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(2003.2.15 あきる野・日の出乗馬倶楽部)
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ペルシアンブルーです。きれいな馬。
ペルシアンブルー
今日もいつものように11時の予約、お天気も上々。武蔵増戸から日の出乗馬倶楽部の間にある秋川の水は澄みきっていて、橋の上から水底がくっきりと見えるほどです。
倶楽部に到着してみると、すでに馬場のハローがけは終わっていて、K野さんが調馬索、Uくんが下乗りをしていました。ホワイトボードを見てみると、私たちの名字があるのはモンブランとジュンヨーの場所。いつもどおり、私がモンブランで相方がジュンヨーという配馬です。

着替えをして、モンブランの馬房に迎えに行くと、モンちゃんは扉の上から顔を出して、ずーっとこっちを見ています。もしかして扉開けないでも、無口がかけられるかな?と思い、モンちゃんの鼻に無口をあてがってみると、本人は鼻を突っ込もうとしたのですが、物理的にちょっと無理でした。横着はやめて、ちゃんと扉を開けてから無口を付け直します。
無口と引き手を付けられると、モンちゃんは自分から歩き出します。私は彼が運動好きだからそうなのかと思っていたのですが、誰かが「馬繋場に出たら、誰かしら何かくれると思ってるから」だと言っていました。なるほど、そっちの説のほうが説得力あるな。

馬繋場につなぎ、馬着を脱がせようと思ったら、盛大におしっこを始めるモンブラン。先週も同じことしなかった、お前?
バイトスタッフのKくんにバケツで流してもらい、あらためて馬着を脱がせて裏掘り、ブラシかけ。装鞍をすませ、まだちょっと時間があったので、モンブランと遊んでいると、そこにあーちゃんがやってきました。「また足上げやりましょうねっ」「そうね、今日は頑張る。補助付きの飛び乗りね」先週、あーちゃんに足上げをやってもらって失敗しているので、今日は再チャレンジ。
時間がきたので、ハミをかけます。「ハミかけるの、上手くなりましたね」とあーちゃん、「そりゃ、相手がモンブランだからね。アルフォンスじゃないもん」と言いながら、一緒に馬場に出ます。

馬場に出ると、K野さんが踏み台を持ってきてくれようとしましたが、あーちゃんが「いらないでーす」と言って、鐙を下ろしている私の後ろにまわります。あーちゃんに左のすねを持ってもらい、「いきますよー」でジャンプ、まずお腹を鞍に乗せます。それから左のつま先で鐙を探し、踏んでからどうにかこうにか右足を上げ、鞍をまたぎました。「お腹乗せるの、鞍の上じゃなくて前橋くらいにしとくと、右足が後橋にぶつからなくて楽ですよ」そういわれれば、K野さんやUくんが飛び乗りをするときには、き甲か馬の首あたりに乗っかっているかも。
騎乗して腹帯を締めてもらい、鐙を長めにセット。今日の部班は相方のジュンヨー、ハイセイコーJR、私のモンブランとUくんの乗る美星。全員の準備ができてから、指導のK野さんが「じゃあモンブランから行きましょうか。次ジュンヨー、JRで」さらに最後尾にUくんの美星がつき、蹄跡に出ます。

先週、モンブランはかなりかかってしまったことが記憶に新しいのですが、今日のモンブランはぜんぜん歩度が伸びない。「先頭モンブラン、もうちょっと歩度伸ばしてください」と言われ、脚を使いますが、なかなか前に出ません。「あんまり手綱短く持ちすぎないでくださいね、馬の首固めないで、歩きやすいように歩かせて下さい」
しばらく歩かせると、「じゃあ速歩行きますよ。手綱をちゃんと持って、歩度をつめ」ぐりぐり、と腹にかかとを入れると、首の動きが元気良くなって、速歩が出ました。でも先頭だとモンちゃんの速歩はゆっくりで、速歩を続けるには快適な速度だけど、鏡の前の隅角あたりで止まりそうな速度。脚で蹴って速歩を続けます。
「ムチ持ってるんですから、ちゃんと使って。たたくとびっくりしちゃうから、軽く触れてください」ムチの先をちょんちょんと、音がしない程度に肩先に触れると少し歩度が伸びました。そういえば先週は速攻でムチを取り上げられたけど、あれは先頭じゃなかったからなのか。先頭だったら必要なのね。

