←112鞍目 鞍数外・いや、常歩で5分だけ。
(2003.3.9 世田谷・馬事公苑 走路)
113鞍目→
たてがみを編んでいる最中のコスモと私。
こんな愉快なことにされているのに、
黙って耐えるコスモちゃん(笑)
スタイリング中

で、完成形がこれ↓。
スタイリング後

馬事公苑にて3月7〜9日に行われた、スクーリング大会IIに、日の出乗馬倶楽部からも参加することになりました。日の出では、馬を外の試合に連れて行ったことがほとんどなく、会員の私たちも試合経験が少ないので、馬も人も「試合に慣れる」のが目的です。相方と私は試合に出ないものの、「馬付」として勉強がてら参加することになりました。
連れて行く馬はロゼッタとコスモ、選手は倶楽部屈指の上級者であるI崎さんと、指導員のK野さん。8日に馬事公苑に入厩、9日に試合に出場する予定になっています。

入厩前日の7日、この日は金曜日でしたが、会社をお休みして倶楽部へ。13時から打ち合わせ会と準備をする予定になっていたので、11時から1鞍乗るつもりだったのですが、あいにく前夜からの大雨で騎乗をキャンセル。午後から日の出に出向き、打ち合わせ会をしました。入厩の手順、試合のタイムスケジュールなどをうち合わせ、馬運車や持参するものの準備をし、この日は終了。

入厩当日、馬運車は6時に日の出乗馬倶楽部を出発するので、メンバーは8時に馬事公苑に集合することになっています。絶対に外に食べに出るヒマはないので、朝から6合のごはんを炊き出し、山ほどのおにぎりをむすんで持参。
家を出てからキャップを忘れたことに気がつき、前日の打ち合わせで「馬場に入るときは必ずキャップをかぶること」というのがあったので(これは普段から、日の出の馬場でもそう言われています)、相方に取りに帰ってもらいました。そんなこんなで馬事公苑に到着したのは8時5分すぎ、あーちゃんから「もう入厩してますよー」と電話があり、馬房へ行ってみると、2頭ともおとなしく馬房に入っていました。オーナーによると、輸送の途中にロゼッタが後ろ脚を滑らせたのか尻もちをついてしまったということで、狭い馬運車内のことなので飛節にすりむき傷を作ってしまっていました。でも本人はいたって元気で、寝ワラが珍しいのかばくばく食べています(日の出では馬房にオガくずを敷いているので)。2頭ともよく食べているし、ボロもしているし、知らないところに来たストレスというのはあまりなさそうに見えます。
午後から走路を借りて練習ができるらしいのですが、その前に紅2点のIさんと私が馬のたてがみを編むことになりました。馬術部出身のIさんに教えてもらいながら、コスモのたてがみを編みます(写真参照)。
風邪を引かせても、という配慮から、冬の日の出ではあまりたてがみを洗いません。しっぽは馬体から離れているから前日に洗いましたが、たてがみは櫛を通しただけなので、根元にフケがいっぱい…。まぁサラサラよりもまとまりはいいので、三つ編みはやりやすかったのですが、終わったら指先がガビガビになってしまいました。
台に乗って細かい三つ編みを上に向かって立てるように編み、それをおだんごにして輪ゴムで止めていくのですが、ずっと上に上げている腕が痛くなるし、不安定なワラの上の台に踏ん張っていると足が痛くなるし、輪ゴムで止める作業で右手の親指がつってきてしまいました。でもIさんからは「私よりよっぽどきれいに出来てるよ」とお褒めをいただき、他のメンバーからは「カリソメ美容師」というあだ名を頂戴しました。

