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(2002.12.29 あきる野・日の出乗馬倶楽部)
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朝から雲一つない上天気。今日は倶楽部の年内最終日で、夕方から納会の予定。その前に乗り納めをしておこうと、いつもの時間に倶楽部に向かいます。
到着してホワイトボードを確認してみると、同じ考えの人が多かったのか結構混み合っています。それでも午前中はさほどでもないようで、自分の部班は4人。私たちの名字がアルフォンスとジュンヨーのところにあったので、「君アルフォンスだよ」と相方。まぁ当然そうだよね。
アルはモンブランに次ぐ私の愛馬ではあるけど、冬の彼は元気すぎて、ちと怖いんだが。プロテクターした方がいいかなぁ。
おや、今日の指導者はA木さんになっています。彼女に習うのは初めて。

結局プロテクターをしないまま、アルフォンスの馬房へ。無口と引き手を持って彼の馬房をのぞくと、う、まだ馬着着てる…今日は下乗りなしですか。昨日は土曜日だから使ってるだろうけど、跳ねそうだなぁ。
呼ぶと扉の方に寄ってきたので、扉をあけて中に入り、無口をかけようとすると、アルが無口にかぷっと噛みつきました。「ちょっとアル、離しなさいよ」と引っ張っても、しっかり噛んでいて外れません。おでこをたたいて叱ったのですが、離そうとしません。口角に指を入れてどうにか外させて、再び無口を付けようとしたら、またかぷっ。それで叱ると、今度は腕を噛まれました。耳も伏せてないし、目が怒ってもいないので、こいつ遊んでるだけだな?どうにかしてやろうと思うのですが、馬の左側に回り込もうとしても、振り返って噛みつこうとします。あー、噛み癖が復活したとは聞いていたけど、参ったな。いやだなぁ、こんなに元気では馬場でも跳ねるかもなぁ。
そこへバイトスタッフのCちゃんが「大丈夫ですか?」とやってきました。代わりに馬房に入ってくれたのですが、Cちゃんにも噛みつこうとするアル。「ほんとむかつく!もう怒った!」とCちゃんがアルをぶったたくと、馬房の中で立ち上がりそうになりましたが、なおもCちゃんに怒られてどうにか無口をつけさせました。やるなぁ、Cちゃん。
それで引き手を付けて連れ出しましたが、いつものように途中で止まりそうになるアルに、「止まるなー」と叱ると、なんとか止まらずに馬繋場まで行きました。でも途中で寝わら(オガ)の大きい袋を見つけて中に鼻を突っ込んでみたり、やっぱりいたずらっ子です。

馬着を脱がせるのにも、何度も噛みつこうとするのでおでこを叩いたり、片手で無口の頬革(革じゃないけど)をつかんで顔が動かせないようにして、もう片方の手で金具を外すので、能率が悪いことおびただしい。無口の上のほうの金具を、馬繋柱の2.5メートルくらいの高さから出ているひもに繋いであるので、顔はうごきにくいはずなんだけど、よくやるわ。「怒るよアルっ」と叱りつけていると、隣で「もう怒ってるじゃん(笑)。ジュンちゃん、こわいおばちゃんがいるからあっち行こうねー」という声、もちろんこんなことを言うのは相方。覚えてろ。
馬着を脱がせ、また噛みついてくるのを避けながらブラシかけを始めると、なんだかアルが左の前脚を上げて、ふらふらさせています。何してるんだろ、この子…あ、裏掘りがまだでした。ごめんごめん。

アルフォンスの噛み噛み攻撃を避けながらの馬装で、かなり手間取ってしまい、鞍を置くころには周りはすっかりハミを付け終わって、馬場へ出そうとしています。やばいやばい。
「さー最大の難関、どうしよう」とつぶやきながら頭絡を持ってくると、K野さんが「大丈夫ですか?」と来てくれたので、「あんまり大丈夫じゃない。やってみるけど」
無口を外し、頭絡をつけようとすると、また手綱の端をかぷっ。「こらっ」と鼻面をたたいて、またハミを噛ませようとするのですが、私も噛まれたくないから腰が引けていてうまく行かない。最終的に、K野さんがアルの頭を押さえて勒を引き上げてくれたので、なんとか入ったような感じでした。
急いでアルを連れて馬場に出ようとすると、途中で止まって道草を食おうとするので、「ダメっ」と手綱を引くと、今度は速歩を出そうとしました。こいつー、絶対遊んでる。

