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(2003.9.5 北海道・日高ケンタッキーファーム)
北海道旅行
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メアリーちゃん
この日のお相手、メアリーちゃん。
4歳牝馬なのに、このおとなしさは一体何?
相方とふたりで北海道旅行に来ています。2泊3日で、外乗と競走馬見学を堪能する予定です。千歳空港からレンタカーを借り、1日目は競走馬見学して、日高ケンタッキーファームに宿泊。チェックイン後、乗馬受付で「おととし来たときには朝の飼付けのお手伝いさせてもらったんですけど、今もできますか?」と聞いてみると、「どうぞどうぞ、助かります。馬は乗ったことありますか?」「はい、明日も予約してます」「じゃあ大丈夫ですね。今は何時くらいかなぁ、6時半くらいに来てくれれば大丈夫ですから」。ついでに、今年亡くなったスダホークのお墓があるかどうか聞いてみると、「検討中なんですけどね」ということでした。
厩舎の中も自由に見学していいので、中を見回ってみると、いたいた、ロングハヤブサ。おととし騎乗した馬で、当時でも20歳(昨年亡くなった日の出の馬、トリコロールより1つ上)と聞いていたので、今も元気でやっているかどうか不安だったのですが、元気そうでした。良かった良かった。

ということで2日目の朝、6時半に厩舎へ。昨日受付にいたIさんが、すでにバケツに作っておいてある朝飼いを各馬房の前に配っていて、馬はみな前掻きを始めています。「とりあえずそれ、それぞれの馬房の中にそのバケツの中身あげてください」。ここの馬房は、扉とは別に飼いつけ用の小窓があり、その中に置いてある飼い桶の中にバケツの中身をぶちまけるようになっています。でもたまーに飼い桶を馬房の奥に落っことしている子なんかもいて、ここが日の出だったら馬房の中に踏み込むところだけど、知らない馬は怖いので中には入らず、代わりにバケツごと置いておくことに。その作業が済んで、思わず厩舎の掃除なんかをしていたら再びIさんがやってきて「あっ、すみません! それより、もし良かったら明日の朝飼いとか作ってみます?」というので、明日の朝飼いをバケツに作っておく作業をやらせてもらいました。圧ペンエン麦、乾燥大豆、干し草、ヘイキューブ、塩、カルシウムなどをバケツに計って入れていきます。この子たちは1日2食とは言え、ずいぶんいいものもらってるなぁ。その間にIさんは、馬たちに水をつけています。ここはホースがないらしく、バケツで水を運んでは馬房の水桶にぶちまける、その作業こそ大変だろうに、というのは後で思ったんですけどね。
大体の作業を終わって7時まえ、Iさんが「ありがとうございました。いつもは僕ひとりでやってるんで1時間以上かかるんですけど、今日は助かりました」いえいえ、優に20頭はいる馬の飼いつけ、1人でやってるっていうほうが驚異的ですって。「今日の予約は9時からですよね? 準備ができるなら少し早めに来てもらえたら、早めに出発できますよ」「あ、早い分にはそのほうがいいです」あとの予定も控えているし。「外乗は最長どれくらいしたことあります?」「2時間くらいかなぁ」去年サンシャインに行ったとき、不測の事態で時間をくったので結果的にそうなったのだけど。「鞍はどうします?」と聞かれて「普段ブリティッシュで乗ってるんですけど」と答えると、「長い時間乗るには、ウェスタンのほうをお勧めしたいですね」まぁ、今までも外乗のときは全部ウェスタン(か、ウェスタンとブリティッシュの混合)だったので、それではウェスタンで乗せてもらうことにしました。

ということで7時からバイキング朝食、宿泊をチェックアウトして、8時45分ごろに厩舎に行きました。さっきのIさんの他に数人のスタッフさんがいて、責任者らしいおじさんが1人。彼が「俺行こうか?」と行っているので、そのおじさんが先導についてくれるらしい。
やがて引き出されてきた小さめの馬、たぶんあれが私の乗る馬だろうな。案の定「女性のかた、こっち乗りましょうか」と、その馬が踏み台のところまで連れてこられました。鹿毛なのかなぁ、ちょっとあせたような毛色だけど。乗ってみると、馬が小柄なので脚の位置が落ち着きやすいかも。「この子、鞭いるんで」と短鞭を手渡されました。重めの子なのかな、まぁそのほうが安心だけど。「この子は何くんですか?」「メアリーちゃんです、4歳の女の子」「えっ!? 女の子でそんな若いのに鞭いるんですか?」私の中では、若馬および牝馬というのはピリピリおどおどしているイメージがあって、ふだん乗っていないから余計によく分からない。ムチなんか入れたらどっかぶっとんじゃうんじゃないの、と思いましたが「ムチがいるってことはそれだけ安全な馬ってことでしょ」と相方に言われ、それもそうだな、と思うことにしました。