日の出の馬場は少し傾斜していて、鏡側からクラブハウスに向かって少し下がっているおかげで割と水はけのいい馬場になっています。そのため砂も低きにつくようで、クラブハウス側はつねに砂が深めです。今日は馬場に砂を足したらしく、先週までよりさらに砂が深くなっています。ハローがけしたばかりで蹄跡のないまっさらな馬場、モンブランはどこを踏んでいいのか迷っている様子。深い砂に入るのがイヤなのか、内側を選んで走ろうとします。内側だって砂が深いんだから、さっさと外回りで蹄跡を作ってしまったほうが楽なんだけどな。モンブランは足下をいちいち気にしていて、集中力がなさそう。
なんとか外を回らせようと、内方脚で外側に向かって押し込んでいるつもりですが、なかなか外周りができない。「馬が内に倒れ込んできそうなときは、外方の手綱をしっかり持ってあげてください」外方の手綱を少し控え、内方脚で押し込むようにします。
それを続けながら、ふと考えました。内方脚を押し込んでばっかりいて、それって巻き乗りの扶助と何が違うんだ?内方の鐙を私が踏み込んでいたら、馬のバランスも内側に倒れ込んでくるんじゃないかなぁ。ということは、内方脚を使いながら、上体のバランスは外方に持っていけばバランスがとれるのかな。…もしかして、こういうときは座骨を使うのかな?内方脚で押し込みながら、外方の座骨だけ重心をかけたらどうなるんだろう。
結果的には、これでわりと外周りができるようになったのですが、本当に正しい扶助なのかしら。謎だ。でも、砂の深いところに入ってしまうと、モンブランは高脚になって走っているらしく、反動が高くなってきつかったです。

30分くらいしたところで、後ろのジュンヨーがかかり始めたらしく、ものすごく足音が近い。でも先頭だとモンちゃんの歩度伸ばすの難しいし、速歩の反動が高くなって辛いし。
でもふつうに速歩をとっていると、後ろのジュンヨーがモンちゃんのお尻に乗りかかってきそうな勢い。仕方がないので隅角を丸くショートカット気味に走らせたのですが、それでも追い抜かれそうになります。と、モンブランが後ろを気にする顔をして、止まろうとしました。そのときは、私からでもジュンヨーの姿を視界の端にとらえたので、半馬身くらい並びかけていたはず。私よりも後方視界の広いモンブランにとっては、他馬がそこまで近づいてきたのが見えればそりゃイヤだろう。JRかウィンダムだったら、とっくにケンカをしかけている距離です。
ジュンちゃんはどんどん抑えきれなくなっているらしく、斜めに手前を換えるときも、追い越しをかけるような近さで迫ってきます。モンが特別遅いわけじゃないんだから、ジュンちゃんのほうでなんか大回りするとかしてよー。

速歩のまま巻き乗り、モンブランは勢いがついていないので途中で止まりそう。内方脚だけがんがん蹴って、どうにか止まらずに巻き乗りができました。
「もう少し内方姿勢とって、円のそこまでは上手くできてますから、そこからもう少し前に出す感じで」と、何度も巻き乗りの練習。K野さんは集中的に私に教えようとしてくれているみたい。
「内方脚、長く伸ばして使って」あっ、なるほどね。内方の脚をびろーんと長くするイメージで踏み下げると、内方の座骨に体重がかかりやすいし、自然と内方姿勢がとりやすいかも。

「ジュンヨー巻き乗りして、JRの後ろ」で、モンブラン、JR、ジュンヨーの順になります。後ろがJRなら、JRものろいからモンちゃんがのんびり走っても支障ないだろう。ちょっとホッとしました。
「モンブランは手綱、そのくらいの長さでいいです。そのくらい首を下げさせて、ゆっくり走って下さいね」とK野さんに言われたそばから、モンブランは風がふいたと言って嫌がって、首を上げて振ります。やっぱり、何かあると首上げちゃうんだなぁ。ものすごくイヤな感じ。