厩舎から地下馬道を通り、練習馬場である走路へ。見慣れない地下馬道に、馬が素直に入るかどうかが心配されるところだったのですが、超落ち着き馬であるロゼッタじいさんは全く問題なし。コスモはかなり過敏な馬なので、入る時はかなり鼻息が荒かったそうなのですが、鞍上がK野さんなので問題なく入りました。帰りは全く興奮もせず、慣れたらしい。考えてみたらコスモは、日の出に来る前は競技馬で、馬事公苑の経験も持っているはず。私たちより慣れてるんじゃん。
走路での練習を終え、ロゼッタを連れて帰ってくると、まったく馬繋場が空いていません。50頭以上いる馬に対して、たった9つの馬繋場しか使えないのだから当然か。仕方がないので、ロゼッタを連れたまま、3カ所に点在する馬繋場を行ったり来たりして、空くのを待ちます。
すると、私の目の前の馬繋場が空いたので、そこにロゼッタを入れようとすると、隣の馬繋場で馬の手入れをしていた学生に阻まれました。「ここ、とってるんで」「は?」「馬入ってくるんで」いかにも先輩に命令されて言っていますという風な、おどおどした感じの学生でしたが、教室の席取りじゃないんだから、このガキが。5分くらいして、その馬繋場にはゆうゆうとそこの馬が入ってきました。ここにこんな痩せ馬が待っているのに、決して手入れを急ごうとはしない学生達。こんな公共の場所でそういうことができる学生に呆れもしましたが、私たちが試合慣れしてないと見て、見くびられているのか? と悲しくもなりました。それからロゼッタが馬繋場に入れるまでには20分くらいを待たねばならず、寒風の中を待たされたロゼッタは本当にかわいそうでした。そんなことが社会に出て通用すると思うなよ、T大馬術部。

両頭とも手入れを終え、馬着を着せて馬房へ。夕飼いの時間まで馬房の外で打ち合わせ。今大会のスチュワードを勤めるY先生もやってきて、いろいろとアドバイスしてくれます。そこで試合当日の役目として、私はロゼッタの馬付を仰せつかりました。コスモの馬付をしようかなと思ったら、Y先生が「ロゼッタのほうがいい」ということ。メンバーの中で一番体格が小さく、技量も低い私が、何かあったときに抑えられるのはコスモではなくロゼッタだということでしょう。
夕飼い前、コスモのたてがみに気に入らないところが出てきたので、編み直し。ですが途中で夕飼いの時間になってしまい、人間も夕飼いに行こうということになったので(要するに飲みですな…)、残りは明日の朝にやることにしました。

さて、試合当日。今日は7時半の集合になっていましたが、コスモのたてがみを編み残しているので、7時すぎに馬事公苑へ。
急いで編み残した分を仕上げ、ゴールドのビニールテープを巻いて仕上げ(最後のほうはほとんどK野さんにやってもらったけど)。コスモの出番は9時半から、ロゼッタは10時半と14時の2回出る予定です。試合の前に1時間半は動かしておきたいというK野さんに従い、8時に走路へ。コスモとロゼッタの出番は1時間近く間があきますが、ロゼッタだけ馬房に残しておいても、後で馬装に戻ってくる時間はなさそうなので、2頭一緒に走路へ向かいます。
馬事公苑の地下馬道は、馬に人が騎乗して通らなければいけません。ロゼッタのまわりにいたのは選手のI崎さん、Iさんと私。選手はできるだけ体力を温存するようにY先生から言われているので、Iさんが騎乗することになりました。帽子のなかったIさんは、「無帽ってわけにも行かないから、帽子貸して」と私の帽子を奪い、私が足上げをしてあげて騎乗。私のほうは無帽になってしまうので、あまり馬にくっつかないようにして馬の鼻先を歩き、走路へ。
試合時間までコスモで練習をし、そのまま試合に出るK野さんは、試合が終わるとすぐさまロゼッタに乗って動かすことになっています。ロゼッタをこっちに連れてきているものの、コスモの試合が終わるまでに体が冷えてはいけないので、Iさんがそのまま常歩で動かすことになりました。

コスモの出番が近くなり、控え馬場の隣り、ポニーリンクへ移動。このころになると、日の出からの応援団も集まり始めます。こっちは人がたくさんいるのに、ロゼッタのほうは乗っているIさんしかいないことに気がつき、馬付の自分がロゼッタのそばを離れちゃいけなかったな、と思って走路に戻りました。
しばらくIさんが常歩するところを見ていましたが、Iさんが私のそばで馬を止め、「乗る?乗りたいでしょ?」と言います。「え?そりゃ乗りたくなくはないけど」試合前の馬に私の技量で乗ってもいいことなさそうだし、周りは選手ばっかりで怖いし、とごにょごにょ言っている間に、もうIさんは下馬して私を乗せる準備をしています。「手綱伸ばして、常歩してればいいだけだからさ、乗ってて。私ちょっとあっち見てきたいし」「はぁ…。」貸していたキャップを返してもらい、Iさんに足上げをしてもらって騎乗。足上げはあーちゃんにさんざん練習させられていましたが、今日のが一番うまく乗れたな。
騎乗してみると、「これ、鐙の左右がぜんぜん違うじゃないですか」「うん、常歩だから別にいいかと思って」直そうかと思いましたが、まぁいいか。長さの違う鐙のまま、軽く脚を使うと歩き出しました。おや、ロゼってもっと重い馬じゃなかったっけ? 前に乗ってる人が良かったからか。
「練習してる人の蹄跡を邪魔しないように、常歩で流してて。3湾曲とかやる人いるから、それは避けてね」馬場には、試合に出る馬が5〜6頭練習しています。

