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(2002.12.7 あきる野・日の出乗馬倶楽部)
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朝起きると小雨がぱらついていましたが、まぁ倶楽部につけばどうにかなるのではないかと、いつもの時間に倶楽部へ。
武蔵増戸駅でMちゃんと会い、一緒に歩いて倶楽部へ。一応雨も止んでいるようです。倶楽部に到着してホワイトボードを見ると、私たちの名字がハイセイコーJRとジュンヨーのところにあります。ジュンちゃんはまだ私に抑えられる馬ではないので、「これはJRが私でしょ」と、JRを取りました。相方がJRを好きなのは知ってるけど、私も馬場でJRに乗っていないので、乗ってみたいんだよーん。

着替えをして、JRの馬房へ。引き手を持ってJRの馬房を覗くと、まだ口篭(食欲旺盛な馬がオガやボロを食べないように口につけるカバー)をつけているではないですか! 大ショック…つまりこいつ、今日は下乗りも何もしてない状態ってことです。もう私には全然重くて動かせなくて、運動会では常歩で障害をまたいでくれたくらいの馬なのに、体のほぐれてない状態なんて、どうなることやら。
馬房の中で口篭を外し、無口をつけて外へ連れ出します。

馬繋場で馬着を脱がせ、蹄の裏掘り。JRは体が大きいので、脚を持ち上げるのも重い。両前脚を掘りおわって、後ろ脚へ。左前脚に手をかけてみると、何だか脚がぷにぷにしています。手を離して、ちょっと離れて見てみると、脚が腫れているように見える。
隣の馬繋場にいた相方に、「ねぇJRの脚ってこれでいいの?」と聞いてみると、「そいつ脚太いよ、いつもそうだから大丈夫じゃん」と言うのですが、そんな風には見えないけどなぁ。以前よそで見たフレグモーネ(細菌性の脚が腫れる病気)の馬ほどではないけど、脚全体がむくんで見える。でも触っても痛がる様子はないので、とりあえず裏掘りをすませることにしました。
ブラシをかけていると、馬場で指導していたK野さんが私を呼ぶので「何?」と馬場の近くまで出て行ってみると、「JR、前脚プロテクター着けて下さい」「はーい」あら、前脚なんだ。まぁK野さんがそういうのなら、この後ろ脚は問題ないんだろう。

Mちゃんが準備してくれた毛布をかけ、ジェルパッドを置いて、その時点で正面から位置を確認。うん、左右均等だな。そうしてから鞍を置こうとすると、JRは背が高いので、身長の低い私には鞍を置くのも一苦労。置いてから反対側から確認してみると、ジェルパッドがずれていたので、引っ張って直します。
腹帯を締めるとき、ちょっと振り返って噛む素振りをみせるJR。ああ、この子ってこういう馬だったっけ、トリコみたいだなぁ。前回は自分で馬装をしていないので、忘れていました。
プロテクターをとりあえず自分でつけてみましたが、方向が合っている自信がない。ちょうどバイトスタッフのU村くんがいたので、「ねぇプロテクターこれで合ってる?」と聞いてみると、「あー違いますねー」やっぱり違ってたか。「このやたら黒い方(ベルクロがむき出しになる方)が前って覚えればいいんですよ」と言いながら着け直してくれました。要するに左右が逆だったみたい。

時間が来て、K野さんが「そろそろ出して下さい」というので、ハミをかけます。無口を外すと、待ってましたとばかりに首を振って遊ぼうとするので、「ジェーイっ」と鼻を押さえ込むと、すぐおとなしくなりました。頭絡を右手で持ってハミを噛ませようとすると、自分から口を開けて噛んでくれました。あまりにも楽だったので「おまえいいやつだー」と褒めていると、それを聞きつけたK野さんが「こいつで何かイヤなことでもあったんですか?」と聞いてきたので、「いや、そうじゃなくて、アルと比べちゃった」アルフォンスのハミかけには、さんざん苦労しているので…。
頭絡を整え、JRをつれて馬場へ出ます。途中で必ず道草を食いたがるのだけど、ここで甘やかしてはいけない。

