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(2001.8.4 千葉・オリンピッククラブ)
21鞍目↓





チェリーワールド、H4.4.9生まれ。
おでこのベルトが、ご病気の上様のようでしょう?
今日はついに8日間ライセンスコース最終日、5級ライセンスの試験日です。
オリンピッククラブでの騎乗ラストの日でもあります。

いつものとおり、秋葉原からバスでクラブへ。
バスの中はいつもよりすいていました。いつもは2部制レッスンですが夏時間で1部制なので、混んでいるのかと思っていたんですけれども、夏は騎乗をお休みする人の方が多いんでしょうね。料金も割高だし。
バスのなかで話し声がうるさく、眠れないなぁと思ってそっちをみたら、そのうるさい声はスタッフの人でした…何なんだ。

15時すぎにクラブについて、クラブハウスに行く途中の馬場に、馬が4頭放牧されていました。
無口頭絡だけ着けて、群になって思いっきり駆け回っています。もうそろそろ馬房に戻る時間らしく、F先生とスタッフさんが、呼んだりグラスキューブでつったりして馬たちをつかまえようとしているのですが、ちょっと寄って行ってはまた駆け出して、楽しくてしょうがない様子。
力一杯走ってる馬ってやっぱりキレイです。あの速度の馬の鞍上に乗れるようになるのはいつの日か…

クラブハウスで手続きをしている間に、馬たちはつかまって馬房につれていかれたみたいです。
さて今日のレッスンは3鞍しかなく、私の騎乗は1鞍目と3鞍目。騎乗馬はチェリーワールド。
馬装開始まで少し時間があったので、馬房に馬たちを見に行きました。
チェリーワールドの馬房を探すと…
「あんただったのー!」
以前から気になっている馬だったのです。馬房に入っているときにはいつも扉の鉄柵に歯を立て、ぐいっぽ(さく癖とも言います。馬詮棒やバケツなど、堅いところに噛みついたまま空気を飲む癖で、お腹に空気がたまって疝痛の原因になるので、あまりよろしくない)をしているのです。レッスンに出てきたのを見たこともないし、馬房の中にいるときでも常に額とうなじからのどにかけて、ベルトを巻かれているのが病気っぽさをかもしだしているので、病気で使わない馬なのだと思っていた。
今日のレッスンに指定されているので病気ではないことは分かりましたが、常に柵に噛みついているこの子、素直に無口をかけさせてくれるんだろうか?

しばらくすると、スタッフさんや先生がほとんど馬を引き出していました。
どうやら今日はレッスン生が少ないせいなのか、蹄洗場に連れてくるところまではやってくれるらしい。無口をかけるのはやらずにすんだ。
S先生が近くにいたので、
「チェリーはまだこっち(蹄洗場)にいないですよね?」
「チェリーちゃんはね、まだごはん食べてたから一番最後に連れて来ようと思って」
その会話のついでに、ふと思いついたので聞いてみました。
「先生、チェリーちゃんって、あのベルトはぐいっぽ止めですか?」
「そうなのよー、空気飲んじゃわないようにね」
なるほど。

しばらくして、S先生が栗毛の馬を引いてくるところにすれ違い、S先生とメンバーの方が、
「チェリーはお仕事久しぶりでしょう」
「そうよねぇ、お仕事の仕方忘れてたりしてねぇ」
久しぶりなのか…やはりあまり使わない馬であることは間違いないようです。

馬装の時間なので、S先生が蹄洗場につないでくれたチェリーちゃんのそばにあらためて立つと、この子は小さい!
身長が150センチの私が横に立って、き甲(肩上の骨の突起)の高さが私の身長とあんまり変わらない。一歩間違えばポニーだよ。
とにかく、馬装の前に馬の手入れをしなければ。
チェリーちゃんのおでこをなでると、首を下げ気味にしておとなしくしています。そのまま鼻面や首をなでてもおとなしくしているので、蹄洗場の鎖をくぐってみる。先週はここで蹴られたので慎重に…
ところがチェリーちゃん、みじろぎもしません。これがほんとにさっき、鉄柵をかじっていた馬か?

