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(2002.3.30 あきる野・日の出乗馬倶楽部)
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(58鞍目からのつづき)
ウィンダムの手入れを終えてクラブハウスに戻り、今日はお弁当を持ってきていないのでどうしようかな、と思いつつお茶を飲んでいると、I野先生が紙を持ってきて「高階さんたちもこれに出ないか?」と言います。
先週から少し話は聞いていましたが、山梨・ララミー牧場でK野さんが2級試験を受ける当日、競技会も併催されるので、K野さんの応援がてら競技会に出ないかという話なのです。
競技会なんてレベルの高い人の話だと思っていたので、「えっ、私が出られるレベルなんですか?」
「出られるさ、速歩班なら部班競技と玉入れとジムカーナ出来るだろ。運動会でやったのと同じだからな」
しかしその日は、相方が資格試験で行けない日。車も車の免許もない私は、ひとりで行くのがちょっと難しい。電車で行く手段を考えてみましたが、9時からの競技会に間に合うためには4時半に家を出ないと(そもそも電車は動いているのだろうか)。
出てみたいことは出てみたいけど、困ったなぁ、と思いつつトイレに行って帰ってくると、相方と話していた先生がいきなり「高階さんいいことを思いついたぞ。先生と一緒に前泊しよう」
「は?」
「今ダンナさんと話してたんだけどね、ララミーには泊まるところあるから、みんなで前日から行って泊まるんだよ。前日の夕方に日の出に集合するから、奥さんもそのときに来て誰かの車に乗せてもらえばいいよ。行く途中でレストランか何かで夕食をとって、風呂はララミーの近くに温泉あるしな」
はぁ、なるほど。配偶者公認の浮気のお誘いかと思いました(笑)
「それとも近くのペンションなんかのほうがいいかな」
「いえ、馬の匂いがするところのほうが」
「そうだよそうだよ、馬乗りっていうのはそういうもんだ」と嬉しそうな先生。

そんな話をしているとママさんが「今日は空いてるわよ、もう1鞍いかがですか?」
「そうですねぇ。でも今日お弁当持ってきてないから、お昼食べてないんですよ」
すると先生、「なんだ、持ってきてないのか。コンビニで買ってくればいいじゃないか、近くにお蕎麦やさんもあるし。それから乗れば」
ホワイトボードの騎乗表を見ると、15時のレッスンがまだ2人しか入っていませんが、そのお二人は私たちよりかなりレベルの高い方たち。
「ここに入りたいけど、レベルが違うねぇ」と言っていると、先生がいらして「どうした?」「ここだとレベルが違いすぎますよね」「バカだなぁ、だからいいんじゃないか。レベルの高い人についていくとレベルの高いレッスンができるぞ。君たちだってレベルの低い人に合わせることがあるんだから、今度は合わせてもらいなさい」
それで15時から乗ることにしました。「馬はどうする?」「じゃあ愛するモンブランで」
昼食を仕入れに、最寄りのコンビニまで歩いて行こうとしたら、「歩いていくと遠いよ。先生の車で行きなさい」と車を貸していただき、相方の運転でコンビニへ。いたれりつくせり。
コンビニから帰ってくるとすでに14時を回っていたので、あわてておにぎりをほおばります。

昼食を終えて馬房へ迎えにいくと、いつもどおり自分から無口をつけさせてくれるモンブラン。
馬繋場に出して裏掘り、ブラッシング。馬装は手間がかからず、勒をつけて馬場に出ます。
部班はコスモ、ハイセイコーJr.と相方のロッキー、私がモンブラン。馬場中央に並んだ4頭を眺めてちょっと考えていた先生が、「じゃあコスモから行こう、次モンブランで。モンブランがあんまり早いようなら先頭と交代するからな」
ロッキー、ハイセイコーJr.と続き、左手前で蹄跡を常歩周回します。
今日のモンブランはずいぶん元気がいい。普通に歩いていてもコスモに追いつきそうで、常歩から手綱を控えて歩きます。めったにこんなことはしないんだけど。