馬場へ出て鐙を下ろし、Mちゃんが踏み台を持ってきてくれたので騎乗。鐙は自分の足の長さに合わせてありますが、踏み台に乗ってさえ、ずいぶん鐙の位置が高い。やっぱり背が高いんだなぁ、JR。
鐙に左足をかけ、ジャンプして鞍にまたがった瞬間、JRのうなじに目が釘付けになり、次の瞬間大笑いしてしまいました。そこには白い線が…たてがみをすっかり剃られて、地肌が見えて白い線のようになっていたのです。確かに彼は肌が弱くてかぶれやすいので、よくたてがみを短くされてモヒカンのようになっていたけど、これはずいぶん思い切って切っちゃったなぁ。たてがみのない馬ってヘンな感じ、寒そうだし。
そういえばさっきブラッシングのとき、たてがみが邪魔にならなかったっけ。なんでその時に気がつかないんだ、私。
他の馬の準備ができるのを待つ間、JRは首をぐいーっと下げて遊ぼうとします。足元がかゆいのか知らないけど、この子は走っている最中でもこれをする。手綱を強く引っ張って首を上げさせると、とりあえずそのときはやめてくれるのですが、とても力がいります。

今日の部班はFさんのダンス、相方のジュンヨー、私のJRの3頭です。I野先生が出てみえて、ダンス、JR、ジュンヨーの順を指示。左手前の常歩で蹄跡に出ます。私の後ろで、相方が「追いつきそうになったら巻き乗りして」と指示されている。後ろにジュンヨーがいるんなら、この重いJRではよっぽど頑張らないと、追いつかれてしまうなぁ。
最初から、2〜3歩ごとに強めの脚を入れます。JRの巨体は、脚の入れごたえが違う。ちゃんとかかとが腹に当たったな、という実感があります。がすっ。あれ、今の脚って、なんか固いところに当たったような感じだったな。でも腰角に脚が届くわけないし、腹帯より後ろに当たってるのに、なんでかな?馬の体がまだ固いのかなぁ、そんなことでこんなに固いもんかしら。

常歩でも、どうにか速歩が出る寸前まで持って行きたいのですが、やっぱりこの子は重い。どっかんどっかん蹴っているのですが、なかなか動きは良くならない。前のダンスがそんなに早くないし、JRが体が大きくて歩幅も大きいから、どうにかついていけている程度です。
常歩で各個に巻き乗り、馬を内方に曲がらせると、JRが耳を伏せました。え、なんで?確かに後ろのジュンヨーとは距離が近かったけど、そんなのあんたがトロいせいでしょ。それとも「曲がらせられたこと」が気に入らないんだろうか、そんなわがままな馬じゃなかったと思うんだけど。

「歩度をつめ」もっと気合いを入れて、がすがす蹴りますが、反応が薄いなぁJR。「はやあーし」鞭を入れてみますが、やっぱり1発では出ない…脚、舌鼓、鞭とフルに使ってようやく速歩が出ました。しかしモンブランみたいにオートマティックに速歩を続けてくれる馬ではないので、速歩が出てからもばっすんばっすん蹴りまくります。
反動が楽だと有名なJR、でも実は私、この子で正反動をとるのはほとんど初めて(過去に乗ったときはまだ正反動をやっていない最初のころか、障害かどちらかだった)。でも本当に反動が楽で、座ろうと努力しなくてもついていける。
しばらく速歩で走っていると、「ボロ避けて走れよー」と言われ、確かに蹄跡に点々とボロが落ちています。私の前のダンスがボロをしているのは見ていないので、これはきっと犯人は自分の馬だ…。JR、走りながらでもまったく止まらずにボロができるっていうのは、馬場馬として素晴らしい適性なんですけどね。

しばらく速歩で走っていると、突然JRが耳をきゅっと絞って、跳ね上がりました。えー、別に驚くようなものないけど?
「今のはジュンヨー近づきすぎだぞ」と先生が相方に注意しています。「何?」と後ろを振り返ると、「すまん近づきすぎた」。ジュンヨーがお尻にくっつくくらいまで近づいて来たので、JRが怒って蹴ろうとしたみたい。JRって、そんなことで怒る馬だったんだっけ。お前はウィンダムかよ、全く。

