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(2004.1.11 世田谷・馬事公苑メインアリーナ)
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お知り合いである都馬連理事のYさんのお招き(お情けとも言う)により、都馬連の初乗会に参加することになりました。会場はなんと、馬術のメッカ馬事公苑。会費3000円で、馬事公苑の馬に乗れるまたとない機会だし、お遊びみたいなものだからという話なので、かる〜い気持ちで参加を決定。
10時開会ということなので、馬事公苑内に9時集合。当日は朝から少し風が強く、「初落馬が馬事公苑の馬だったら名誉だよ!」と相方がフザケたことをぬかしやがるのを聞き流しながら、馬事公苑へ。今日一緒なのは、BOSSとAlmo夫妻、Qさんです。この時点でも、自分たちが何の競技に出るのか良くわかっていません(というか、種目そのものが決定していなかったらしい)。たぶん琴平か巻き乗りリレーだということなのですが。一応自分が白組ということだけ分かったので、白組のリボンをもらってつけます。

10時、まず馬事公苑の馬場開きに参加。神主さんを呼んで、メインアリーナに注連縄を張り、きちんと祝詞をあげるようです。神妙に頭をたれながらもチラ見すると、『乗馬ライフ』や『馬術情報』で写真を見るようなJRAの選手や、日本エンデュランス界の第一人者であるM井さんもいらっしゃいます。もしかして自分たち、とんでもないところにきてしまったのかも。
しばらくして、Yさんの息子のまーくんが「琴平のエントリーやるから来てくださいだって」と言うので、腰が引けながらもエントリーへ。仲間同士で一緒の班になっても仕方がないだろうと思って、Almoさんのエントリー後に誰か別の人がエントリーしてくれるのを待っていたら、「じゃあ私」と出てきたのは、件のM井さん。そのあとYさんに促されてエントリーしたら、M井さんと同じ班になってしまいました。いやー、彼女と同じ馬場で乗れるってだけでも光栄です。

琴平というのは、要するに騎馬での椅子取りゲームのようなもの。放射状に設置した障害の中に馬を入れたもの勝ちで、1〜2人ずつ脱落していく方式です。
1班目の私たちは、まず10頭で8個のポジションを競います。馬の準備ができて、1班目の人から馬場に入ることになりました。配馬されるのかと思っていたら、馬は適当に自分で選んでいいらしい。ラチをくぐってメインアリーナに入り、空いている馬を探したら、私は出遅れてしまったらしくて1頭しか選択の余地がありませんでした。
とりあえず空いている馬に近寄って、その馬付をしていた学生さんに「私けっこう初心者なんですけど、これって私でも乗れる馬? 150鞍くらいしか乗ってないんだけど」と聞いてみると、「えっ」と少し言葉を失ったあと、「いや…。これ難しいです、でかいし」うげ。難しい馬なのか。あわてて他の馬に替えてもらえそうか見渡してみたけど、もうみんな準備ができていて替えてもらえそうにない。馬付の彼がさらに言うには、「すっごい固いんですよ、さっき馬事公苑の人に乗り替わってもらったくらいなんですけど、それでも難しかったです」うへぇ〜。馬術部の学生さんなんて毎日馬に乗っている人たちなのに、その子がそこまで言うのなら本当に難しいんだ。
でもここまで来たら仕方ない、とにかく腹を決めて乗るか。ダメだったら常歩で回ってればいいや。

とにかく馬のそばに立ってみると、確かにデカイ。私の身長は150cmですが、馬のき甲の高さが私の頭よりかなり上にある。こいつ、体高170cm近いんじゃないの。
その馬付くんに足上げを頼んで、鞍の上めがけてジャンプ。足上げが上手だったので(やりなれてるんだろうな)ぎりぎりお腹が鞍に乗ったものの、そこからさらに鞍によじ登るような感じで、どうにかこうにか鞍にまたがります。またがった横幅はそんなに大きくないけど、やっぱり高さはずいぶんある。ここから落馬したらやだな〜。
鐙の長さを合わせている間、ハミをとっていてくれた馬付くんに「さっき固いって言ってたでしょ、口が? 反動が?」と聞くと、「う〜ん…両方ですね」うえー。でも口が堅い馬なら、最悪の場合ぎっちり抑え込めばどうにかなるか。「外方かっちり持ってたほうがいいと思います」という彼のアドバイスを受けて、手綱を持ち直して1人で常歩を始めました。

常歩をはじめてみると、意外と重めかも。ただ重いだけならいいんだけど、ちっともまっすぐ歩かない。まず首がまっすぐ向いていなくて、首を内方にぐいっと曲げたまま歩こうとします。内方姿勢とかそんな生やさしいもんじゃなく、首から前に出るような歩き方。おいおい、私まだそんなにハミ固めてないよ。そのまま歩くものだから、当然内方へ内方へ切れ込むような歩き方になってしまうので、外方を少し固めてみたらぴたりと止まりました。拳をゆるめてみても前に出ないので、脚で圧迫しますがそれでも動かない。今日はどんな馬に当たるか分からなかったので拍車をつけていませんが、踵で腹を軽打すると、今度は後ずさりを始めました。おいおいおい。しかも止まらないよ。5歩くらい後退し続けて、またぴたりと止まる。他の馬も動いているので、当然後ろから他馬に追い抜かれますが、すると突然私の馬が耳を伏せて他馬をにらみつけます。追い抜かれるところで、他の馬の後ろにつければ動くかな、と思い、そこで脚で圧迫したら、ようやく速歩が出ました。でも首を曲げたままなので、動かしにくいことこの上ない。どうやったらまっすぐ歩くの? 何が気に入らないの? 脚なのか、拳なのか、何をどうしたらこの子に私の言葉が通じるのか、見当もつきません。