とりあえず騎乗して馬場内に誘導され、「ちょっと馬場の中で動かしててください。速歩も駈歩もやっちゃっていいんで」人も馬もあったまってないうちに駈歩やるのはちょっと本意ではないなぁ、速歩までにしとくか。「それ女の子なんで、後ろだけ気をつけてくださいね」おおむね牝馬は、お尻に近寄られるのを嫌って蹴ったりするのが普通みたいだから、そりゃ気をつけますとも。できるだけ相方の馬の後ろにくっついて、蹄跡を回ります。
動かし始めると、あれ、別にムチいらないじゃん。わがままもしないし、速歩への移行もスムーズだし。ちょっと隅角を深く回すのだけ難しめで、横方向への扶助にニブいかもだけど、ひたすら先導馬にくっついてればいいのが外乗だから問題ないだろう。

速歩で4〜5周もしたころ、「じゃあ外に出ましょう」と、馬場の外へ誘導され、先導馬、相方、私の順で出発。メアリーちゃんはちょっと小柄なせいか置いていかれがちになるので、ときどき速歩を出して追いつきます。 出発するなりタバコに火をつける先導の人。ありなのかい、それは。常歩で敷地内から出て、隣の白井牧場の横を抜けると、放牧されていた馬たちが寄ってきて、さくごしにこっちを見ています。どうみてもみんな1歳で、牝馬のよう。「メアリーちゃん、あんたとそんなに変わらないよ」と言っても、彼女は全然興味ありませーん、と見向きもしませんでした。
平坦なところで少し速歩を出していきますが、ウェスタン鞍イタイわ…。特別反動の高い馬でもないので座れないわけじゃないけど、ブリティッシュに比べて鞍が堅いから、座っていると座骨付近が痛くなってくる。とりあえず軽速歩にして、お尻を逃がしてあげることにします。
草むらに入ると、メアリーちゃんがぐいーっと首を下げました。拳を持って行かれ、つれて鞍の前橋のホーンに軽く腹をぶつけてしまう。道草を食べたいんだろうけど、そうはさせませんよーだ。体を起こして拳を引くとちょっと首を上げましたが、また下げようとする。「負けちゃダメだよー」負けませんとも、こちとら首を下げる馬には慣れているのだ。
そうだ、こういう時こそムチ。今まで使わなかった短鞭を肩に入れると、食べるのをやめて歩き出しました。

速歩と常歩を織り交ぜながら、どんどん林の中へ踏み込んでいきます。この8月に北海道を直撃した台風10号の影響だということですが、道がずいぶん壊れている。もともとけもの道のような、幅1メートルもない道なのですが、その道の半分が削り取られたようにがぼっとへこんでいたり、たぶんちょっと踏み込んだらくずれるんだろうな、という感じに土がゆるんでいたり。怖いので、できるだけ先導馬が通ったとおりに歩いていくことにします。メアリーちゃんはその崩れたところを避けたいのか、道のわきの草むらの中を歩こうとします。これ、あんまりそっちに行くのも危ないのよ。
すこし道のしっかりした所へ出て、速歩。坂では軽速歩をとるのが辛いし、随伴する必要もあると思うので正反動をとっていきます。わりと見通しの良い登り坂に来たとき、「じゃあこのへんから、速歩から駈歩いくよ」と言われ、速歩。外乗の場合、だいたいは前の馬が駈歩になれば続いて駈歩になるものだから、特に「ちゃんとした駈歩の扶助」というのは気にしないでついていくと、前の馬が駈歩になりました。まだメアリーちゃんは駈歩にならない、しまった、この子駈歩出にくいのかも。このまま前の馬から引き離されてしまってはサンシャインでの大暴走の二の舞になるから、どうにかして駈歩出さなくちゃ。外方脚を引くとかなんとか、でもこの道じゃどっちが内方でどっちが外方なんだか分かんないよう。とにかく馬に後肢で踏み込ませることだ、と思って脚で腹を持ち上げるようにして強めに使ったら、ようやく駈歩が出ました。
出たのはいいけど、ぜんぜん座れないよ、この駈歩。こんなに反動が高いともう、いつ鞍から投げ出されてもおかしくないぞ。どうしてもサンシャインで暴走されたことや、日の出の先輩Nさんが外乗で人馬転して骨折したことやなんかを思い出してしまう私。ちょっと怖くなって、前橋のホーンをつかもうとしましたが、手綱持ったままホーンを持つのって、どうやっていいのか分からない。仕方ないのでホーンの根元あたりの鞍に指をかけることにしましたが、持ちにくい上に、親指の根元をがんがんホーンにぶつけてしまって、痛いったらない。
前の馬が速歩になったので、私の馬も自動的に速歩に落ちて、少しホッとしました。やばいなぁ、馬場ではだいぶ克服したと思ってたけど、外乗での駈歩ってトラウマになってるかもしんない。