Iさんはコスモの様子を見に行き、私はロゼッタで常歩をはじめます。広い走路ですが、他の馬が駈歩をしているところには近づきたくないので、できるだけ避けて常歩。走路の途中にラチが置いてあり、ここから向こうには行かないようにということらしい。じゃあここで方向転換するかな、とちょっと内方に目をやると、ロゼッタがすいっと方向を変えました。あれ、全く脚も手綱も使ってないのに? 今のって、私が内方を見たときに、内方の座骨に体重がかかって、それで曲がったってことかな。
試しに、次に曲がりたい場所で、脚はふくらはぎを当てる程度にし、内方の座骨に体重をかけると、また簡単にその方向へ曲がっていきます。うわー、ロゼッタってこんないい馬だったんだ。最近乗っていなかったけど、私こんないい馬に乗ってて、このことに気が付けなかったんだなぁ。
ここのところロゼッタは競技馬として、部班にはほとんど使わず(ロゼッタの体力があまりないことも考慮して)、フリー騎乗で上手な人しか乗っていなかったということもあるかも。ってことは、こんなに良く仕上がってるロゼッタに私なんかが乗っちゃあ、I野先生がよくおっしゃる「口向き」(というのがどういうことかは分かりませんが)が良くなくなったりしないだろうか。
走路の端っこに行ったとき、強風にあおられてキャップが飛んでしまいました。うーん、どうしよう、Iさんが近くにいない。無帽で馬に乗っているのはかなりヤバいと思うんだけど、下馬して自分で拾うべきか、でもそうすると、まわりによその馬がうようよしてるところで再騎乗するのは大変そう。どうしようかな、と思いながらそのままロゼを歩かせていると、走路の外によその馬付らしい女性たちが控えていました。よし、この人たちに頼もう。
馬上から「すみません、お願いがあるんですけどお手すきでしょうか」と声をかけると、人のいい人たちで「はいはい、何ですか?」「あっちで帽子飛ばされちゃったんです、拾っていただけませんか?」「あそこの黒いの? ちょっと大変、カラスが狙ってるよ! 」とあわてて拾いに行ってくれました。
そうしているときにちょうどIさんが戻ってきました。

Iさんに「もっと手綱ぶらんぶらんにして、楽に乗っててよ」と言われたのですが、周りの馬はかなり本気の練習をしていて、駈歩でそばを駈け抜けられたりするので、怖くて手綱を伸ばしきることができません。常歩なのに、ロゼッタは軽くつまづいたりする。やだなぁ。
走路の一番端、さっきIさんが乗っていても「この向こうはあんまり行きたくないみたい」と言っていた場所で、ロゼの動きがあんまり良くない。さっきまであんなに簡単に座骨の加重だけで方向転換してくれたのに、ここではあまり言うことを聞いてくれません。試合前だからあんまり馬体を汚さないようにしようね、とIさんから言われていたから強い脚を入れるのはイヤだし、試合前の馬がこれ以上言うことを聞かない状態になるのは良くないな。つまづいたりしてるし、いっそ曳き馬じゃダメかしら。
周りに馬が増えてきたせいか、常歩に飽きたのか、ロゼッタが「動くのヤダなー」と言い出したような感じ。日の出の馬場だったら、ここでどっかん蹴るとかするけど、ここは走路だし、周りにホットな馬がいっぱいだから、変なことしたくないな。えぇい、馬を壊さないうちに降りてしまえ。
他の馬が近くにいないことを確かめ、下馬して鐙をまとめ、曳き馬で走路の反対側へ向かって歩き出すと、Iさんが「どうしたの!? 」と走ってきました。「ロゼの調子が悪いとかじゃないんですけど、あたしが物見しちゃってダメで、試合前だから変なクセつけないうちに降りちゃおうと思って」と言うと、「もっと自信持っていいのに!! 試合前でもなんでも、自分の思うとおりに動かせばいいのよ」と叱咤されましたが、そんなこと言っても馬混みが怖いんだもん。
ゆうべの飲み会でY先生に、「年に1回でも2回でも、フリー騎乗したほうがいい」と言われましたが、この程度の馬込みが怖いようでは、フリーなんてまだまだだな。普段の部班がいかに安心なものか、逆に痛感してしまいました。