「ここでは巻き乗りのとき、”各個に巻き乗り”と”順次巻き乗り”ってちゃんと区別してるけど、クラブや指導者によっては言い方が違うかもしれない。ただ”巻き乗り”っていうと”各個に巻き乗り”の意味で、”順次”ってちゃんと言われれば”順次巻き乗り”になる。また、”6メートルの巻き乗り”や”8メートルの巻き乗り”と大きさを指定されることもあるけれども、何も言われないときは10メートルが基本だ。だから、”巻き乗り”とだけ言われれば、”各個に10メートルの巻き乗り”という意味になるんだ」
おや、先生の指導がだいぶ競技会を意識したものになっている。
「じゃあ、6メートルの巻き乗り」
ということは、直径6メートルで各個に巻き乗りってことだな。
巻き乗りはうまくいきましたが、モンブランは先生の指示が聞こえるたびに走ろうとします。そのたび手綱を控えるとやめるのですが、一体どうしたんだろう。

「じゃあ速歩いくぞ。速歩、」
と言われた瞬間、もうモンブランは走り出しています。
「こーら早いぞ、まだ予令だ。進めって言ってからだろ」
それは分かってるんですが、モンブランが走りたくてしょうがないんですぅ。
「馬が号令知ってるからな、勝手に走ることもあるけど、ちゃんと言うことを聞かせろよ。速歩、すすーめ」
今度はちゃんと号令のタイミングで速歩を出せました。馬が賢すぎるのも考えものだ。

速歩のまま斜めに手前を替え。前にいるコスモは手前を替えるときに駈歩を出してしまいやすい馬なのですが・・・やっぱりやった。モンブランがつられないように、押さえ気味で速歩でいきます。
自分で駈歩を出したことがないから良くわかりませんが、手前を替える手綱の扶助と、駈歩の手前を教える扶助は似ているらしいので、コスモはつい駈歩を出してしまうのかなぁ。
蹄跡に戻るところで、予想通りモンブランは早めに曲がっていく。できるだけ真っ直ぐ走るように脚を使っていたつもりなのですが、この子は自分の目で判断しているところがあって、前の馬が曲がったら曲がろうとするのです。分かってたはずなんだけど、防げなかった。悔しい。

速歩で走らせていると、突然大音響がして、コスモが駈けだしてしまいました。モンブランはあまり駈歩を出さない馬なので、ちょっと手綱を控えただけで大丈夫でしたが、さすがに落ち着かなかったらしく蹄跡を外れていきます。
倶楽部の近くにセサミストリートのテーマパークだかアトラクションだかが出来たんだそうで(良く知らない)、そこから大きな音楽やマイク音声が流れてきたようです。
「やめろとも言えないしなぁ」と、常歩に落として周回、馬を落ち着かせます。
それでも一番音が良く聞こえるポイントでは、やっぱり前のコスモは走り出しそう。

待っていても大音響が止むわけではありませんが、少し音が小さくなって、馬も慣れてきたようです。また速歩を始めます。
モンブランは落ち着いているのですが、前のコスモは手前を替えるときや、隣の馬場にいるジュンヨーとラチ越しにすれ違うときに、すぐ駈け出そうとします。軽いパニックを起こしているのだろうな。やはりコスモは繊細すぎて、まだ私には乗りこなせる馬ではないみたい。
コスモにつられないように、馬間距離を2馬身開けてモンブランを走らせますが、杞憂に終わりました。

「常歩に落とせー」
先生が、ラチのところに置いてあった丸太を馬場のほうに出してきました。蹄跡をちょっと外れて垂直に、横木が2本並べて置かれます。蹄跡からみて中央線に沿った位置なので、中央線から手前を替えるときの道筋かしら。
すると、蹄跡を外れて横木の上を歩くように指示が。わー、横木またぎだ。障害の初歩の初歩にやるものですが、横木を踏まないように越えさせなくてはなりません。でも踏歩の合わせかたなんか分からないので、馬にまかせよう。
コスモにつづいて横木の上を歩かせると、足下で「がこっ」と音が。横木を少し踏んでしまったようですが、特にバランスを崩すほどではなく、馬が自分でリカバーしてくれました。
常歩のまま1周してきて、もう一回。今度は踏まずにきれいにまたげました。モンブランの首をたたいてほめてやります。

