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(2002.6.8 山梨・紅葉台木曽馬牧場)
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リキ、黒鹿毛かと思っていたら芦毛でした
今日はネット友達のIronさんのお誘いで、ネット乗馬サークルのオフ会に参加させてもらいました。
参加人数は私と相方を含めて11名。Ironさんの車で拾ってもらい、他1名を加えて4人で待ち合わせ場所の道の駅「なるさわ」へ向かいます。なるさわで2名合流し、昼食を摂ってから紅葉台木曽馬牧場へ。
中央道の渋滞のため、予約時間に集まったのは7名。もともと2班に分かれて外乗に出る予定だったため、7名だけ先発することになりました。
「この中で一番経験が少ないのは?」という指導員さんの問いに、もちろん私が立候補。みなさんは普段から駈歩当たり前のようなのですが、私はまだ駈歩経験って3回しかないんですから。
「じゃあリキで」各自に馬が割り当てられ、馬装された各馬が馬繋場から引かれてきます。「リキの人はー?」「私でーす」連れてこられたリキ、木曽馬だから当たり前だけど小さい。体高が130センチ前後。馬が小さいので当然踏み台などは出てこず、地面から左足を鐙にかけてジャンプし、騎乗。鞍がウェスタンということもあるけど、体高のわりには体に幅があって、またがった感じにとても安定感があります。
「鐙もう1穴短くしましょう」あれ、ちょうどいいなと思ってたのに。「ちょっと短めでいいです。立ち上がるくらいで乗って下さい」障害の時と同じくらいの鐙の短さです。確かに立ち上がるのは楽。
鞍はウェスタンですが、ウェスタンの乗り方はしないようです。ハミもブリティッシュらしいので、ちゃんと引っ張っていいのね。

馬場に出て、馬を少し動かします。常歩はとことこ歩いてくれるけど、リキは重め。1歩ごとに軽打しているのですが、速歩をなかなか出してくれません。他の馬に抜かれたときに後ろにつけると、つられて何とか速歩が出ました。
いきなり駈歩で走り込んでくるIronさん、さすがかっこいいやー、と思っていたら「止まらないんだよー」だって。常連なので、かなり軽い馬に当たったようです。
しばらく馬を動かしていると、指導員さんが馬に乗って出てきました。「じゃあ順番決めましょう。1番目はリキ」先導馬のそばに行こうとしますが、リキは馬群から抜けるのがイヤなのか動いてくれません。どうにか動かして1番騎へ。後ろは相方が乗っているへーちゃん(額に「へ」の字型の星があるからへーちゃん。かわいい)。この2頭は重い馬のようです。

先導馬について牧場を出て、常歩でアスファルトを抜け、舗装のない坂道へ入ります。常歩で坂道を上りきったところに、ジャージ姿の中学生が大勢いて、馬を見て「うぉー」と歓声を上げます。サラじゃないからいいけど、あんまり大声出さないでねー。
指導員さんが、子供たちの引率らしい人に「この先、子供たちたくさんいます?」と聞くと、オリエンテーリングか何かをやっているらしく70名くらいいるとのことだったので、「経路変更しまーす」と馬を返し、反対方向の坂道へ。

けもの道というのか、馬4頭分くらいの幅がある道ができていて、けっこう石などがごろごろしている道なのですが馬は気にとめるふうもなく歩いていきます。
「じゃあ速歩いきましょうか。馬が走るところ知ってるんで、勝手に走りますから」と言っているそばから、リキは扶助を送らなくても速歩になっています。馬場での動かなさは何だったんだー。リキの反動はそう大きくないんですが、ウェスタンの鞍は固いので、速歩だと座骨への衝撃がでかい。考えてみたら軽速歩とれば良かったのか。ウェスタン鞍だと、軽速歩っていう概念を忘れちゃうんですよね。