まずブラシをかけますが、チェリーちゃんは背が小さいばかりでなく、肉付きも薄い。あばらや尻の骨が 浮き出しているような感じで、皮膚も薄そう。ブラシをかけると痛いんじゃないだろうか?
S先生に「チェリー小さいですね!ブラシかけるのがかわいそうみたい」と言うと先生は、
「だんだんだんって感じでね、骨が」

ブラシを終わり、ひづめの裏掘り。鉄爪を持って、チェリーの左前肢を前からすくうようにすると、あっさりと肢が上がり、裏掘りをさせてくれました。左前が終わると、自発的に右前を上げる。それが終わると、左後ろ脚を自分から上げる。裏掘りの順序を覚えているんですね。
「こんなやりやすい馬、初めて当たりましたよ〜」とF先生に言うと、
「銅像みたいでしょ?」と笑っていました。
この小さい体だから、鞍を置くと嫌がるかなと思いましたがそんなことはなく、本当に銅像のようにみじろぎもしません。頭絡をかけるときも、ハミを口に近づけると自分から口を開いてハミを入れさせてくれました。

あまりにも手の掛からない子が相手だったので馬装は予定より早く終わり、レッスン時間までは写真を撮ったりお茶を飲んだりしていました。
少し早めに蹄洗場に戻り、F先生がいたので聞いてみることに。
「先生、今日試験なんですけど、」
「はい、頑張って!」
そう返ってくると思わなかったので大笑いしてしまった。
「いや、そうなんですけど、筆記試験はいつ受けたらいいですか?」
「時間の空いたときでいいよ。フロントで解答用紙もらって、クラブハウスでごはん食べながらでもいいし。15分もあれば終わるよ」

さてレッスンの時間。今日の1鞍目、指導員はF先生です。
今日の騎乗は、2鞍とも実技試験になっていますが、普通に騎乗して、それを指導員が判定するとのこと。
チェリーちゃんを引いて馬場に入り、引き馬のまま蹄跡を1周。ラチのそばで、アシに入ったS先生が
「チェリーちゃん、その辺で乗っちゃいましょう。そこで止めるとがじがじすると思うんで、そのすきに」
言ってるそばからチェリーちゃんはラチに噛みつこうとしています。そのまえに手綱を首の上にまわし、左側だけ鐙を下ろして騎乗。
彼女はラチに噛みついている間は、確かに動こうとしないので、安全に騎乗できるのですが、チェリーちゃんはさっそくぐいっぽをしている。

チェリーと私は一番騎を指定され、常歩で周回を始めます。
常歩でも、すごく振動が伝わってくる。チェリーの背中が薄いせいでしょうか。
先週のクロスオーバーほど歩かないということはありませんが、ゆっくりゆっくり歩いている感じ。脚を使うと少し元気に歩き出しますが、すぐまたゆっくりになる。一番騎だから、おっとりちゃんなのは当然か。
しかし方向転換にはちゃんとついてきます。中央線での手前を変え、長蹄跡・短蹄跡での手前を変え、三湾曲蛇乗り、中央線に出て短蹄跡に出るなど、たくさんの方向転換練習をしましたが、それについてはあまり問題ありませんでした。
今回は意識して、鞍上で自分の体重を曲がる方向に移動させていたのですが、それをやるとあまり手綱を使わなくても曲がってくれる。
「あの人なにもやってないのに、馬が曲がっていくなー、と思われる位、小さな扶助で馬を曲げるのが理想です」

軽速歩になると、チェリーちゃん半周もしないうちにすぐ止まる。
そりゃ私の扶助が下手なせいに決まってるのですが、それにしてもずいぶん止まるのが早い。何が悪いんだろう?
「立ち上がるというより、ひざを曲げて」
あっ、そういえばひざが動きにくい。さっきから鐙が短すぎたかな、と思っていたのですが、そのせいでただでさえぎこちない動きが、もっとぎこちなくなっていたのです。

しかし鐙をレッスン中に直すのは難しいので、そのまま軽速歩を続ける。
「立つ・座るの座るときに、ちゃんと脚を使いましょう」
そういえばクロスオーバーもそうだった。2テンポで、座るたびに脚で腹をしめる。
しかしなんか、リズムがうまくとれないかも…