時間がきたので、手綱を伸ばして沈静化。少し風が出てきたので今日は鐙上げはしないで、自分の座骨の位置を意識しながら自由常歩。
「中に入ってきてください」の指示で馬場中央に入り、挨拶して下馬。馬繋場に連れて行き、裏掘りだけして馬房に帰します。昼飼いをつけ、私もお昼ごはん。
この日はとても日差しがあたたかく、クラブハウスのデッキでひなたぼっこしながらみんなで談笑していると、ママさんやI野先生が帰ってみえました。今日はお休みだと思っていたら、先週入ってきたペルシアンブルーのもといた所や、馬事公苑(ちょうどドイツのクリムケさんの講習会の日でした)を回って帰ってきたんだとか。

あーちゃんが、「今日あれに乗せてもらえるんですー」と嬉しそう。Y先生の自馬であるペルシアンブルーに、息子さんのDくんが乗った後、あーちゃんが30分ほど乗ることになったのです。あーちゃんと一緒にペルを見ていると、Y先生が「Sさんのあと、常歩だけでも乗る?」と私に言ってきました。「とんでもない!」だって今もペルは、Dくんを乗せて「ぶぶぶぶぶぶぶ!」と首を上げてアゴを振っています。あんな馬、私に御せるわけがない。
そのあと、あーちゃんが乗りに行ったのをずっと見ていましたが、ペルはすごくきれいで、あんな馬に乗れたらかっこいいだろうけど、かなり軽そう。あーちゃんでも大変そうなのに、やっぱりあんなの私に抑えきれるわけないから、きっとさっきのは冗談だ。きっとそうだ。
あーちゃんが常歩に落として沈静化に入ったとき、Y先生がやってきて「じゃあ乗りましょうか」。「は?本当に乗るんですか?」「覚悟決めちゃいなさい」もう引っ込みがつかなくなってしまった…。Y先生にせかされ、メットとチャップスと手袋を持って行きかけると、「そんな気合い入れなくてもいいから」「じ、じゃあヘルメットだけは」と、メットをかぶって手袋をし、馬場へ。
「絶対常歩だけですよ?」と大騒ぎしながら馬場に出ると、ちょうどあーちゃんが下馬したところでした。Y先生が持ってきてくださった踏み台をセットし、「ほら、サッと乗っちゃって」うわー。踏み台に上って鐙に左足をかけ、騎乗。あ、この子ってけっこう背が高いわ。でもまたがった感じは思ったより大型ではなく、ちょうどふとももがしっくりくる太さ。
鐙は長くて、ちょっとつま先が触れる程度。ぜんぜん踏めませんでしたが「鐙はそれでも大丈夫でしょう」まったく足が触らないわけではないし、常歩だけなんだったらまぁ、この長さでもいいのかな。軽速歩やるわけじゃなし。
「じゃあ、出ましょう」軽く脚に力を入れてみると、簡単に常歩が出ました。しかも、常歩の歩度がいきなり伸びてる。わぁん、やっぱりこの馬軽いよぅ。首を使って元気の良い常歩、私は何もしていないのに。いきなりこの状態になれるっていうのが、やっぱり競技馬だってことなのかしら。
かなり緊張しながら1周を終え、まぁ贅沢な体験だったわね、と終わるつもりでいたら、馬を止めていいような気配じゃない。仕方がないので、そのままもう1周。馬場横の観覧席には、いつのまにか会員仲間たちが数人陣取って、私の騎乗を見ています。