でも琴平の周りを半周もしないうちに、また常歩に落ちます。そこから速歩を出そうとしたら、今度は横に向かってバタついたので、私が鞍の上でバランスを崩してしまいました。他馬がキライなのか、見慣れない琴平(障害自体は見慣れてるはずだが…)がキライなのか、それとも私の言ってることが全然通じないのか。たぶん全部なんだと思うけど、私もこの馬が何をしたいのか全然分からない。落ち着け私、こういうときこそ前傾しやすいから、まずちゃんと座って。
その後も速歩を出そうとすると斜めに走る、外方に出そうとすると他馬を見てバタつく、の繰り返し。2度ほど鞍からお尻が滑って、どうにか踏みこたえて落馬からは免れましたが、もうどうしよう。この馬、私には難しすぎて、もう乗ってられない。競技が始まる前にリタイアしたほうが安全じゃないのか。
そう考えた場所は、大会本部席から一番遠いところだったので、せめて本部席まで行ってからリタイアを申告することにしよう。

そう思って、少し速歩を出して大会本部のほうに向かおうとすると、「それでは練習開始です」というアナウンス。周りが駈歩で回り始めたので、ここで急に常歩するほうが危ないと思い、なし崩しに馬の流れに加わってしまいました。けどこの馬で駈歩を出す気はこれっぽっちもないので、速歩でそのまま回ります。やっぱりまっすぐ走ってくれないけど。
すると馬場の外から、「KYOKOさん、旗の外回らなきゃダメよー」とBOSSの声。外を回せ、と言われたのだと思って「だって馬が内方に入っちゃうのー」と返事をしたあとに、気がつきました。ルール説明のときにちょうど馬装確認をしていたので、そのルールが良く聞こえていなかったんですが、琴平の円の外、3メートルくらい外側に設置された旗の外を周回しなさいというルールのことを言っていたのね。

音楽が止まって、椅子取りゲームと同じですから琴平の空いているポジションに入らなければなりません。どうせリタイアするんだからいいやー、と思っていると、目の前のポジションがぽかっと空いている。あれ、もしかしてそこって入れる? でもさっきから、琴平に近づけるとバタバタ、他馬のそばに行くとバタバタするこの馬、あんなとこに入れられるかなぁ。ほんとに私そこに入っていいのか、と周りを窺うと、琴平の外のすこし離れた位置にいたM井さんが、私にむかってにっこりしました。これは私に譲ってくれようとしているのだと勝手に解釈し、お礼を言ってその空き場所に向かいます。あら、意外にも素直に入るわ。琴平の中に入れて、首をたたいて馴致。けっこう落ち着いてるじゃないの。これなら1回くらいいけるか?
「じゃあ手前換えましょう。次は本番です」のアナウンスとともに音楽が始まり、今度は右手前。どうにかいけるかな、と思ったのが大間違いで、やっぱりまっすぐ動かないし、一度常歩に落ちるとなかなか速歩が出ず、後ずさり。その後ずさりをされている間に音楽が止まり、琴平に向かうことすらできずに脱落しました。

とりあえずリタイアじゃないだけマシだろー、と自分をなぐさめつつ、さてこの馬どうしよう、できることなら早く下りたい。馬場の隅っこに行って下馬しようと、大会本部側の馬場の隅に馬を向かわせようとしたら、また横向きにバタつかれます。今度のはけっこう大きかったので、マジで落馬を覚悟しましたが、馬が大きいので逆に脚でしがみついていることができて、落馬は免れました。
そこへラチを越えてBOSSが飛んできて、ハミをとってくれました。「下馬したいんだけど」と言うと、「ちょっと待って」とBOSSが周りを見渡していると、学生さんもこっちに来ました。彼はさっきの馬付くんではなかったようですが、とりあえず彼に馬を託すことにして下馬。いやいやいや、難しい馬だった。これは私レベルの馬じゃないんだろうな。馬事公苑の馬なんだから、ふだん乗っている人は上手い人ばっかりなんだろうし。
その後の競技を見ていたら、学生チームでもその馬に膠着や後ずさりをされていたので、毎日馬に乗っている学生さんでもああなんだから、自分に動かせる馬なわけがない、と自分に言い聞かせることにしました。

そのあとは、都馬連のほうで用意してくれたお雑煮をいただいて、初乗会はお開き。
馬が全く動かせなかったことでちょっとヘコんだけど、これもいい経験だと思うことにしました。もし来年もお招きいただけて、あの馬に乗ることができたら、もう少し動かせる自分になっていたいと思います。馬の名前が分からなかったのが残念だけど。

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