全員もう騎乗していて、私が最後だったので、K野さんとA木さんが急いで騎乗の補助についてくれます。手綱を首にかけようとすると、また手綱をくわえようとするアルフォンスを叱って、手綱を首の後ろに投げます。それがうまくかからなかったので、直そうと手を伸ばしました。
「いって〜〜!!」アルの頭の上に手を伸ばそうとした私の胸元めがけて、アルが噛みつき攻撃。すぐに身を引いたのですが、皮膚を引っ張られて余計痛かった。こいつどうしてくれようか、と私が拳を震わせている間に、A木さんにこっぴどく叱られていました。
やっぱりプロテクターを着ていれば良かった…。よくもこの少ない胸をさらに減らそうとしてくれたな。

とりあえず何事もなかったかのように騎乗、急いで馬装点検。
今日の部班は5頭。A木さんの指示で、相方のジュンヨー、コスモ、美星、私のアルフォンス、JRの順で、常歩で蹄跡に出ます。
アルフォンスは体が大きいのですが、足の運びがゆっくりなので、脚を使って推進しているつもりなのですが、ともすれば前の馬から2馬身くらい離されていきます。長鞭持ってるけど、この子鞭入れると止まることあるしなぁ。なかなか歩度が伸ばせなくて苦労している私に、「拳の随伴が足りないかもしれないねー」とA木さん。「これ?」とちょっと拳を前後してみせると、「そうそう、首の動きに合わせてあげて」馬の首が前に出るときにちょっと拳を緩め、首が下がるときに拳を軽く握るというようなことをやってみると、少し常歩の歩度が伸びました。ほうほう。

「じゃあ速歩行きますよー、歩度を詰め」アルフォンスは速歩発進がニブいから、早めに速歩の扶助を出していきますが、それでも少し遅れました。ですが、走り始めると一歩が大きいので、簡単に美星に追いつきます。そこで追いついちゃうと、馬が自分で常歩に落としたりするので、追いつきそうだと思ったら早いうちに速歩の歩度をつめ、極端にのろい速歩にします。アルフォンスはそれについてくる馬だし、そうすると正反動をとるのも楽なのです。でもあんまりやりすぎるとやっぱり止まりそうになるから、ときどき脚を入れます。脚を入れて元気が出るに従って、速歩の反動も高くなっていって辛いのですが、まぁ仕方ない。
お尻がぼんぼん跳ねる状態で脚に力を入れてしまうと、鐙に立ち上がるような感じになります。ちょうどそこを見ていたA木さんが、「高階ママさん、今こっそり軽速歩とってなかったー?」「えへへ、なっちゃった」脚に力を入れすぎたらしい。「アルはちょっと反動でかいからなー。跳ねるのは別に悪いことじゃないから。ただ、どんどん跳ねてると体が前のほうにいっちゃうから、そういうときは一回だけ軽速歩とって、体勢立て直してもいいよ」

速歩で各個に巻き乗り。アルは巻き乗りで停止するのが得意技なので、できるだけ止めないようにしたいのですが、あ、しまった。鞭が外方だ。仕方ないので、内方脚でカツカツ蹴っていくと、どうにか止まらずに出来ました。
しかし順次巻き乗りのとき、蹄跡に入るところで止まってしまいました。「なんで止まるのー」と叱りながら蹴っ飛ばして走らせたのですが、A木さんによると「アルはねー、後ろに馬が近づきすぎると『何かしらっ?』って言って止まっちゃうのよ」ということ。こいつが良く止まるのって、そう言うことだったんだ。

