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北海道旅行2鞍目・君に会いたかったんだよ!
(2003.9.6 北海道・にいかっぷホロシリ乗馬クラブ)
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シゲルホームラン
シゲルホームラン。JRA賞最優秀アラブの受賞馬
北海道旅行の2日目、午前中は日高ケンタッキーファームで1時間外乗してから、競走馬見学へ。1個所行ってから、またすぐ外乗する予定なので、もう今日は1日キュロットのままで行動することにしました(ほとんどヤケ)。

さて12時半ごろ、にいかっぷホロシリ乗馬クラブに到着。競技会ができそうな障害馬場や覆い馬場など、思っていたより新しくてキレイな施設にびっくり。あとで聞くと、まだ出来て10年くらいなのだそうです。予約は13時からだし、準備もあらかじめできているので、ひまつぶしに馬房を見学させてもらいました。
いたいた、シゲルホームラン。アングロアラブの名馬です。中央競馬でまだアラブが走れたころ、彼はセイユウ記念という重賞を3連覇したのですが、直後に中央競馬からアラブは締め出されてしまいました。私はそのころ競馬をやっていなかったし、アラブのレースは再放映もないので彼の走る姿を見てはいないのですが、そんな経緯を聞きかじっていたので、機会があれば会ってみたい馬の1頭だったのです。ホロシリさんのホームページには、ここにいると書いてあったので、それも楽しみにして来たのでした。
シゲルくんは栗毛の小さな馬で、最初は飼い桶をかじって軽くぐいっぽをしている様子でしたが、呼ぶとこっちを向いて、黙ってなでさせてくれるおとなしい子でした。
その隣の馬房にはトラックブレーヴというダンシングブレーヴの子、また隣の厩舎にはライブリマウントやドージマファイターなど、けっこう有名な元競走馬がいましたが、みんなおとなしく触らせてくれました。

時間が来て、馬繋場に呼ばれました。同じ時間に3組の外乗客がいて、それぞれ違うコースに出ます。私たちは林間Bコースという、駈歩ありの50分コースです。あ、鞍がブリティッシュだ。「一番最後に馬決めますから、ちょっと待っててくださいね」と言われ、他の班の配馬が終わるのを待っていると、責任者らしい男性が他のスタッフに「あと誰? シゲぶーと」と言っています。シゲぶーって、まさかシゲルホームランのことかな。まさか私にシゲルくんが配馬されるとか、そんなことあったらネタみたいだなぁ。「じゃ女性のかた、こっちの小さい馬。シゲルホームランです」…はい? ほんとですか!?
足上げしてもらって騎乗しながら、嬉しさのあまり「私この子に会いたくて来ました」と言うと、「ほんと?」そんな有名馬じゃないよ、と言いたげなスタッフさんに、相方のほうがその理由を説明していました。

「こいつ重いから」と、私はムチを持たされました。相方はトラックブレーヴに乗り、先導馬、相方、私の順に外乗に出ることになりました。
馬繋場から馬場の横を抜けて外へ出ますが、馬場へ下りるコンクリートの坂はけっこう急坂。シゲルくんにとっては、これが第一の難関だったのです。おそるおそる踏み出しては、その足が滑らないことを確かめてから次の足を出す、という具合。下りやすいように、私は思い切り腰を張って上体を後ろに倒し、馬が頼れるようにしっかりハミを持ってあげているのですが、前の2頭にどんどん置いていかれてしまう。シゲルくん、ちゃんとハミ持っててあげるから、もっと私を信用してよ。
まだ坂を半分も下りないうちに、前の2頭は下りきってしまったので、「ちょっと待っててもらっていいですかー」と声をかけて止まってもらい、ようやく5メートルくらいの坂を下りきりました。「お待たせしましたー」「気にしなくていいですよ、そいつただマイペースなだけですから」
馬場の横を抜け、林に入るところはまた下り坂。さっきのほど急坂ではないけど、やっぱり慎重なシゲルくん。それだけ安全な馬とも言えるか。

