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(2003.2.22 あきる野・日の出乗馬倶楽部)
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朝からどんよりとした天気、家を出るとポツッと雨粒が。困ったなー、と思いつつ、とりあえず倶楽部に向かいます。
武蔵増戸駅に降り立ってみると、こちらはまだ雨の降った気配はなさそう。今日は11時の予約が取れず、13時からのレッスンです。倶楽部についたのは12時少し前、レッスンまでもってくれるといいけど。
ホワイトボードを見ると、今日の騎乗馬は相方が美星、私がモンブランでした。ここのところ、またモンブランが多いなぁ。彼は冬になってから元気が余っているのか、突然駆け出したり跳ねたりということが増え、初心者さんを何人か落としているので、モンブランを「怖がらない」という理由で私に配馬されているような気がしてきた。私だって、ただ落ちていないというだけで、さんざん跳ねられたり立ち上がられたりはしているのですけどね。
最初、K野さんがUくんに下乗りを頼んでいたのですが、他の仕事が入ってしまい、K野さんが「回しますよ」ということになりました。調馬索で回す、ということですが、やっぱりK野さんあたりが下乗りしてくれたほうが動かしやすいんだけどな。

モンブランの馬房に行くと、昼飼いを食べ終わっていたモンちゃんは、名残惜しそうに食べこぼしたものを鼻先で探っています。扉を開けると顔を寄せてくるので、無口を見せたら自分から鼻を突っ込んできました。引き手をつけて馬房から連れ出し、馬繋場につないで馬着を脱がせます。胸前の金具を外しているとき、必ずと言っていいほど私の背中にちょっかい出してくるのよね、この子は。蹄の裏掘りをし、ブラシをかけ始めたところでK野さんがやってきて、「回しますね」と、無口に調馬索をつないでモンブランを馬場に連れて行きました。
待っている間、馬場で調馬索をしているところを眺めていたのですが、あんまりじっと見るとモンブランが気にするかな、と思い、少し引っ込んで待機。馬繋場でぼーっとしていると、スタッフのK村さんがやってきて、馬房にも馬繋場にもモンブランがいないのを見て、「あれ、モンブランは?」「K野さんが回してる」「なんだ、勝手にどっか行っちゃったかと思った」どっか行ったって…放馬して、私が呆然としてるとか思ったんかい。それだったらとっくに泣きつきに行ってるわよ。

レッスン開始まで10分を切ったので、K野さんがモンブランを馬繋場に戻しに来ました。戻るなり、「やる気ない、こいつ」あ、そうなの。なら跳ねたりはしないかな。
そこから急いで装鞍し、馬場の方をうかがうと、他の馬も準備ができて馬場に出ようとしている様子。私もモンブランに頭絡をかけ、馬場へ連れ出します。そこへK野さんが踏み台を持ってきてくれたので、補助を受けて騎乗、腹帯を締め直してもらいます。
すでに他の馬は蹄跡に出て、常歩を始めていたので、私もとりあえずモンブランを蹄跡に出します。他の馬が右手前で歩いていたので、ならって右手前に。
今日の部班はリトル・フロスティ、アルフォンス、コスモ、相方の美星と私のモンブランの5頭です。「じゃあモンブラン先頭で行きましょう。次フロスティ、アルフォンス、美星、コスモで」メンバーはみな私より上級者の人ばかりなので、これでハナを切るのは緊張するなぁ。それぞれが巻き乗りをしたりして、隊列を整えます。

常歩で先頭を行きますが、確かにこいつやる気ないな。やる気がないというか、集中力がないらしくて、物見をしては速度が落ちる。ちゃんと歩きなさいよ、と蹴っ飛ばして歩かせます。
真後ろでフロスティに騎乗しているIさんが、「その馬蹴っぽる?」と聞いてきました。真後ろに近づいたときに蹴るかどうか、ということだろう。「蹴りはしないですけど、止まるかも」フロスティは重いけど1歩が大きいから、常歩だと追いついて来ちゃうんだな。先週、後ろにいたジュンヨーが追い抜きそうになったとき、モンブランは蹴りはしませんでしたが、嫌がって止まりそうになったことを思い出しました。
常歩のまま斜めに手前を換え、左手前で常歩を続けます。

