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(2001.9.24 あきる野・日の出乗馬倶楽部)
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桜吹雪の写真
桜吹雪、日の出に来る前は千葉大学馬術部で、
上総桜という名前だったそうです
(29鞍目からのつづき)
「別に急がないし、キャンディのお散歩に行って帰ってきたらちょうどいいかなぁ」
I野先生も、「そうしなさいそうしなさい。こんなに早く家に帰ってもすることないだろ?」とジョークっぽく勧めて下さる。そうすると先生はずっと休憩なしで指導することになるから、大変なはずなんですけど。
「今からだと2時に乗れるんじゃないかしら」
ママさんと一緒にホワイトボードを見に行きます。
「ごめんなさい、3時になっちゃいますねぇ。でも3時だったらどの馬でもいいわよ」
「え、どの子でも?」
思わず”いつもの”トリコを見ますが、トリコはその前後に予定が入っていてかわいそうみたいだし、せっかくだから違う馬に乗ってみたい。
「さくらでもいいし」
「えっ、私さくら乗っていいんですか?」
「いいわよー、もちろん」
さくら、フルネームは桜吹雪。今月ここの倶楽部に入厩したばかりの馬です。自分のレベルに合う子だと思わなかったので、乗せてもらえるのはまだ当分先だと思っていた。
「じゃぁ、さくらでいいですか」
「はい、じゃあ奥さん3時にさくらね。旦那様は?先生に決めてもらいましょうか」
クラブハウスに入っていた先生をまた呼び戻し、
「せんせーい、乗る馬決めて下さい。私はさくらにしてもらったんですけど」
「そうか、いいね。じゃあ旦那さんは誰がいいかな」
結局、相方はまだ乗ったことがないという理由で、美星(ミホシ)に乗ることに決定。
とりあえず今はまだ13時なので、15時までたっぷりヒマ。倶楽部の犬の散歩に行くことにします。

秋川渓谷を犬とたわむれて帰ってくると、ビジターさんがトリコに乗っていました。
先生が私たちが帰ってきたのを認めて、「高階さん、見なさい、右手前だよ」
ひゃっ!? トリコが苦手だと思っていた右手前、このビジターさんはスムーズに右手前で乗っています。
右手前を苦手にしていたのはトリコ自身ではなく、私だったんですねぇ。うすうす気づいてはいたんですが、ちょっとがっくり。
しかもこのビジターさん、小学生なんだもん。もちろんよその倶楽部で経験はある人ですが。

ヒマなので馬房に行って馬と遊んでいると、私たちの前に桜吹雪と美星に乗る人が馬を出すところ。
見るともなく見ていると、さくらの鞍がなく(ここでは鞍は馬専用で、鞍の後僑に馬の名前が書いてあります)、一緒に探しているとスタッフさんが
「さくら、まだ鞍がないので、オーナーのを借りててください」
オーナーのMy鞍をお借りして乗せていました。ってことは、あたしも後であの鞍をお借りするわけだ。
I田さんがさくらの後ろ脚にバンテージを巻いているところをよく見ると、さくらのツメには金属らしいものが見えません。さくらちゃん、蹄鉄はいてないのかな。
ずっと馬術馬として生きてきたのなら、ありえない話ではないのだけど、珍しい。

私たちの騎乗時間が来たので馬場に出ますが、やはり前のレッスンで使っていた馬で蹄洗場が込み合っていたので、さくらは蹄洗場に上げずにそのまま騎乗することになります。
鐙を自分の長さに合わせようとすると、すでに鐙皮は一番短いところになっているのに、私にとってはまだ全然長い。
「先生、この鐙すっごく長いです」
「すごくって言うなよ、足が短いみたいじゃないか」
「だって先生、オーナーと私じゃ足の長さが違いすぎますよ」
オーナーはすらっと背が高く、もちろん足も長いので、オーナー専用の鞍は鐙皮も長かったのです。
「足の長さじゃなくて、背の高さが違うんだからな」と言いながら先生は、鐙皮を鐙に通した上から更にもう一度巻き、短くなるように調整してくれました。
それで騎乗してみると、なんだか鐙を踏んだ感触が傾いた感じ。
鐙皮がきちんと中央にきていないのかと思って、鐙を脱いで皮を調整しようとすると、先生が「合わないか?」とおっしゃるので、「いえ、なんか鐙が傾いてるみたいで」
「ああ、傾いてるんじゃないよ、鐙がそういう形なんだ」
えっ?鐙をよく見てみると、踏むところのゴムが、内側に向かって15度くらい傾斜しています。
「それだと踏みやすいだろ?」
立ち上がってみると、馬体に騎座がきちんとついて、踵が踏み下げやすいみたい。

レッスンは4頭部班で、ウィンダム、桜吹雪、美星、ジュンヨーの順。
前のウィンダムに乗っているFさんは私よりレベルが上の人だと分かっているので、「足引っ張るんで、ごめんなさい」とあらかじめ謝っておく。
常歩での周回、けっこうスムーズ。今日は2鞍目なので、手綱の持ち方や脚の入れ方などの1鞍目の注意事項が体に残っているせいもあったのでしょうが、さくらは首をきちんと使う(馬は首を前後してバランスをとって歩くのですが、その前後する加減には個体差があります)馬なので、拳をそれに合わせてやれば、さくらは楽に歩いてくれる。お、これって随伴ってやつですか。