しばらく軽速歩を速歩を織り交ぜながら走ります。右手前で走っていると、ひとつ前にいるコスモが隣の馬場との区切りラチのところで毎回跳ねています。コスモはかなり気が弱い馬だから、あそこで車が見えるのがイヤなのかな。
と思っていると、全く同じ所でアルフォンスが横っ飛び。私も鞍の上でバランスを崩してしまったけど、それでもアルの背中は安定感があるので、どうにか座り直して落馬をまぬがれます。蹄跡に戻しながら、「どうしたのアル、何にもないでしょー」と低い声でなだめていると、A木さんも「なんだろうね?そこ何かあるかな」「うーん、なさそうなんだけどねー」
最近、馬が驚きそうなものというのはあらかじめ予測がついたりするようになったんだけど、それでも何に驚いたのか分からないことっていうのは多いです。こういうとき、馬には何か人間に見えないものが見えてるのじゃないかと思うことがあります。

常歩に落として、右手前で歩きます。
「じゃあみなさん、そのまま鐙を脱いで下さい。脱いで、脚をできるだけ地面に向かって伸ばしてみて」鐙を脱いで、足の裏を地面に平行に伸ばすようにすると、「そうじゃなくて、もう全部だらーんと伸ばしちゃって」というので、つま先を地面へ向かって伸ばします。
「はい、鐙を履いて。これから、馬上体操っていうのをやりましょう。まず、手綱を右手にまとめて持って下さい。鞭持ってる人は、鞭も右手に一緒に持っちゃって」冬の元気なアルフォンスなので、何かあってもいいように、右手にサドルホルダーもまとめて持ちます。「あいた左手で、自分の左の足首を持って下さい」鞍に座ったままそれをやるには、足首が自分のお尻にくっつくくらいに、膝を曲げて足を持ち上げなければいけません。「そうそう、ポイントとしてはね、自分の太ももが地面と垂直になるような感じです。馬場やる人は特にそうだけど、そのまま膝から下を下げた姿勢が、馬場の正しい格好です」一度左足を鐙に戻して、今度は右足で同じことをします。
両足を鐙に戻すと、「今度は両足をできるだけ持ち上げて、馬体から離してみてください」馬体の幅もけっこうあるのに、そこから脚を開いてさらに持ち上げるっていうのは、かなり辛い作業です。「これやるとね、座骨の位置が分かるでしょ」「あ、うん」体重がふとももに分散していかないので、座骨が鞍に当たって痛い感じがする。
脚を下ろして、「鐙はいてみて下さい。それで鐙を履いたとき、鐙が短いなって思えればOKです」私は割と長めの鐙で乗っていたつもりだったんだけど、それでも今は長いと思えなくなってる。ふぅん、これは膝を伸ばすのと、座骨を意識する練習だったんだろうな。

「じゃあ速歩出してみましょう」ゆっくり速歩を出します。「そのまま、右側の鐙だけ脱いでみてください」片側だけ脱ぐと、バランスがとりづらくなります。「左側に傾きたくなると思うけど、あんまり踏み込んじゃダメですよ」うーんと、座骨でバランスを取れっていうことかな。鐙を脱いだほうの脚をだらんとさせてしまうと、バランスを取るのが難しい。仕方ない、これは鐙上げで軽速歩をしたときのように、鐙を履いていない脚も履いているつもりで馬体に接していればどうにかなるだろう。
「おー、みんなけっこう大丈夫ですね。じゃあ右の鐙いったんはいて、今度は左の鐙を外しましょう」やっぱり左右のバランスを取るのは難しいけど、少し脚が引きやすいような気がするな。
「はい、じゃあ鐙はいて。履けるー?」アルの反動に体を持っていかれがちな私は、速歩のまま鐙をはき直すのに手間取ってしまいました。仕方ないのでちょっと止めようかな、と速歩を押さえたら、止まる直前で鐙が履けたので(反動がゆるくなったせいだろう)、そのまま速歩を続けます。
「これやったら、だいぶ座りやすくなってるはずだよ」と言われて、そうそう座らなきゃと思って体を立て直すと、アルが止まってしまいました。
ボロでもないし、「ちょっと、何で止まるのー?」と言っていると、A木さんが「だって今座骨で止めてたもん」「あ、そうなの?」体が少し後ろに傾きすぎたか。
「速歩はね、反動ごとにかかとが下がってて、いい感じだよ」座れないと悩んで、K野さんに言われたひとつひとつ、もっと後ろに体を倒すこととか、反動ごとに体中を使うことなんかが、だいぶ体で覚え始めたようです。意識しちゃうと、やりすぎてしまうようになってきたらしい。

