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(2001.9.7 北海道・日高ケンタッキーファーム)
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この日の騎乗馬、ロングハヤブサ。
昭和61年スプリンターズSの2着(僅差)です
ロングハヤブサ
10分の休憩の後、雪翔とロングが厩舎横に引き出されてきました。
「では騎乗しましょうか。外乗はやったことありますか?」
「まったくやったことないんです」
「じゃあ注意事項だけ説明しますね。外乗は先導馬がつきますが、先導馬を追い越さないでください。あと、併走もしないでくださいね」
もう一頭、ウエスタン鞍をつけた馬が引き出されていて、その馬にさっきの指導員のお姉さんが騎乗します。私たちの馬はブリティッシュ鞍のままでしたが、その方が乗り慣れているので良かった。
それにしても、ロングは元JRA競走馬なので、もちろんサラブレッドです。一般にサラブレッドは繊細すぎて外乗に向かないと言われているのですが、この子は大丈夫なんでしょうかねぇ。

先導馬について、30分の外乗コースに出ます。
外乗と行っても本当にファームの外に出るわけではなく、ファームの中に外乗コースが設定されているわけですが、ファームはだだっ広いのでけっこう起伏があります。
指導員さんから「速歩出していきますか?」と聞かれ、
「今まで馬場でしか走ったことがないので、馬でアップダウンするの初めてなんですよ。平坦なところなら走っても大丈夫だと思いますけど」
「あんまり平坦なところないんですけどね(笑)、じゃあ常歩多めで行きましょう」

まずは園内の舗装されていない道をぽくぽくと常歩。
コースは違えてありますが、馬車コースと近いので、馬車の人がみんなこっち見てる。うわー。
人の多いあたりを抜け、草原のようなところに出ます。こういうところなら走ってもいいんだけど、と思いましたが、常歩のまま草原を横切り、木立の中に入ります。
もちろん園内ですから、きれいに整備された木立ですが、白樺の間を馬で縫って歩く…うーん、北海道だ。

道はけっこう石がごろごろしていて、常歩で揺られていてもけっこう反動があります。ときどき馬がつまづくし。
途中、ちょっとした坂を下ります。
「馬で坂を下るときには、体を起こして、後ろにそらせて下さい。逆に坂をのぼるときは、体を前傾にして」
つまるところ、上体はつねに地面に対して直角であらねばならない、ということかしら。
なにしろ起伏のあるところを歩くのは初めての体験。馬場よりも、馬の上で体をやわらかくすることが大事なように思える。

「じゃあ少し軽速歩出してみましょうか。木の間通りますけど、馬が勝手によけますから木にぶつかることはないので、心配しないで走ってください」
そう言われても木々の間を走るのはやっぱりちょっと怖そうなので、走りたがりのロングのスピードを抑えることを第一にして軽速歩を出します。
走ってみると、これが実に気持ちいいものです。別に怖くなかったし。

あまり続けて走ることはせず、常歩を入れながら進みます。ファームをひとまわりし、スタート地点に近い草原まで戻ってきました。ここはファームの外れで、隣はもうよその競走馬牧場です。
「ここで一休みしましょう。手綱をゆるめて、草を食べさせてやって下さい」
馬に乗ったまま手綱をゆるめてやると、ロングは足下の青草を一生懸命食べ始めました。
「すごく一生懸命食べてますけど(笑)」
「ふだん青草食べられないのでね、この子達は」
乗馬の馬はあまり放牧されたりしないんでしょうね。干し草やグラスキューブはもらっていますが、生の草食べたいよねぇ。
柵の向こうの牧場には10頭ばかりの馬が放牧されていましたが、少しこっちに寄ってきました。
「牝馬ばっかりだと思いますけど。デビュー前の競走馬ですよ、たぶん」
とねっ子はいないようなので、ほとんどが2歳の牝馬だということです。その子たちを見ようと思って、ロングをそっちに寄せようとしたのですが、ロングはぴちぴちのギャルよりも足下の草の方に気をとられて、動こうとしない。
「女の子より青草のほうがいいんですって(笑)」
「花より団子のクチですね(笑)。ロング、けっこう年ですし」
「いくつですか?」
「20歳くらいですね」
子供なんか相手にしてらんねーってか。

時間も終わりに近づいたので、厩舎のほうに戻ります。
青草に未練たっぷりなロングをなんとか草原から出すと、その前に高さ3メートルくらいの斜面がありました。人間が上るにも思わず手をついて四つ足になってしまうような急坂です。

「ここ上っていきますが、体前傾にして、ちょっと鞍からお尻浮かせてください。行きますよ」
常歩で先導馬について行くと、先導馬がちょっと勢いをつけて坂を上るのについて、ロングが自分で勢いをつけて坂を駆け上りました。ほとんどジョッキーのような格好で、自然と鞍からお尻を浮かせて体を馬の首の上に倒し、しがみつくだけの私。あれ、今のって駈歩じゃなかった?
障碍を飛ぶときって、もしかしてこんな感じなのかもしれません。ちょっとどきどき。

厩舎そばに戻り、下馬。
「11時からもう1鞍入れてるんですけど」もう一回、30分の外乗をオプションで申し込んであります。
「そうでしたね。どうします?馬場がいいですか、外乗がいいですか」
「できれば外乗がいいです」そのために来てるのだ。
「じゃあ11時まで休憩して、また時間にここに来てください」

時間まで30分くらい、厩舎や蹄洗場の馬と遊んで過ごしました。
馬にあげるニンジンを100円で売っていて、それを買った高校生や子供が「こわーい」と言いながら馬にニンジンをおそるおそる突きだし、馬の口がとどかなくて落としたりしてる。馬って怖いのかなぁ。ニンジンをくれる人を噛んだりしないけど、普通そんなことは知らないものなのね。かえって新鮮でした。
合宿らしい女子高生たちがものすごい超音波ボイスを発していたのですが、ここの馬はそれくらいでは驚かないように訓練されているらしい。でも、観光地の馬ってちょっとかわいそうみたい。

11時になるとまた厩舎横に雪翔、ロングハヤブサと先導馬の3頭が引き出されます。
ぽつりぽつりと雨が落ち始めました。「降って来ちゃいましたね」と指導員のお姉さんは心配そうでしたが、本降りになりそうでもなかったので「馬に乗るには別に、これくらいは大丈夫でしょう」 と乗ってしまう。
最初の外乗がけっこう大丈夫そうだったので、「今度は速歩多めでいいです」と申告。
出だしは同じですが、前回とはちょっとだけ違うコースに出ます。

しかし今度のコースが特に難易度が高いということはなく、適度に常歩と速歩を織り交ぜながら進みます。
ときどき指導員さんが振り返って「大丈夫ですか?」と聞いてくれるのですが、慣れたせいかとてもリラックスして外乗を楽しめました。もうちょっと走ってもいいのにな、と物足りなく思うくらい。
でも普段の馬場レッスンでは、頭の中でいろいろ考えながら乗ってしまっているので、これくらい何も考えないで乗れることもめったにない体験。
今回は途中で青草を食べさせるなどの休憩はなく(時間合わせだったのかもしれないな)、時間通りに厩舎へ戻り、日高ケンタッキーファームでの乗馬は終わり。

日高ケンタッキーファームは、馬のテーマパークという感じですが、馬を見ているだけの人々は実にもったいないことをしてるなぁ、と気の毒に思います。馬に乗れると、数倍楽しめる場所です。乗れないまでも、触るだけでも。
特に気軽に外乗をしたい人には、かなりお勧めできる場所でしたよ。



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