「大丈夫?」と先導の人に言われて、大丈夫ですとは言える感じじゃなく、「まぁ、なんとか。思ったより反動高かったんで」「そう? じゃ、反動高いと思わないでください」無茶言うなー。「まぁ、坂だと反動が変わるからね」そうか、馬だって坂を登るときは、平坦なところよりも高脚つかったりするんだろうな。「常歩で行く、速歩でいく?」と聞かれましたが、悩んだ挙げ句にしばらく常歩で行ってもらうことにしました。ちょっとは風景を楽しむとか、そういう気持ちの余裕がないと楽しくないし、体もすっごく固くなってる。いつの間にか肩が前に入ってるし。
しかも速歩をしていて、横っ腹が痛くなってきた。ゴハン食べてすぐ動いたら横っ腹が痛む、あれです。でも朝ゴハン食べてから2時間ちかく経ってるんだけどな。「横っ腹がいたいー」と相方に言ったつもりが、先導の人にも聞こえちゃったみたいで「大丈夫?」「あ、ゴハンの食べ過ぎだと思いますから」「ダメだねぇ、馬に乗るときはちゃんと早起きして、早めにメシ食べないと」「…いや、早起きして朝イチでゴハン食べたんですけどねぇ。ただの食べ過ぎです」
しばらく常歩でいくうちに治まってきたので、ふたたび速歩で進みます。

折り返し地点をすぎて、「途中省略したけど」というのは、私が常歩を選んだから時間がなくなったってことなんだろうな。行けるところは速歩で、またちょっと駈歩も入れて。さっきほどじゃないけど、やっぱり体に力が入っちゃうし、座りにくい。
速歩に落として進んでいると、メアリーちゃんが首を横に振るようになりました。最初は虫でもいるのかと思いましたが、それにしては全然やめる気配がない。もしかしてすこし譲って欲しいのかな? ほんの1センチだけ手綱を譲ってみると、やっぱりそうだったみたい。私としてはこの手綱は緩いほうだが、外乗用の馬ってこんなもんなのかもしれないな。昨日、スタッフさんが乗ってるの見てても手綱緩かったし。
最初に通った白井牧場の横へ帰ってきました。馬たちがまた寄ってくるけど、やっぱり興味のないメアリーちゃんです。もうこのへんからは、人がいたりするだろうからずっと常歩。いいかげん座骨が痛くて辛くなってきたので、立ち乗りして進みます。ウェスタン鞍だと、立ち乗りするのは楽なんだよね。

敷地内を常歩で、出発点まで帰ってきました。馬場の前にある、井戸の形をした水飲み場で水を飲ませますが、出迎えたスタッフさんに「メアリーちゃんは女の子だから、一緒じゃないほうがいいです」と言われ、下馬してから飲ませることに。下馬するのに、馬の口をとられて踏み台のところまで連れていかれたはいいものの、踏み台があると却って降りにくそう。「すいません、踏み台ないほうが降りやすいかも」と言うと、「じゃあちょっと前に行って降りましょう」と、踏み台より前に馬を進めてから下馬。っとと、またごうとした右足が後橋に引っかかっちゃった。ブリティッシュ鞍と同じつもりで下馬しようとしたら、思ったより後橋がごつくて高かったのでした。
下馬したあと、メアリーちゃんと写真を撮らせてもらいましたが、そのあと彼女はすぐ引き馬に出ることになったようです。子供を乗せて引き馬しているメアリーちゃんを見ていると、「あの子おとなしいでしょ?」と、さっきの先導のおじさん。「そうですねぇ、4歳の女の子とは思えなかったです」「年じゃないからねぇ、そういうのは。あいつちょっと頭弱いのかな(笑)」

騎乗料を払い、その格好のまま日高ケンタッキーファームを後にしました。競走馬見学のあとは、ハシゴで外乗だー。(2鞍目につづく)

メアリーちゃんと私

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