軽速歩で走っていると、トイレ脇の馬繋場(左図で見て右端)のほうで、けっこう大きいラジオの音がします。右手前のときはいいのですが、左手前の場合はトイレの影から急に音が聞こえるらしく、トイレを過ぎた瞬間にアルフォンスが挙動不審。耳を落ち着かなく動かしたり、首が大きく動いて「跳ねたいなー」というサインに見えたので、脚を締め、拳を狭くして動きを規制すると、そのまま走ってくれました。
でも周ごと、そこを通るたびに物見したり、耳がぴくぴくしたりします。ちょっと、騎乗者の私に意識を向けなさいよ、と思って、そこを通りかかるちょっと前から声をかけたり、脚を強めに使ったりしますが、どうもここだけ集中力がないな。いつ跳ねないとも限らないので、ラチ外を通りかかったMちゃんに「ラジオ止めてきて」と頼んでしまいました。

時間が来たので常歩におとし、沈静化。
沈静化の最中、1頭1頭にアドバイスをしてまわるA木さん。私には、「だいたい良いんだけど、膝がちょっと鞍から離れるよね。膝で締めちゃいけないと思ってそうなるのかもしれないけど」「あ、そう、自分でも気にしてる、悪いところだと思って」というか、I野先生にもよく怒られているし。「そういう人にはね、2ポイントが効くんだよ」とりあえずちょっと鐙に立って、障害の体勢で前傾し、手綱を繰って短くしてみます。私の障害歴はほとんどこの子なので、その体勢を取るのは楽。「そう、それでね、ちゃんと立って膝が添うようになったら、馬場鞍でも立てるようになるよ」馬場鞍と障害鞍の違いのひとつは、あおり革の前の方に厚みがあるかどうか。障害鞍は2ポイントで立ったときに騎座が頼れるように厚みがあるのですが、馬場には2ポイントなんてないので厚みがありません。
そう言われたので、障害用の2ポイントではなくて、背中をまっすぐにして立ち乗りをしてみたのですが、すぐお尻が鞍に落ちてしまいます。「お尻がすぐ落ちちゃう人は、立ったときに頑張って脚を後ろに引いてみて」あ、それI野先生にも言われてるわ。脚を引く、というか腰を前に出して、体を反らせるようにしてみると、「そう、そんな感じ」「でも私、いま前橋にほとんど座ってるんだけどー」「いいのいいの、最初はそれで」

馬を馬場中央に並べ、挨拶して下馬。かなり重い馬であるアルフォンスなのに、今日はよく動きました。跳ねたいところで跳ねなかったし。これで噛みさえしなければ…って、鐙をまとめる間にも、鼻面近くに行くと噛みつきたいアル。遊んでるだけだって分かってるけど、ほんとに仕方ないやつだなー。
馬繋場に上げて馬装解除。アルは午後もお仕事があるそうなので、蹄の裏掘りだけをして馬房に入れ、昼飼いをあげます。
馬繋場にいたK村さんとA木さんに、「今日のアルフォンス、かなり調子良かったんですけど」と言うと、A木さんが「そうそう、今日跳ねなかったもんね」インストラクターに跳ねなくて褒められる馬ってどうなのよ(笑)、と思いつつ、「いや、跳ねたかったらしいよ。跳ねたいなーって言ってたから叱ったら大丈夫だった」「そう、すごいじゃん」
でも家に帰ってから右腕を見たら、5カ所くらいアザができていました。アルのキスマークかい、これは。いやぁね。

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