しばらくやっていて、やっと気がつきました。
チェリーは小柄で、足も短いので、他の馬よりも足の運びが早いのです。
ということは、他の馬よりも速歩のリズムが早いということ。今まで乗った馬のリズムよりも、早めのリズムをとらないと、チェリーの動きに合わないんですね。

それに気がついた頃、どうやら軽速歩が1周つづくようになったのですが、時間が来てしまい、1鞍目終了。
チェリーは1鞍目と3鞍目の間は騎乗がないので、蹄洗場につないで鞍をゆるめ、休憩です。


21鞍目・ひとつの別れ
(2001.8.4 千葉・オリンピッククラブ)
22鞍目→
後ろ脚が「休め」の状態。片足を曲げて、
ひづめが先だけしか地についていません
私たちも休憩時間なので、クラブハウスに行って筆記試験を受けます。
フロントで答案用紙をもらい、「別々の席で書いて下さいね」ということで、相方と別の席に座って試験。
あらかじめ試験範囲を教えてもらっていたし、しかもヤマがあたったので、5分くらいで出来てしまいました。
フロントで「早いですねー」と言われつつ提出。
それに写真と検定料10,500円を納め、「結果は郵送で?」と聞くと、「そうですね、1ヶ月くらいかかるかもしれませんのでお待ちになってて下さい」とのこと。
(後日談ですが、ライセンスは4日後に届きました。混んでいなかったんでしょうね)

さて、今日の2鞍目はM先生。先週も習った先生です。
馬場にチェリーワールドを引いて出ると、M先生が「チェリーちゃんじゃないか〜!」と言っていました。お仕事してるのが珍しかったんでしょうか。
今度は鐙をベルト穴一つ分だけ長くして、騎乗。

今回も一番騎。常歩で歩き始め、軽速歩へ。チェリーちゃん、軽速歩がなかなか出ない。
「もっと脚を使って、まだ、まだ、まだ、もうちょっと。高階さん、チェリーに優しすぎです。もっと鬼になっていいんだから」
軽速歩を出すのに、この小さな薄い馬体に、思いっきり脚を使うのがなんだかかわいそうに思えて…というわけではなく、脚は使ってるんだけど、うまく入らないだけなのよ〜。
「チェリーちゃんはちょっとぽーっとした子なので、軽く脚を使ったくらいでは無視しちゃう癖があるんですよ。無視して、走らないで済んだらラッキー、って感じで、もう言うこと聞かない。そこでわがままを許さないで、脚を使い続ければ走り出しますから」

走ったら走ったで、立つ・座るのタイミングで脚を使わないとすぐ止まりそうになる。
お、いい感じで走れているではないですか。と、馬場外のイスにA先生が座って、何か書いているのが見えました。あれはもちろん、実技試験の採点をしているのでしょう。キレイに乗らないと。

陽が傾いてきて、自分の影が馬場に映るのを見ると、今回はわりと前傾せずに乗れている(ような気がする)。頭を上からつり上げられるような感じで、体が上下している。
しかしチェリーちゃん、馬場のある地点で必ず軽速歩をやめて常歩になろうとする。
「チェリーちゃんが、そこで走るのをやめることに決めてるようなので、そこでは特に頑張って脚を使ってみてください。そうそう、OK」
(OK、というのはM先生の口癖)

けっこう軽速歩が続きだしたので、軽速歩のまま手前を変える指示。最初はうまくいかなかったのですが、脚を使いつつ、手綱を引きつつ、体重を移動しつつ、という一連の動きがだいぶスムーズにできるようになり、「軽速歩のまま、斜めに手前を変え」が成功しました。
このあとすぐに常歩になったので、すぐには気がつかなかったのですが、手前を変えたら、鞍上の私も手前に合わせて立つ・座るのタイミングを変えなきゃいけないんですよね。まだそこまではできなかった。
(手前を合わせるというのは、たとえば左回りなら、馬の左脚が地に着くときには立ち、右足が地に着くときには座って、馬の脚への負担を軽くするということなのですが、これが右回りに変われば、座るタイミングも右と左が入れ替わるわけです。)