「速歩、すすーめ」
えっ、まさか速歩で横木またぐのかなぁ・・・前のコスモは当然のように速歩で横木に向かっていきます。速歩でやると、またぐというより軽く飛び越える形になるんですが、覚悟を決めるよりあるまい。続いて横木に向かうと、モンブランは素直に横木に向かって走ります。
ちょっとふわっと浮いたような感じと、一度落ちてまた浮いた感じ。横木に引っかかることもなく、きれいに飛びました。「モンブランやるじゃん!」首をたたき、また蹄跡へ。

次の周では、前のコスモとちょっと離れてしまったせいか、横木を無視して蹄跡のほうへ行ってしまいました。
「おいおい」と先生も笑っていましたが、「わざと避けたんじゃないんです〜」
次の周、今度はうまく横木に入って飛びます。障害の練習なのだから、障害に入るまでは体を起こして、入る瞬間前傾するとか、と考えはしたのですが、実際に横木に入るときには馬の動きに合わせるのがせいいっぱい。それでもモンブランは、速歩で飛んだ7〜8回のうち一度も横木にひっかかることなく飛んでくれました。

時間が来たので手綱をゆるめ、常歩で沈静。
クラブハウスのほうからママさんが出てきて、「上手く飛べたじゃありませんか、リボンものよ」
あぁ、リボン。競技会で上位入賞するともらえる、メダルに当たるもの。憧れるなぁ。
馬房のそばを通ったとき、K村さんに「やっぱりモンブランなんですか?」と聞かれます。
「うん、相当愛しちゃってるかもしれない」
「今ので余計気に入っちゃったんじゃないですか、飛べたから」
「う、確かに」

馬場中央で馬を並べ挨拶し、下馬。
先生が「モンブランどうだった?」と聞いてきたので、「すっごく動きました。走りたかったみたい」
そんなことを言っている間にも、モンブランは先生にニンジンをもらえると思ってすりよって行きます。すると先生は「今日は持ってないんだよ」と両手を広げて見せました。納得いかないらしいモンブラン。
「たまには先生だってニンジンくれない日もあるのよ、モンブラン」

馬繋場に戻って手入れをしていると、F田さんが来て「モンブラン、脚洗って拭いたら、馬房に戻さないでそこにちょっと立たせといてください。傷の消毒しますから」
そういえば先週ケガをして球節にバンテージを巻いていましたが、今日はしていません。洗うときに見たら、ふさがってはいましたがけっこうな切り傷。放牧中にケガしたそうなんですが、こんな脚でよく飛んでくれたなぁ。
傷に気をつけながら前脚をみっちり洗っていると、ウィンダムにつづいてモンブランも、鼻を背中やおしりにこすりつけてきて、セーターをめくられました。
ウィンダムのときも見ていたMちゃんによれば、「その服、馬がめくりたくなる服なんじゃない」だそうです。

ブラシをかけていると、モンブランがまた馬っ気を出しています、おやおや。Mちゃんが「おしっこ?」と言うのですが、来週中学校に入学する彼女に、この男の子現象をなんといって説明したものか。
「男の子だからねぇ。この子去勢してないから」勘のいい彼女はそれでだいたい分かったらしい。
「乗馬って去勢しなきゃいけないの?」
「去勢するとおとなしくなるっていうね」
「女の子は乗馬になれないの?」
「なれるよ。なれるけど、女の子はお母さんになるほうが優先だからね。女の子は1年に1頭しか子供つくれないけど、男の子は1年に何頭も子供作れるから」
競走馬社会の力関係が乗馬社会にも影響している、ということを説明するのは難しいですね。
「モンブランは競馬に出られないの?」
「モンブランはね、中央競馬には出られない。アングロアラブっていう種類は、地方競馬にしか出られないんだよ」
「ウィンダムは?」
「あれクォーターだからね、日本では競走馬になれないね。アメリカではなれるんだけど。ウィンダムももともとアメリカの馬でしょ」
将来は牧場で働きたいという夢を持つMちゃん、いろいろなことが知りたいようです。

↓日の出乗馬倶楽部の馬場
緑字はクラブ貸与馬、青字は預託馬。これで全部ではありません

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