しばらく速歩で走って、割と車通りの多い舗装道路に出ます。指導員さんが、車の切れるのを待って自分の馬を道路に出し、ガソリンスタンドの店員さんのように車を止めて、私たちを渡らせます。車を待たせているのにのんびり渡るわけにも行かず、速歩で。
渡ったところからどんどん山道のようなところに入っていきます。もちろん道はちゃんとあるのですが。
少し平坦なところに出たところで、「駈歩出していきます。ちゃんとハミかけて、追ってくださいね」ハミをかけると言われても、実はあんまり理解してないんですけど・・・手綱をちゃんと張ってれば大丈夫かな?一応覚悟して、鞍の前橋についているホーンを片手で持ち、手綱を短めに持ちます。先導馬が駈歩を出したので、すぐ出るかと思ったのですが、速い速歩。反動がつらいので、はやく駈歩になってくれ〜。2回ほど軽打すると、ふっと馬が前に出る感じ、駈歩が出ました。上下の反動が前後の反動に変わって、上下よりもついていきやすいけど、とりあえずホーンは持ったまま。
指導員さんが振り返って、「あぶみ踏んで、かかと下げて」と、手のひらで反動ごとに下に踏み込む感じをやってみせました。そうか、ずっと踏みっぱなしじゃなくて、反動ごとに踏めばいいのか。そのとおりやってみると安定感があって、かかとも下がったようです。あ、これならホーンつかまなくても反動についていけるわ。

ときどき常歩を入れながらの駈歩に慣れてきたころ、畑や山の向こうにパディーフィールドの大きな看板が見えました。パディーフィールドも駈歩外乗をやる乗馬倶楽部ですが、あちらは「馬がガイジンだから」。使うコースが同じらしいのでときどきすれ違うこともあるそうですが、日の出乗馬倶楽部のI野先生いわく、「あちらさんの馬は大きいから、すれ違うと見下ろされるんだよ」らしいです。
そこからちょっと歩いた草地で休憩。手綱を伸ばしてやると、あっちの草、こっちの草と食べて回る馬たち。「リキだけちょっと蹴るから、後ろに近づかないでね」っておい、私の馬っすか?
「リキはうちで産まれた子なんだけど、よその牧場に行って戻ってきた出戻りなんですよ。そこでボスだったらしいから、女の子には悪さしないけど男の子同士だと強気なんですよ」
その間にも馬たち、ばくばく食ってる。

休憩を切り上げて、いったん道を引き返し、途中から違う道に入ります。今までの道よりも木が多くて、山道らしくなってきました。
「じゃあこの先からまた駈歩出して行きますけど」と指導員さんが説明してるそばから、「ボロでーす」。馬がボロ(糞)をしたら指導員に知らせるように、最初に言われています。人も通る道なので、そのまま道につくねておくわけにもいかないのでしょう、指導員さんが下馬して、人の踏まない林のほうにボロを蹴り込みます。
処理が終わって、指導員さんが馬に乗ろうとすると、また他の馬がボロをしました。またその処理をして、先頭に戻って指導員さんが乗馬したところを待っていたかのように、また他の馬がボロ・・・青草いっぱい食べて、お通じがよくなっちゃったんでしょうか。
ボロラッシュがなんとか終了したようなので、ふたたび駈歩。今度は少しずつ起伏のある道を走ります。

ゆっくりの駈歩にも慣れて、速歩よりも駈歩のほうが楽だな、と思い始めたころ、前方にさっきの青ジャージ軍団が。幅3メートル前後の狭い道なので駈歩で追い抜くわけにもいかず、速歩に落として追い抜きます。この子供たち、「こんにちはー」と大変礼儀正しいのは良いのですが、3〜5人くらいずつのグループで、かなりの人数いる。「こわーい」「かっこいいー」「さわりてぇー」の声をよそに(触らせてあげたいけど、自分の馬じゃないからね)、青い軍団が視界に入るたびに速歩に落としては、また駈けるの繰り返し。
しばらく行って、指導員さんが「ちょっとここで長めに休憩にして、やり過ごしましょう」ということで、道のわきの草地に入ります。
喜んで草をむさぼる馬たち、私はちょっとお尻が痛くなったので、鞍に立ち上がって休憩。ウェスタンの鞍は前橋が大きく立っているので、そこにふとももをもたせかけるようにすると楽に立てる。駈歩から速歩に落とすときの反動の変化についていけず、そのたび座骨をぶつけてるらしい。うー痛い。