軽速歩をとって走りますが、「脚が弱いぞ、頑張って脚使って」こんなに蹴ってるのに…。「その馬、みんなが拍車付けて乗るから、拍車なしではちょっとやそっとじゃ動かないぞ」あ、なるほど。馬が刺激に慣れちゃってズブくなってるのね。
「軽速歩のままでいいから、各個に巻き乗り」巻き乗りの進入は素直に入りますが、2歩も行かないうちに止まろうとする。その上耳を伏せる。巻き乗りになると他の馬が視界に入りやすいらしくて、ウィンダムなんかもそのたびに怒ってるけど、こんな馬だったかなぁ。なんかイライラしてないかなぁ。
巻き乗りが上手くいかないので、内方の脚でどすどす蹴りますが、やっぱり常歩に落ちるので、内方に持った長鞭で腹をぺしぺし。それでも常歩のままなので、甘く見るなよ、と思って肩にムチを入れると、ちょっと跳ねるようなヘンな動きをしました。
「その馬、鞭より拍車のほうが効くぞ。鞭だと跳ねやすいから、あんまり使うな」
あぁなるほど、美星みたいだなぁ。この間美星が重かったときに、K村さんが「その馬動かせないようじゃ、JRは動かせないよ」と言った理由が分かった。

JRも体が温まってきたのか、継続して走れるようになってきました。気がついたら、最初は物見したり頭を下げようとしたりしていたのに、今はすごく気持ちよく走っている感じ。なんだか手綱を引っ張られている感じも、私が引っ張っている感じもなく、手綱がやわらかく感じる。もしかして緩んでる?と思って見ましたが、そうでもないみたい。歩度を伸ばすのにはやはり苦労するものの、なんだか走りやすくなってきた。

「たかしなさん、鞍の下の毛布が、右と左で長さが違うぞ」「え?」「片方は3分の1くらいしか出てないけど、反対側に3分の2くらい出ちゃってる」あら。最初に鞍を置いたときは、左右均等に毛布をたらしたつもりだったのに、ジェルパッドを直したときにずれてしまったんでしょう。「それだと毛布に当たって脚が効きにくいから、気を付けて」
気を付けてって言われてもなぁ…考えた挙げ句、脚を下から上に蹴り上げるように使うことにしました。JRのでっかい腹を、両足のかかとで毛布ごと持ち上げるようにすれば、脚が効くのではないだろうか。
常歩で歩くときも、かかとで腹をこすりあげるつもりで歩かせます。JRはふつうに歩いていますが、この子の場合首を下げたり止まったりしないだけでも、まぁやる気はあるらしい。

「全員とまれ。先頭Fさんだけ、1周駈歩しよう」
ということは、次は私が駈歩だな。JRで駈歩をするのは初めてです。出やすいとは聞いてるけど。
止まったとたんに、首をぐいーっと下げて遊ぼうとするJR、こっちも手綱をぐっとこらえて、頭を上げさせます。そうやって格闘しているうちに、Fさんとダンスくんの駈歩が終了、順番が回って来ちゃったじゃないの。
蹄跡を前に出すと、もうかなりやる気のJR、駈歩の扶助を出すまえに速歩が出てしまいました。だめだ、ちゃんと止まってやり直そうと思って停止させようとしたら、あらあらあら、という間に前にたーっと出てしまいます。この重い馬にあるまじき前進気勢、ひょっとしてやばくないか?と思って、あわてて外方の拳でサドルホルダーを持ちました。強く抑えて、ようやく止まります。
「無理しないで軽速歩でいいぞ、補助手綱(サドルホルダー)は持つなら内方」うーん、できるなら駈歩をやりたいんだけど、先生がそうおっしゃるなら無理するまい。抑えたはずが、ちょっと手綱を許しただけで、また簡単に速歩をはじめるJR。うそ、私いま脚入れてないよ?ちょっと待ってよ、止まって発進しなおそうよ、と思っているうちにもう1周が終わりそう。前のダンスのお尻が近づいてきたので、あわてて強く抑えて停止。なかなか止まらず、状態をかなり後ろに反らして拳を引きつけ、ようやく止まりました。この重い重いJRが、脚も入れないのにしゃっしゃか自分の意志で走るなんて、どういうこと?もしかしてかかり気味か、と考えて、長鞭を捨てました。さっきから鞭を入れると跳ねようとするし、持ってていいことはないような気がする。