「じゃあ手綱をちゃんと持って。速歩しますよ」とK野さんの指示で、脚を強めに使いますが、あんまり歩度が伸びないな。「はやあーし」で、軽く蹴りますが出なかったので、もう一度蹴ると速歩が出ました。出たのはいいけど、なんだか足を引きずって走っているような、だらしない歩様。足が痛いのかと思いましたが、それだったらさっき調馬索で回しているときにK野さんが気づくはず。先頭だとのんびりしちゃう子だし、要するにやる気がなくて足が上がっていないものだと判断して、脚を強めに使っていきます。
それでも鏡の前の隅角や、クラブハウス側の馬場の入り口(要するにモンブランが嫌いな場所)では止まりそうになる。軽速歩の座るタイミングで、かかとで蹴りを入れ、どうにか走らせます。
モンブランの苦手な場所では、後ろのフロスティはどんどん走れちゃうらしく、足音がすぐ後ろに迫ってきます。蹴らないとは言ったものの、あんまり近づかれるとモンブランが嫌がり始めるだろう。仕方がないので、隅角をきっちり深く回るのはやめて、浅くショートカット気味に回します。すると、モンブランがスピードを出したいクラブハウス前では、フロスティはあまりスピードを出してこないようで、足音が近づいてきません。
フロスティの足音を気にしながら、一生懸命走っていましたが、ふと気になって後ろを見ると、モンブランとフロスティの先頭2騎だけが前に出ていて、後続にすこし間を空けてしまっています。こういうのも良くないんだよな、先頭は「部班を作る」ものだと、前にK野さんに言われたし。

速歩で走っていると、後ろのほうでなんだかバタバタした気配がし、つられたのかモンブランの歩様も乱れました。「なみあーし」のK野さんの指示で止まってみると、どうやら2つ後ろのアルフォンスが跳ねたらしいです。乗っているのが上級者のSさんなので事なきを得ましたが、けっこう派手に跳ねちゃったらしい。
速歩を再開しますが、時たまモンブランが、とても後ろが気になる顔をして止まろうとします。別にフロスティが近づきすぎているわけでもないし、何だろうと思いながら蹴っ飛ばして速歩を続けさせますが、こっそり(でもないか)後ろをうかがってみると、またアルフォンスが跳ねた様子。そのあとも、モンブランは何度も後ろを気にしていましたが、そのたび必ずと言っていいほどアルが跳ねていました。間にフロスティがいるのに、2つ後ろの挙動が気になるの?お前はもっと落ち着いた子じゃなかったっけ?

速歩のまま巻き乗り、ですがなかなか曲がって行こうとしないモンブラン。少しの扶助で曲がってくれればと思っていたのですが、仕方ないので内方の手綱を強く引きます。でもやっぱり曲がらない。ここで馬に負けてはしょうがないので、内方脚で押しながら手綱も強く引いているつもりなのですが、余計反抗される。どうにかこうにか進入ができると、あとはなんとか回れるのですが、最後のほうで常歩に落ちてしまったりします。
巻き乗りの進入や、斜め手前変換のたびに反抗され、思うように曲がれない。それを何度も繰り返すうちに、右手前ではあまり失敗しないことが分かってきました。もしかして、右の脚はちゃんと使えてるけど、左の脚が全然使えていないってことじゃないだろうか。
自分でも、右の脚はきちんと入れられるけど、左の脚は思うように入れられないという自覚があります。実はもう20年近く昔のことですが、左足の靱帯が伸びきってバカになってしまい、そのため2年近く足を引きずって歩いていたという経験があります。そのころ、左右の脚の太さが違うほどでした。右の足ばかりを使って、左足は引きずっていたため、筋肉の付き方が違っちゃったんですね。
今でも、気がつくと左足に力を入れないで右足だけで立っていたりすることが多いような気がする。

K野さんが私に寄ってきて「手綱にかかる力のバランスが一定じゃないから、反抗されちゃうんですよ。こういうときは、手綱を輪にして持ちましょう。一度短めに持ってみて」と言うので、手綱をきちんと持ち直します。するとK野さんは、手綱の余った部分を巻いて輪にし、二重にして私に持たせました。「これでしっかり持って、しばらくこのまま乗りましょう。これだと絶対反抗しませんから」
ふたたび速歩から、巻き乗り。さっきよりはマシなようだけど、やっぱり反抗はしてくる。ただ、外方と内方の拳の間の距離が一定なので、内方を開けば自動的に外方が押されている感じ。
輪乗りの進入でもなかなか蹄跡を外すことができず、外したと思ってもすぐ蹄跡に戻ろうとする。外方の手綱を張って阻止します。