林の中を常歩で歩いていると、シゲルくんの体が小さいのと、下り坂の慎重な歩様のおかげですぐ前の馬から離されてしまいます。外乗で前の馬を見失うほど危険なことはないので、平坦なところを選んで速歩を出すことにしました。あれ、ムチなしでも出るじゃん。しかも座りやすいし。坂を降るときには絶対に自分のペースを崩さないシゲルくんですが、平坦なところや上り坂ではとても素直で扱いやすい馬。小ぶりの坂を上り下りするコースが続きますが、下りだけはシゲルくんのペースに合わせてあげて、それ以外は私に合わせてもらうことに決めました。シゲルくんもそのルールをすぐ理解してくれたみたいで、下り坂は絶対に慎重な常歩だけど、上り坂では軽い扶助で速歩が出るようになってきました。かしこいな。

日高ケンタッキーファームほどではありませんが、台風10号の影響で道の半分がずぶずぶになっていたり、折れた木が倒れていたりします。シゲルくんは速歩での横木通過は大丈夫かな、こんな狭い道で飛越されても困るし、つまづかれてもイヤなんだけど。私の心配をよそに、しっかり足元を見て横木をまたぐシゲルくん。こりゃかえって安全だわ。
視界がひらけて、木々の向こうに海岸が見下ろせました。「昆布干してますねー、このへんの特産なんですよ」ああ、日高昆布ね!
そこを過ぎると、海岸には木材のようなものがたくさん打ち上げられていて、海の色も前に来たときにはもっと青かったと思うんだけど、沿岸は泥の色に濁っています。これも台風の影響かしら。
道のまっ正面から、猫が歩いてきました。いやーん、こんなところで馬がびっくりしたら困るわ。猫のほうが草むらに入っていきましたが、突然走り出したりしたら馬が気にすると思うので、手綱を強めに持って歩かせます。でも猫は走り出さなかったし、シゲルくんも気にしていないようでした。

「じゃあ速歩から駈歩いきましょうか」目の前はゆるやかな上り坂で、これなら駈歩に問題はなさそう。速歩から、先頭の馬が駈歩になり、つづく相方の馬も駈歩になりましたが、シゲルくんはまだ速歩。わー、シゲルくんったら駈歩の出にくい馬だったか。このまま置いていかれてはかえって危険なので、どうにかして駈歩を出さなくては。と、目の前にゆるいカーブが迫ってきました。よっしゃ、隅角だ。ふだんの馬場で駈歩が出にくいときは隅角から出しているように、あそこで駈歩の正しい扶助をしてやれば出るはず。とっさにそう考え、カーブのところで外方脚を引くと、簡単に駈歩が出ました。
駈歩になってみると、シゲルくん座りやすいじゃないの。何より、駈歩の3拍の動きに合わせて1拍目は前屈み、3拍目は腰を張って上体を倒すという、いわゆる「シーソーのような」一連の動きがとてもスムーズにできる。午前中はなぜだか鞍から腰が浮いてしまい、ぜんぜん駈歩の動きについていけなかったのだけど、今度はちゃんとついていけている感じ。相方とあとから話したことですが、この駈歩の楽さはやはり「鞍の差じゃないか?」。午前中はウェスタン鞍だったから乗りにくく、ホロシリではブリティッシュ鞍だったから乗りやすかったのではないかと。ウェスタンの鞍にはウェスタンの乗り方、ブリティッシュの鞍にはブリティッシュの乗り方というのがあるはずなのですが、すっかりブリティッシュで体が慣れてしまっている私たちには、ウェスタン鞍に合わせることができなかったんですね。