ようやく2周目を終えて、元の位置に戻ると、あろうことかY先生が「じゃあちょっと速歩やってみる?」と言います。「えっ、だって常歩だけって」「大丈夫大丈夫、舌鼓だけで出ますから」いや、そういう問題じゃなくって〜。もちろん先生がご好意で言ってくださっているのは分かるのですが、さっきあーちゃんが速歩からすぽんと駈歩になっているのを見ているので、ちょっと怖いよぅ。
ほんの少し、脚の力を強くしたかしないうちに、ふっと速歩が出ました。たぶん中央に立つY先生の舌鼓に反応して出たものですが、ふだん蹴っても蹴っても速歩の出ない子に慣れている私にとっては、何もしないのに速歩が出たも同然。これでかなり焦ってしまいました。
もともと歩度が伸びていたので、さかさか走ろうとするペル、そんなに速く走られたら怖いよ。「抑えて、抑えて」とY先生も言っています。手綱を少し握ってみると、ペルがすぃっと首を上げました。え、首上げちゃうの?首を上げて走られると、恐怖感が増してしまう(もしかしてだけど、サンシャインで暴走されたときのトラウマかなぁ…)。この状態でハミを引っ張っちゃうと、余計かかっちゃうんじゃないだろうか。
「声かけて、馬を落ち着かせながら。落ち着かせるときの声のかけ方は知ってますか?」「『ホーホー』しか知らないです」「それでいいんですよ」ホーホー、と低い声をかけながら速歩を続けます。 ペルを抑えるのだけで必死なのに、馬場の隅にハトが舞い降りてくる。うわーもう、マジで勘弁して。 ハトに馬が近づけばハトは飛び立つだろうし、馬はそれにびっくりするだろう。ハトを刺激しないように、そこの隅角に近づかないことにしました。外側の手綱を張って、内方を少し控えると、思ったとおりの蹄跡で隅角をショートカットしてくれました。あら、ほんのちょっとの扶助だったのに、ものすごく素直。
「もうすこし内方姿勢とらせて。馬の顔が外向いてますよ」あんまり内方姿勢とらせると駈歩出ちゃうんじゃないか、とちょっとびくびくしながら、少し内方の手綱を控えます。「もうちょっと。まだ外向いてますよ」内方をもう少し引いてみたつもりだけど、たぶんすぐ戻ったような気がします。

「常歩に落として」と言われて手綱を引くと、ペルがぐぐーっと首を上げてきました。え、そんなに首を上げられたら手綱が引けなくなっちゃうよぅ。「抑えなさい、どうしてそこで譲っちゃうんですか。ちゃんと手綱引いて」ひ、引いてるつもりなんですけど。ペルはどんどん首を上げるし、でも拳を自分のお腹に引きつけておくことしか、できることを思いつかない(本当ならここで、上体を思いっきり後傾させるとか、拳を脇腹のほうにまで引くとか、手綱を少し短く持つとかできたはずなのですが、それができないくらい緊張していたのですね)。
ペルの速歩はいっこうに止まる気配を見せません。「引っ張って、もっと引っ張りなさい。ぜんぜん引っ張ってないですよ」どうにかこうにか、一度はペルが常歩に落ちたのですが、またすぐ速歩が出ました。「引っ張って引っ張って、そこで好き勝手させちゃダメなんです。ちゃんと止めて」ペルは走りたいらしく、止めてはまた走ろうとする、手綱を引いて止める、止めるとまた走ろうとする。何度か繰り返しているうちに、ペルがどんなに頭を上げても手綱を引っ張っていいんだということが分かってきました。
ようやく、「そっちの馬場に出て、止めましょう」と、隣の馬場に出ます。隣の馬場ではA木さんが春風を曳き馬していましたが、またペルに走られそうになっている私に「前傾してるよ」と言ってくれました。それか。緊張しすぎで、上体が前傾してしまっていたのでした。「ありがと」上体を倒し、馬場中央でペルを止めます。
すぐDくんが飛んできたので、「ごめーん」と言いながら下馬すると、Dくんは「難しいですよね、この馬」となぐさめてくれました。せっかくのいい馬、ちゃんと乗れなくてごめんよ、と言ったつもりだったのだけど。

「あれ、もうショウは終わり?」なんて、傍観していた連中にからかわれながらも、なんか膝が笑っている私。相当緊張していたんだなぁ。
うちの倶楽部には私より上手い人がたくさんいるわけで、その中でY先生の自馬であるペルシアンブルーに乗せてもらえたのが、どうして私だったのか? 私の勝手な憶測ですけど、ペルは初級者レベルでも乗れる馬だということをアピールしたいと思ったときに、こういうサイトを作っていて倶楽部でも「目立つ」存在になってしまっている私に白羽の矢が立ったということなんじゃないのかなぁ(Y先生、違っていたらすみません)。とすれば、まるでご期待に添えなかったかも。
「でも楽しかったでしょ?」とニコニコするY先生。あまり楽しむ余裕はなかったけど、いい経験になりました。

日の出乗馬倶楽部の馬場
↑日の出乗馬倶楽部の見取り図
(緑字:貸与馬、青字:自馬)

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