蹄跡に戻り、左手前の軽速歩で鏡の前を通過したとき、倶楽部の西側に面した幹線道路から「パン!」と派手な音がしました。馬より先に私の心臓が「バクッ」と言い、ああ車のタイヤがパンクした音だな、こんな大きい音したら馬がビックリするじゃないの、と思った瞬間、モンブランが跳ね上がりました。あぁ、やっぱり。とっさに「ホーホーホー」と言いながら手綱を抑え込みますが、自分もびっくりしているから大きい声で言ってしまい、逆効果だったかも。低く「ホーホー」と続けて自分の腰を深く鞍に落とすと、3歩ほど駈けて止まりました。
モンブランにしてみれば、もともとアルフォンスが跳ねるのが気になっていたところに、大きな音でビックリしちゃったので、何もかもイヤになったらしい。それ以降はますます集中力がなくなってしまいました。

時間が来たので、手綱を伸ばして沈静化。ほんと、今日の騎乗はお世辞にも上手いとは言えない騎乗だったなぁ。何周か歩いて、馬場中央に馬を並べ、挨拶して下馬。
今日はモンブランは、続けてレッスンに出るので、いったん馬繋場に上げ、腹帯をゆるめておきます。 10分後、次のレッスンに出ていくモンちゃんを見送って、クラブハウスに戻り、遅めの昼食。

お昼を食べながら、休憩しに来たK村さんにちょっと愚痴ってみます。「今日は私、ほんと下手だったわー。うまく巻き乗りできなかった」すると、K村さんはちょっと考えて「手綱、短く持てって言われた?」「ううん、手綱のバランスの問題らしいけど…」「俺最近毎日乗ってるけど、手綱ぶらんぶらんで乗ってるよ。あんまり口引っ張りすぎると、そのときは曲がっても次曲がらなくなるからね。で、曲がる前から、ちょっとだけ曲がる方の手綱をくっくって引いて、曲がる方向教えとくの」「…思い出した!トリコロールがそうだった!」今さらだけど私、トリコにいろんなことを教えてもらっていたんだ。私が未熟で気がつかなかったことも、いっぱいあったに違いない。
「あれね、ビビリなだけなんだよね」と、モンブランを評するK村さん。確かにこのところ、物見する態度や跳ね方を見ていると、ビビっているというのもうなずける。反抗するのも、気が小さくて、違う動きに安心して従えないということかもしれない。
「でも前はそうじゃなかったよね?」「とっちゃったからだろ」…そうなのか! 入厩してきた当時は、ポスト・トリコとして全くの初心者さんを乗せていたのに、今は初心者さんに出せなくなっている理由はそれかも。初心者係に専念させるのに、リスクを減らすための処置だったはずなんだけど。
仕事に戻るK村さんがさらりと一言、「裏目に出ることもあるよね」。

しばらくすると、なんだか右の座骨だけがじわりと痛くなってきて、これはやっぱり左の座骨が使えていないってことかなぁ。今日はそんなに正反動とってないんだけど。K野さんが近くにいたので、「なんか今日、右の座骨だけが痛いんだけど、あたしバランス悪いってことかなぁ」と訴えてみると、「まぁ、両方均等に痛くなるってことはあんまりないですよ」という返事。「そうなの?均等でなきゃいけないんだと思ってた」「均等なのが本当ですけどね、なかなかそうはならないですから…特にああいう練習用の鞍だと、鞍壺が左右均等じゃないですから」「あ、左手前が多いとか、そういう理由で?」「そうですね。それでどっちかが深くなって、高さが違ってることはありますからね」特にモンブランの場合、(最近そうでもないが)ビジターや初心者さんのお相手が多かったので、左手前が多かろう。
それにしたって、自分のバランスが良くはないことは分かっているけど、鞍のせいにすればちょっと気が楽。

日の出乗馬倶楽部の馬場
↑日の出乗馬倶楽部の見取り図
(緑字:貸与馬、青字:自馬)

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