぐ突っ込みなさいね、と指示してやると、彼なりに努力はするようなんだけど、「ああっやっぱりここまでしかできませーん」って感じで、浅めのところでかくかくっと曲がる。巻き乗りをすると、どうしても大きい巻き乗りになるし、がくんとスピードが落ちる。分かった、要するに横向きに体が固いんだ(もしかしたら肩が固いのかも)。そういえば誰かが、ジュンちゃんのことを「棒っきれみたい」と評していたっけな。
右手前の軽速歩に移行すると、ジュンちゃんのぶきっちょが顕著になりました。さっきの軽快さはどこへやら、上手く前に出ない感じで、急に足の運びが悪くなりました。あまつさえ、巻き乗りでは常歩に落ちそうになります。初めて鞭の必要を感じて、肩に軽く入れてみるけど、ちょっと元気が良くなる程度。脚のほうが効くみたいだな。「そこ砂が深いですから、ちゃんと推進してあげないと止まりますよ」とO先生。でも左手前では止まらなかったわけだから、つまり右手前が苦手なのか。右の肩が出にくいのかな?

横向きには固いジュンちゃんですが、速歩に落としてみると反動は固くない。繋だか飛節だか分かんないけど、クッションはいいみたいだな。別にサドルホルダーを持たなくても座れるし、けっこう安定感がある。何よりも、速歩に落としても歩度がつまらないというのがいい。この子なら鐙上げで速歩しても、落ちそうにならないかも(アルフォンスで、反動に負けて落ちそうになったことがある)。
これくらい座れると、速歩で膝の力を抜くことに気を遣ったりする余裕があります。どうしてもお尻を跳ね上げられると膝でしがみついてるみたいで、それでなおさら馬の動きを邪魔して悪循環になっているんだなー、と先週膝をすりむいてみて気が付いたので、できるだけ膝には力を入れないように、馬の動きについていくのは騎座(じゃあ騎座と座骨はどう違うの、って言われても答えられないんだけど)。
あとでN子先生には「今日はアルフォンスのときなんかより全然座れてたよ」と褒めてもらえました。アルのときが座れなさすぎるって話もあるが。

「各個に左へ」の号令で、馬場中央へ。そこで停止の号令がかかり、「ジュンヨー、蹄跡に出て駈歩してみましょうか」やったー。ジュンちゃんの駈歩は、速いけど気持ちいいらしいので、やってみたかったんだよね。
左手前で蹄跡に出ると、「あわてないで、準備ができたらゆっくり発進してください。鞭持ってるから出過ぎるかもしれませんが、様子見で鞭捨ててもいいですし」「はい、様子見で」今乗っている感じでは、引っかかっていきそうなところはないから、そんなに不安はないのです。
どうも内方姿勢が得意じゃない(分かってない?)感じのジュンちゃん。内方の手綱を軽く控えて内側を向かせ、ちょっとだけ内方脚を入れて外方を引くと、おっ、出た出た駈歩。「あー、反対ですねー」あれ。ちょっと一苦労して止めて、常歩からもう1回駈歩発進、「うーんそれも反対ですねー」。ジュンちゃん右手前が苦手なハズなのに、どうして左手前で反対駈歩が出せるんだ、私(笑)。

落ち着いて、常歩から駈歩発進しなおすと、ようやく正駈歩が出ました。あっ、いいねぇこの駈歩。すっごく座りやすくて、先日HRCのI先生が「座骨じゃなくて、面で座る感じ」と言っていたのが、なんか分かる。反動ごとにちゃんと座ってあげられる。
すいすい走ってくれるけど、ちょっとだけスピードが落ちたときにすかさずO先生が「推進して」と言ったので、座骨で押してちょっと脚を使うと、またすぐにスピードが戻ります。いやー、素直でいいわ、この子の駈歩。
2周ちかく駈けて、「はい、速歩に落としましょう、そのまま軽速歩」あら、速歩に落とすほうが難しいわ。軽速歩で半周、常歩に落として馬場中央の列へ。そのまま、他の馬が駈歩する間待機。駈歩で内によれた馬が近づいてきたのを、ジュンちゃんはちょっと見ていたけど、怖がるふうではないみたい。以前は他馬とすれ違うだけでびっくりしていた馬だったと思うけど、ずいぶん落ち着いたもんだなぁ。

駈歩を終えて、蹄跡に戻って隊列を組みなおし、しばらく速歩。気分よくさくさく走って、常歩に落として沈静化。「列へ」で馬場中央に馬を並べ、挨拶して下馬。ジュンちゃんには13時からすぐお仕事が入っているので、すぐ昼飼いをあげるようにとの指示が出ています。馬繋場に上げ、さっさと蹄の裏堀りだけして馬房に返します。
馬房の中にはすでに飼い桶がセットしてあったので、すぐ鼻を突っ込むと思いきや、ちゃんと無口を外してもらうまで待ってる。いやー、面白いなぁ、この子。手綱さえ軽くしておけば機嫌よく走ってくれるようだし、なんたってこのぶきっちょさが面白い。ぶきっちょなのに、一応は指示に従ってやってみようと努力するところがまたかわいいし。

お昼を食べて、次のレッスンまでの間、自馬会員のS先生とおしゃべりをさせていただきました。S先生は自称「漫談教授」、もと大学の先生で、前に持っていた馬と東海道を旅したという経歴の持ち主です。現在80歳にもなられるのに現役で馬に乗っておられるのですが、お聞きしたなかで外乗をしているときの話。「今日キツツキを見ましたよ。馬が先に気がついてね、馬に教えてもらった。馬は遠くのものが見えるけど、近くのものは見えないから、近くのものはこっちが見てやるんだね」「複眼なんですね」「そうだね。馬に乗ってるときはね、脚が4本でね、目が4つ、耳が4つある、1つの動物になってるんだね」一瞬言われた意味が分からなくて、ちょっと考えて分かりました。歩くのは馬の脚だから4本、目は馬の2つと人の2つの合計4つ、耳も同じ。人馬一体っていうか、馬と人が補完しあう関係ってことですよね。なんか感動しちゃったんですよ。素敵だなぁ、S先生。あんなふうに年齢を重ねても、馬と生きていけたらいいなぁ。

日の出乗馬倶楽部の馬場
↑日の出乗馬倶楽部の見取り図
(緑字:貸与馬、青字:自馬)

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