林の中の駈歩はスピード感があります。実際は馬場での駈歩と変わらないのかもしれないけど、景色が流れていくからどうしてもそう感じてしまう。午前中の駈歩がちょっと怖かったので、駈歩をしながら外方の指をサドルホルダーに引っ掛けておきます。するとシゲルくん、外方を向いたまま駈歩。そんなにきっちり固めたつもりはないんだけど、そうか、片方持つと走りにくいんだね、分かった分かった。出来る限りサドルホルダーは持たないことにして、カーブがきついとかでどうしてもヤバイな、と思ったときは両手で持つことにしました。
常歩に落とすと、先導の人が「大丈夫ですか?」とにこにこしながら振りかえっています。「あんまり離れちゃうと馬が追いつこうとしてスピード出すんで、できるだけくっついててくださいね。その前の馬(トラックブレーヴのこと)、お尻にぴったりくっついても絶対蹴らないですから」彼はなかなか感じのよい人。常歩で歩きながら、「今、馬の壁画の上くらいまで来てますよ」。えっ、そんな遠くまで来てるの。新冠観光名所の馬の壁画って、ホロシリ乗馬クラブから車で5分くらい行ったところだったと思うんだけど。
下り坂は常歩、上りや平坦コースは速歩を混ぜながら進むと、「鹿がいますね」と先導の人。「えっ、どこ?」林の中を透かして見ると、栗毛に白い斑点のある背中が見えました。「子供だぁ」バンビみたいな斑点のある小鹿でした。冬毛に生え変わると、斑点はなくなるのだそうです。

「速歩から駈歩いきますよ、大丈夫ですか?」「はい」前の馬が駈歩になったところで扶助を出すと、今度はすぐに駈歩が出ました。軽い上り坂では、前傾気味に駈歩。すると目前に、下り坂があらわれました。そんなに急勾配ではないけど、今まで必ず下り坂では慎重な常歩になっていたシゲルくん、駈歩のまま坂が下れるのかい? でもここで速歩に落とすほうが危険なような気もするし、えぇい行ってしまえ。脚をちゃんと使い、いつもよりもさらに上体を後ろに倒して下り坂へ。…ってシゲルくん、駈歩で坂が下れるんじゃん! 今までの嫌がりっぷりは何だったのさ、あんた。
けっこう長く駈歩で走り、常歩へ落とします。だいぶクラブの近くへ戻ってきました。
また道が良くないところを通るので、常歩で。さっきの勢いはどこへやら、やっぱり下り坂では慎重なシゲルくんです。はいはい、もう好きにして。下りやすいように腰を張って上体を倒し、ちゃんとハミをもって歩かせていると、なんかいい首の形になってるなぁ、シゲルくん。首の根元は盛り上がって、頭が下がってる。たぶんこの子はものすごく足元を見る馬で、今も足元を一生懸命見ながら下っているものだから、ナチュラルに屈撓しちゃってるのね。おもしろい、この馬。馬場でも乗ってみたい。

ついにクラブの敷地内へ帰ってきました。馬場の横を通って、最初に下った急坂を上り、馬繋場へ。そこで外乗は終了となりましたが、スタッフさんが「僕撮りましょうか」とカメラを預かってくれたので、下馬せずにそのまま馬を並べました。横に並ぶと、ブレーヴくんにちょっかいを出そうとして、歯をむかれているシゲルくん。でもまた懲りずにやってる。おとなしい馬かと思ったら、意外とやんちゃな一面もあるのでした。
下馬して馬を馬繋場に繋ぎますが、ここでびっくりしたのは、このクラブってハミに直接引き手を繋いじゃうんです。うちの倶楽部のI野先生なんかは、馬が暴れたときに口を切っちゃうから、ハミに引き手を繋ぐのは絶対ダメだとつねづねおっしゃってるのですが。好意的に考えれば、ここの馬がよっぽどおとなしくて暴れないから、ハミに繋いでも大丈夫ってことなのかもしれないけど。
ブレーヴくんはすぐ次のお仕事で馬場へ行ってしまい、シゲルくんひとりで馬繋場に繋がれていました。すごくいい子だったので名残惜しいけど、その姿を見ながらホロシリ乗馬クラブを出ました。
50分コースでもかなり堪能したし、駈歩も楽しかったので、また行きたいところのひとつになりました。

新冠の馬の壁画
これが新冠の名所のひとつ、馬の壁画。
この上を通ったわけですね



シゲルホームラン
前を歩いている相方が、振り返って撮ったもの。
坂を下っているところですが、びみょーに屈撓してない?



シゲルホームランとトラックブレーヴ
左がシゲルくん、右がトラックブレーヴ。
さすがダンシングブレーヴの仔、胸前がムキムキですよね



シゲルホームラン
馬繋場にひとりでつながれているシゲルくん、ばいばい。
また会おうね

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