常歩のまま、半巻き、斜めに手前を変え、中央線に手前を変え、全騎同時に右へ、など方向転換の指示がけっこう厳しく出ますが、さくらは簡単についてきてくれる。
でも前のウィンダムについていっている気配がないこともなく、曲がる指示を出す前から曲がろうとすることもしばしば。

軽速歩を出すのはとても簡単でした。しかも走り出すと、さくらはすごく早い。早いというか、足運びのピッチが早いみたい。
前騎のウィンダムは歩くのはちゃっちゃか歩きますが、軽速歩はゆっくりめに走る馬なので、さくらはすぐ追いつきそうになります。せめて1馬身は開けようと思い、手綱を控えてゆっくり走らせようとするのですが、ずっと手綱を押さえていないとすぐスピードを出す。
もしかして軽速歩でこんなスピードが出る馬に乗ったのは初めてじゃないか?クラブハウスの方からも、「さくら、すごく走るね」という声が聞こえる。
気がつけば、さっきサーブを走らせられなかったことは嘘のように、さくらを押さえて走ることに一生懸命になっていました。
さくらちゃんは走りながら3〜4回つまずいたのですが(1度は落馬するかと思った)、それでも走るのはやめようとしません。そんなに走りたいのか。

思えば、鐙がほとんど外れることがなかった。特殊な鐙だからか、きちんと鐙が踏めたので、馬のコントロールがしやすかったのだと思います。この鐙なら、以前オーナーに言われた「つま先で鐙の上に立って、かかとはショックアブソーバーにする」という感覚がちょっと分かる気がする。
私に言ったのかどうか分かりませんが、先生の「相性がいいみたいだな」という声が聞こえました。
私のことだとしたら、馬と相性がいいのか、道具と相性がいいのか。能筆は筆を選ばずと言いますが、私のレベルでは道具が違うだけでこうも違うものなんだ。
軽速歩のまま斜めに手前を変えるのも、馬が走るのをやめることなく曲がれます。
馬場を横切るとき、軽速歩ではなく速歩でいきましたが、悩みだった体の弾みが少しマシみたい。

軽速歩をやめ、蹄跡を常歩で周回している間に、今度はバケツ2個と、バケツの前にパイプが置かれます。
やることはさっきと同じく玉入れなのですが、今度は馬場をできるだけ早く横切ってパイプのところで止まり、ボールを入れて帰ってくる、タイムトライアルのようなもの。
「運動会のときは、同じ時間でたくさん入れられたほうが勝ちだからね」
4頭部班だったので、ウィンダムとさくら、美星とジュンヨーの2組で交代で競技をします。
バケツに向かって歩き出そうとすると、さっきまであんなに調子よく走っていたさくらが、脚を入れても蹴っても、走ろうとせず歩くだけ。
よいしょ、よいしょという感じでバケツまでやっと歩かせ、ボールを投げましたが失敗。
さくら、もうお仕事終わりだと思っていたんでしょうか。

それを2度ほど練習すると、
「よし、それじゃ2チームで対戦しよう」ということで、私と相方が同じチーム、他の男性二人が1チーム。
私はチームの後攻でしたが、先攻の相方はうまくボールを入れました。しまった、失敗できないし。
さくらはやっぱり走ってはくれませんでしたが、バケツまでたどり着き、ボールを投げると、今度は成功!
ここまで全員が成功したので、勝負は延長。先攻どうしで再決戦です。
相方は成功したのですが、敵チームの先攻が失敗し、
「高階ご夫婦の勝ち〜。今日は賞品は出ませんが、当日は買った方に賞品が出ます」

これでレッスンは終了。馬場から馬を上げ、勒を外して無口頭絡に変え、蹄洗場につないで鞍を外します。
ひづめの裏掘りをしようと脚を上げさせると、やっぱりさくらは蹄鉄をはいていませんでした。実は、蹄鉄をはいていない馬の裏掘りをするのは初めて。なんだか人間でいうと扁平足みたいにでこぼこが少ない。
裏掘りを終えて、脚を洗うので後ろ脚に巻いていたバンテージを外すと、右後ろ脚に、横向きの線がくっきり。しかも縫い目みたいになっている。手術痕?なんだか痛々しい。よく見ると脚の形も少し変だし、だからつまづきやすかったり、バンテージが必要だったりしたんだなぁ、かわいそうに。

さくらちゃんを洗っていると、前のウィンダムに乗っていたFさんが
「さくら、すごく走りますね。走ってると、だんだんさくらの影が迫ってくるんだもん」
わたし、後ろの馬の影なんて気にしてる余裕ない(笑)
さくらを馬房に連れて行き、Fさんにバンテージの洗い方などを教えてもらって、全て終わったときには陽がかたむきかけていました。

クラブハウスでママさんに「うちの馬にもだいぶ慣れてきたみたいね」と言われました。
「どうでしょうねぇ…さくらはすごく走りやすかったんだけど。相性がいいのかな」
「相性じゃなくて、それはやっぱり上手くなってるのよ」
でもその前のサーブを上手く動かせなかったというのがあるので、自分としては上手くなったとは思えないんですが。
ついでに聞いてみると、さくらの足の傷は「昔、脚にロープを引っかけて切っちゃったんですって」
ああぁ、なんて痛々しい。

なんだかんだ言って、この日は10時半から17時くらいまで倶楽部にいました。充実した一日だったなぁ。それにしても桜吹雪は走りやすかった。


↑日の出乗馬倶楽部の馬場

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