A先生が馬場に降りて、M先生のアシスタントを始めました。してみると、採点は終了したものと思われます。
軽速歩のまま周回をつづけますが、チェリーちゃんがまた止まりがちに。
「高階さん、今ちょっと前傾でしたね」
以前に比べればマシになったと思うんですけども…チェリーちゃんが止まりそうなところで、脚を使うことに一生懸命になってると、手綱にしがみついちゃうみたいです、私。
やがて時間が来て、ライセンスコースの全騎乗が終了しました。

チェリーを蹄洗場まで引いていき、馬装解除。
鞍と頭絡をはずし、手入れをします。ブラシをかけようとしたら、
「あ、脚の手入れからやったほうがいいです」と注意されました。そういえばそうだった。
鉄爪を持ってきて裏掘り、それからタワシと水のホースを使ってひづめの裏を水洗いしますが、やはりチェリーちゃんは馬装前と同じように、自分から肢を上げて協力してくれました。いい子だこと。
水に濡れた肢をタオルで拭く間も、あいかわらず銅像のようなチェリーちゃん。
そのタオルで汗をかいた馬体を拭き、ついでに首から顔や耳を拭いてやると、チェリーちゃんはアゴも外れそうな大あくびをしました。馬がリラックスしている証拠なので、いい感じだぞ。

ブラシをかけおわったところで、ひづめに蹄油を塗り忘れたことに気がつきました。
蹄油を塗るのには別に肢を上げさせる必要はないので、ひづめの上から油を塗ります。前肢を塗り終わり、後肢を塗ろうとしますが、後肢の片方が「休め」になっている。
そのままでは蹄油が塗りにくいので、ひづめをちゃんと地面につけてもらおうとしたら、急に脚を上げて、軽く蹴るような素振りをします。
「なんだよー、さっきまでおとなしかったのに、何?」
仕方ないので、「休め」の状態のまま蹄油を塗ろうとしたら、また蹴ろうとします。(それにしても、本気で蹴るのではなく、「なんかイヤだから蹴っちゃおっかなー」くらいの、おっとりした蹴り…)
S先生が「大丈夫?さっきまでおとなしかったのにねぇ」とやってきて、
「ちょっとこの間まで後ろ脚を治療してたから、なにかされると思ってるのかもしれない」
2〜3回でおとなしくなり、蹄油を塗らせてくれました。
最初から最後まで人の手を借りずに馬体の手入れができたのは、実はこれが初めてだったりする。

蹄洗場からチェリーを引き出して馬房に入れ、あのぐいっぽ止めのベルトをかけるべきかどうか悩んでいる間にチェリーがあっちを向いてしまいました。
ちょうどS先生が来たので、
「先生、このベルトはしたほうがいいですか?」と聞くと、
「あ、いいですよ、こっちでやりますから」と、チェリーにベルトをかけながら、こう聞かれました。
「それで、決まりました?」
もちろん、今日でコースが終わったので、クラブを継続するかどうかということ。S先生のことは好きなので、ちょっと後ろめたさを覚えながらも、
「ごめんなさい、今日で卒業させていただきます」
「そうなんですか〜。残念だわ。とりあえず4級コースというのがあるので、パンフだけ差し上げますね」
パンフはいただいておいたものの、たぶんしばらくはライセンスのために乗馬をしたいとは思わないだろう。もっと上手くなって、自分でどれくらい上手くなったかの目安が欲しくなったときには、ライセンスに挑戦したくなるかもしれないけれど。

バスの発車時間まで、この10日間で乗った馬たちに挨拶をしてまわりました。
ニンジンをあげたりしてさよならをしながら、トライアルの2回目、メンバーさんに言われた「辛くなりますよ、馬との別れが」という言葉を思い出していました。
マーメイド・アイのところにちょうどF先生がいらして、「お疲れさまでした」と言われました。
F先生の指導は好きだったなぁ、と思いながら、今日で終わりとわざわざ言うのもどうかと思われて
「お疲れさまでした、ありがとうございました」と頭を下げました。

これでここに来るのも最後かなぁ、とかすかな痛みとともにバスに乗り込み、オリンピッククラブをあとにしました。

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