けっこう草地でのんびりしましたが、なかなか青ジャージ軍団のとぎれる気配はありません。指導員さんが子供たちに直接「まだあとから来る?」と聞いてみても、「たぶん」と心許ない返事。自分がオリエンテーリングのどこらへんにいるかなんて、そりゃ分からないよね。
いい加減で諦めて、子供たちを避けながらの駈歩散策に出ることになりました。指導員さんから、「やっぱりムチ持ちましょうね」と、短鞭を渡されます。
駈歩を出してみると、ムチは使わなかったのですが少し出やすくなったような気がする。
「あんまり前の馬との距離が狭いと、止まろうとして速歩に落ちますよ」ということでしたが、リキは前の馬と距離が空くとペースが落ちる馬みたい。2馬身空くと速歩に落とそうとするので、脚で追ってみる。おぉ、今あたし駈歩で馬を追ってるよ。

しかしやはり青ジャージ軍団はとぎれず、ときどき速歩に落としてやらなければいけません。何度目か、速歩に落としたとき、突然リキのお尻が持ち上がりました。跳ねたか、と思ってバランスバックした瞬間、今度は前脚が上がる。
「何?」とリキのお尻を見ると、背後から「すまん、近づきすぎた」と相方の声。後ろのへーちゃんが近づいたのがイヤで、リキが蹴ろうとしたんですね。自分の乗ってる馬が、他の馬蹴ろうとしたのなんて初体験だわ。後ろにいた相方によると、「キレイに両後脚とも跳ね上がってたからなぁ」へーちゃんに当たりはしませんでしたが、蹴り上げてから後脚で立ち上がろうとしたのね。

昇り勾配の山道を駈歩で登っていると、指導員さんが振り返って「ここから速さ上げて行きますよ」と言ったかと思うと、ぐんと駈歩の歩度を伸ばします。うそー、何それっ?
しかし追いつかないことにはどうにもならないので、私もリキに脚を入れて歩度を伸ばしてみる。歩度が伸びたというか、今まで駈歩のリズムはタタタン、タタタンという3拍子だったのに、ダダッ、ダダッという詰まったリズムになりました。これってもしかして襲歩ちゃうんか・・・。
耳元で風を切る音がびゅんびゅんします。脇目振ってる余裕なんてなく、進行方向しか見えません。って、進行方向に見通しの悪いカーブがあるんですけど、ここはいくら何でもスピード落とすよね。
しかし指導員さんはスピードを落とさず、「カーブ、体沈めるようにして」と、内方に肩を落とすようにしてそのまま曲がっていく。えぇい、とにかく真似しよう。内方に体を沈めてカーブを曲がると、無事スピードを殺さず曲がっていけました。あ、これって内方脚踏み込むのと同じじゃん。
襲歩(たぶん)のスピードにもだいぶ慣れてきて、昇り勾配を駈けるときには腰を浮かせて前傾する余裕さえ生まれました。お尻も痛かったし、2ポイントの駈歩の練習も兼ねて。
青ジャージ軍団があらわれるたびにスピードを落とすので、駈歩がぶちぶち切れる。ついにはリキが駈歩をやめてくれず、抑えた駈歩のまま子供たちを追い抜いてしまったのが1度ありました。

最初に渡った舗装道路を渡り、もとの道へ。ここからはもう牧場への帰り道だから、のんびり行くんだろうと思ったら、「なんかすっきりしないからおまけ。こっちを走りましょう」と、来たときと違う道をまた襲歩(ということにしておく)。畑のわきのあぜ道のような、抜け道のようなところでしたが、こっちはほとんど人が通らない道らしく、全く邪魔されずに駈歩を堪能することができました。
けっこう石がごろごろしていたりする道をぶっとばして不安感がないのは、やはり和種ならでは、なのでしょう。

途中の休憩が長かったので、2時間近くかかった外乗もようやく終了。牧場そばの草地で、最後のごほうびに草を食べさせてから、牧場に入ります。
下馬して馬を馬繋場につなぎ、「ハミだけ外して水あげて下さい」という指示。リキは水を飲まなかったので、らんこさんにもらったニンジンをあげます。他の馬が前掻きしておねだりする中、リキはじっとこっちを見てるだけで催促はしない子でした。そうすると余計あげたくなっちゃうんだよね。
リキの首や腹は汗でびっちょりでした。あんなに走ったもんね。拭くか洗うかしてあげたかったけど、リキにはまだ次のお仕事があるようです。