「じゃああっちに連れて行って、そこから試合見ようか、もう始まるし。見える? 」走路から、試合会場であるメインアリーナは、観覧席などが邪魔ですが見えないこともありません。できるだけ試合会場に近い、走路の端までロゼッタを曳いていき、そこで止めて試合を見ることにしました。ここなら他の馬の邪魔にもならないし。
私はコンタクトを入れていたのですが、同じく近眼のIさんは「私見えない」と、走路の柵を越えて試合会場のほうへ。私はロゼッタの手綱を持ったまま、コスモの演技が始まるのを見ていました。じっとそっちを見ていると、ロゼッタが「何してるの? なんでかまってくれないの? 」と言いたげに首を曲げて、私の肩に鼻をこすりつけてきたので、「ほら、あっちでコスモががんばってるんだよ、見える? 」と試合会場の方を指さすと、ちゃんとその方向に目をやるロゼッタ。まるで言葉が分かってるみたいだな。でもすぐ、「ふーん、そう」という感じで、自分の肢巻を気にしたりし始めました。ちょっと飽きたみたいだし、突っ立ってるのも体を冷やすだろうから、ときどき巻き乗り(乗ってないけど)をしながら、試合観戦。すぐIさんが戻ってきて、「もう半分くらい終わっちゃったけど、替わるから見てきていいよ」と言ってくれたので、ロゼッタを預けて走路の柵を越え、走って観覧席へ。コスモはやはり興奮しているようで、ときどき頭を高く上げてしまっていましたが、それをK野さんは慎重に抑え込み、演技を無事に終了しました。あとでK野さんが自分で言うには、「回って帰ってこられただけで充分ですよ」。

出番が終わって、走路に戻ってきたK野さんにロゼッタを任せ、他のメンバーは出番の終わったコスモを厩舎へ。ロゼッタの馬付である私は走路に残ります。
出番まであと数頭となり、K野さんはロゼッタをポニーリンクに入れました。そこでI崎さんと乗り替わり、最終チェック。馬付の私にできることは、ブーツを拭いたり、馬体の汚れを払ったりするくらい。
出番まであと3頭、ここで初めて控え馬場に入れるようになります。ロゼッタに乗った選手のI崎さん、Iさんと私は馬付として、控え馬場へ入ります。そこにはスチュワードとしてY先生がいらっしゃるのが心強く、とりあえずその近くにいるようにします。
出番まであと1頭になると、スチュワードの馬体チェックが入ります。そこから先は、馬付といえども馬と選手に触れたら失格になってしまいます。もともと私にできることはほとんどなかったけど、ここからは本当に何もできない。
順番が来て、ついにロゼッタとI崎さんが試合馬場に出ていきました。

試合を終えて、試合馬場から控え馬場に出てくるI崎さんとロゼッタ。そこに近寄って、ロゼッタの口を取り、控え馬場の出口に向かいながら、I崎さんにY先生の言葉を伝えました。「Y先生が、おおむね良かったですって」「おおむね、ってことは、何か注意があるんですね」するどい。「速歩と常歩を元気良く、って。それだけ気を付ければ次も大丈夫ですよって」。I崎さんには、午後にもう1試合残っています。

いったん馬とともに馬房に帰り、あわただしく昼食。今日は昨日ほど時間がなかったので、おにぎりは3合しか作れませんでした。でもIさんが買ってきてくれたお弁当や、オーナーの差し入れが増えたので、空いた馬房(もう試合が終わったのでしょう)に座り込んで、食べるものを広げます。「乗馬が優雅なスポーツだって思ってる人に、この姿見せたらがっくりするだろうねー」とみんなで笑い合ったくらい、「独房で差し入れをかっこむ囚人」スタイルでした。
午後の試合は14時前の出番の予定ですが、馬は少し前から動かしておきたいので、12時半からあらためてロゼッタの馬装。K野さんが馬房に入り、馬装をしていたのですが、「怒ってる、コイツ」と言うので見ると、確かに耳を伏せ気味にしています。「何だよ、終わったんじゃなかったのかよーって思ってるんだね」ご老体を働かせて悪いけど、ふたたびみんなで馬場に向かいます。
ロゼッタに騎乗して地下馬道に入るK野さんについて歩いていると、K野さんが「ちょっと足が痛いかなー、って言ってる歩様ですね、これ」と言います。「えっ、そうなの? 」言われて見ても、私にはちっとも分かりません。見て分かるようじゃ、馬体チェックに引っかかってしまうからダメなのですが。もうちょっとだから頑張れ、ロゼッタ。