ふたたび蹄跡で軽速歩。
発進は非常に楽でしたが、軽速歩で前のダンスに置いていかれそうになります。やっぱり重いんじゃん…。「もっと拍車、拍車!」と先生に言われ、座るたびにかかとで持ち上げるつもりで、強い脚を入れます。入れているつもりなのですが、「もっと脚使え!その馬が首下げたりしてないだけ、動かせてるんだから、自信持っていけ」確かに、走りながらでもすぐ首を下げようとするJRにしては、首が安定している。頑張って脚を入れていくと、自分の気持ちだけが前に出ようとするせいか、上体が前傾するような気がする。やばいやばい、とあわてて上体を起こし、また頑張って脚。
しばらく走らせて、「常歩に落とせ。手綱伸ばして、沈静化」と言われたときには、ちょっとホッとしたくらいでした。

沈静化で歩いている最中、スタッフのK村さんが近くにいたので、「やっぱ全然ダメだねー」と訴えてみると、「でも今日はずいぶん動かせてたじゃない」「ほんと?」「こないだは完璧にバカにされてたけどね」「ハハ、今日はちょっとだけしかバカにされてなかった?」「そうそう」
もともと競走馬の育成をやっていたK村さんは、拍車なんて使いません。使わないけど、JRにはものすごい脚入れるんです。どすっ、ぼすっと鈍い音が本当に聞こえるくらい。でもあれくらいでないと、「言うことを聞かせる」レベルには行かないのかも、この子の場合。

馬を馬場中央に入れて、3頭並べて停止。
下馬すると、A木さんがやってきて「K村が乗れっていうから、ちょっと乗るねー」というので、JRの手綱を渡します。手入れもできないので、クラブハウスからA木さんの騎乗を見学していましたが、やっぱり馬の動きが違うなぁ。そう思ってみていると、最近入会したばかりのYさんに、「やっぱり高階さんが乗ってるのと、私が乗るのとでは違いますね、知らない馬かと思いましたよー」と言われました。するとI野先生が、「そりゃあこれだけ鞍数が違うんだから、同じ騎乗してちゃあなぁ」「ねぇ、恥ずかしいですよねぇ」
そういう話をしているうちに、A木さんが騎乗を終える様子だったので、先回りして馬繋場へ行きます。JRをお出迎えすると、A木さんが「ちょっとこいつ、今日すっごく口やわらかかったー!感じなかった?」「あっ、なんかハミがふわふわしたような感じがあったんだけど」「それそれ。ハミ受けてるんだよ。今日のこの子、すっごくいい。K野くんが乗ったのかな」「下乗りなかったよ?」「うん、そういうんじゃなくて、何日か乗らないとこんな風にはならないと思う」調教ってことね。少なくとも首を下げなくて、反抗が少なかったのはそういう効果なのかな。
そのままJRの手入れに入りましたが、気になったのでついでにA木さんにも聞いてみました。「ねぇ、こいつの後肢はこれでいいの?」「あー、なんかいろいろやったみたいよ。腫れたり、そのあとの皮膚が硬くなったりしてその形になっちゃったんだろうね。でも丈夫な馬だよ、それであれだけ走るんだから」しかもこの脚で、障害まで飛べるんだもんねぇ。
そんな話をしながら、タオルで顔を拭いてやっていたら、鼻の下をぐにょーんと伸ばしていました。お、気持ちいいか?こういう顔されると、手入れ冥利につきますねぇ。

↓日の出乗馬倶楽部の馬場
日の出乗馬倶楽部の馬場

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