第二陣がようやく到着、外乗に出たので私たちは1時間半ほどヒマになります。最初はクラブハウスでだらだらしていたのですが、ヒマをもてあましている私たちにオーナーが「弓打ってみるか?」と誘ってくれました。
紅葉台木曽馬牧場は和式乗馬もやっていて、流鏑馬の指導もしているのです。
「射場にいくぞ。うまく打てたら流鏑馬やらせてやるよ」
興味本位で、みんなで射場に移動。
本物の弓はとても重く、左手に弓を持ち、左手の人差し指で矢の中央あたりを持って弓と矢を垂直にします。右手で弓弦に矢尻をつがえ、左手の親指と人差し指で矢尻を持って弓弦を引く・・・「いたーい!」弓弦に指の股が当たってとても痛いのです。普通は革手袋するんですもんね。
何度かやらせてもらううちに飛ぶようにはなったんですが、私はとってもノーコン。空に向かって構え、水平に下ろす勢いで弓を絞って手を離すんだと習って、やってみると、手を離すタイミングが早すぎて矢が空に向かって飛んでいく。「ごめんなさい申し訳ありませんっ!」矢が山の中に入っちゃった・・・一本2000円。ほんとにごめんなさい。

外乗から帰ってきた第二陣も合流し、上手く打てるようになった人が流鏑馬に挑戦することに。
まず模範演技を見せてもらいますが、流鏑馬用の鉄砲馬場(50メートルくらいの走路)を駈けていく義高くん(木曽種)の速さ、尋常じゃない。スタートラインについた瞬間、本当に鉄砲のように駈け出すんです。あの速さで手放し駈歩するんですか?
それでもネタ作りに余念のないハイクリア氏が、楽しそうにチャレンジ。まず弓を持たずに手放し駈歩、両手を広げて走り抜ける。次は的に向かって弓を放つ手振りだけ。次は弓だけ持って矢は持たずに走り、的の前で弓弦をはじく。あっという間に慣れていくハイクリア氏、すげーや。ついに弓と矢を持って、矢をつがえた状態でスタート。走り抜けながら、的になっている網(ゴルフの練習用みたいなの)に矢を放ち、当てて見せました。おみごと。

そのあと、楚々とした中年の女性が「半年ぶりだけどやってもいいですか?」と、流鏑馬を始めます。オーナーに聞くと、「何言ってんの、巴組組長さんだよ」巴組というのは、紅葉台で活動している女性だけの流鏑馬サークルで、数々の大会で技を披露しています。道理で、かっこいいと思った。いいもの見せていただきました。
「これを和鞍(木製)でやると、痛いんでしょうねぇ」というと、オーナーは「痛くないよ、馬に乗るときは立って乗るから。座るもんじゃないからね」と言います。えっ、座らないって? 私、座れなくてさんざん苦労してるんですけど・・・「それは馬術の乗り方。うちの乗り方は遊びの乗り方だから、馬も人も長く乗れるほうがいいんだよ。馬術では座骨がどうとかいうと思うけど、馬の背中に当たるってことは馬も疲れるからね。ほら、うちの奴らはみんな立ち乗りしてるだろ」ホントだ。
「お尻が当たっててもいいけど、肉だけ。骨は当てないんだよ。肉だけで乗るの」
なんか、普段座れなかったり、座骨の扶助なんかでけっこう悩んだりしてるので、ものすごいカルチャーショック。確かにさっきの外乗は、座ってるときより腰上げてるときのほうが楽だったかも。
馬場も障害ももちろん止める気はないけど、これもひとつの乗馬のありかたなんだなぁ。

帰りは温泉に寄る予定でしたが、流鏑馬で時間を食ってしまったので中止。談合坂SAでほうとうを食べて(初めて食べました。うまかった。)、Ironさんの車で沿線まで送っていただきました。
いやはや、あんなに駈歩でぶっとばせるとは思わなかったし、それが怖くなかったのはやはり和種の安定感なんでしょうね。
また行きたいところが、またひとつ増えてしまいました。


牧場から見えた富士山。絶景かな



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