ふたたび走路で馬を動かすK野さん。しばらくして、走路でI崎さんに乗り替わったのですが、そのときふと時間が気になって、控え馬場を見に行こうかなと思った瞬間、その方向からIさんが急ぎ足で来ました。「時間は? 」と聞くか聞かないうちに、「もう向こう入らないと、あと3頭」しまった、時間がない。Iさんが走路の中のI崎さんに声をかけ、控え馬場に向かいます。
さっきのようにロゼッタについて、控え馬場に入りました。幸い、1頭前と2頭前の間に10分のインターバルがあったので、時間は稼げましたが、Y先生に「3頭は入れるんだから、ちゃんと誰か控え馬場につけといて順番見るようにしないと」と言われてしまいました。これは間違いなく、馬付である私のミスだ。時間も作戦のうちだったはず。
今度の試合は、午前中よりレベルの高いもので、科目のひとつである反対駈歩で悩んでいたI崎さんは、相当緊張している様子。スチュワードの仕事をこなしながらも、ときどきI崎さんにアドバイスを送っていたY先生が、私に「足の薬見えないように、キレイにして」と言います。入厩時にすりむいた傷に、ヨードチンキのような黄色い薬を塗られていたのですが、言われてはっとしました。拍車傷があったって、馬体チェックで失権することがあるのに、こんな目立つものをつけておくべきではなかった。薬とは言えど、出場直前に水で洗い落とすくらいはしておくべきだったんだ。
毛ブラシで傷の周りを払おうとした私に、「タオルで」と再度Y先生の注意。持っていた乾いたタオルで拭いて取ろうとしていると、「濡れたのは持っていないの? 」と聞かれ、「これ1枚しか持ってきてないです」「馬付は、乾いたタオルと濡れたタオルの2枚を持っておきましょう。ま、これも勉強ってことでね、少しずつね」本当に、試合経験の少ない我が倶楽部では、誰も事前にそういうことを知らないから、こういう部分でも勉強して帰らないと。Y先生がスチュワードだから助かったようなものの、そうじゃなかったら失格だわ。

ついに最後の試合に出ていったロゼッタとI崎さん。私は、高校時代の恩師が「マラソンには、自分にしか分からないドラマがある」と言った言葉を思い出していました。きっと今、I崎さんとロゼッタにしか分からないドラマが展開されているのだろう。
この試合に出ると決めてから、ここまでずっとI崎さんを指導してきたY先生が、私の隣で「こっち向きの斜め横足は得意なんですよ、ほらね」とか、「押すな! 押すなっつってんのに! 」と、私は解説付きで試合を観戦することができたので、かなり勉強になりました。

帰ってきたロゼッタとI崎さんを控え馬場で出迎えて、馬の口をとって隣のポニーリンクへ。そのまま地下馬道を通って馬繋場へ向かうと、今度は馬繋場がガラガラだったので、つないで手入れをします。さきに試合の終わったコスモは、すでに馬運車に乗せられているということなので、急いで足を洗って、たてがみをほどくだけにします。たてがみをほどいている間、いつものクセで首を縦にふりはじめるロゼッタ。「うるさい」と叱っても止める気配がないので、つないでいた引き手を短く結び直すと、やりにくくなったらしく首振りを止めました。引き手を馬繋柱に結ぶやりかたを覚えたのも、今回の試合での収穫のひとつだな。

手入れを終えて馬着を着せ、馬運車に乗せます。出発した馬運車を見送り、トイレでキュロットからジーンズに履き替え、ふと鏡を見ると、目の回りにクマが。連日の早起きと、ずっと走り回っていたのとで、かなり疲労がたまっていたようで、家に帰ってから21時にはもう起きていられませんでした。
とにかく、人馬ともにケガもなく、無事に帰ってこられて良かった。

あっちむいてホイ
左がロゼッタ、右がコスモ。
馬房の壁に柵のついた窓があったので、
よく柵ごしに鼻面を付き合わせてお話してました。

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