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(2001.6.23 千葉・オリンピッククラブ)
14鞍目↓
ジェンヌのアップ
パリジェンヌ。馬房に競走馬名パリジャンヌと書いてありましたが、きっと何かの間違いだと思う
今回は相方と同じ時間割で、午前中4鞍のうち1鞍目と4鞍目。
1鞍目なので、馬装からやらなければいけません。

今日の騎乗馬はパリジェンヌ。馬房に迎えに行ってみると、鹿毛の牝馬が馬房から首を出していて、指導員のAさんが馬房の前にいました。
「あ、今日はパリジェンヌですか?」
「はい」
「無口だけ僕かけちゃいますね。」
トライする前からスタッフが手を出すなんて、この子には咬み癖でもあるんでしょうか? ちょっと不安になりつつ、馬房の外から無口頭絡をかけてもらい、引き綱をつけてから馬房の扉を開けます。
引き出してみると、で、でっかい。5・6鞍目で落っこちたパトリシアもでかいと思ったけど、それより大きい。背中の高さが、私の身長(150センチ)より高いんだもん。

ま、とにかく馬房から引き出して、洗い場に連れて行きますが、さすがにこの子はちょっと力が強くて、ぐいぐい引っ張られて、道ばたの雑草を食べようとする。
ここの雑草は「除草剤がかかっているので、馬が食べないように注意してください」という掲示がしてあるくらいなので、なんとか食べさせないで洗い場にまっすぐ連れて行こうとするんだけど、とても私の力では馬に勝てるわけが(笑)
スタッフさんが飛んできて、洗い場まで代わりに連れて行ってくれました。
このときスタッフさんが「こーら、ジェンヌ」と叱っていたので、この子の呼び名は「ジェンヌ」に決定。

さて馬装。
ブラシをかけてる最中、メンバーの人が傍から見ていて「S先生、ジェンヌじんましん?ほらこれ」
言われるまで気がつかなかったけど、なんだか首の右側の毛が、ところどころぽつぽつと浮いている。 これが馬のじんましん?競走馬なら出走回避しちゃうよねぇ、大丈夫なんでしょうか。
「じんましんかしらねぇ。今は虫さされかもしれない。」
と指導員のSさんは大丈夫そうに言うのですが、これ、強くブラシかけすると嫌がりそう…軽くにとどめておきました。

で、ブラシが終わったのでツメの裏の掃除。
前の左脚から、今回は上手く持ち上げられ(もちろん馬の協力があってのこと)、鉄爪という道具で裏掘りと言われる作業をします。
右前脚は持ち上げるのに苦戦しましたが、これもどうにかクリア。
さて後ろ足にトライ、というところで指導員のSさんが
「あっ、この子横蹴りが激しいので、後ろ足は私がやっちゃいますねっ」
指導員さんがやっても、確かにゆっくりとだけど蹴ろうとする。へたくそな私では確実に蹴られそうです。
なんかこの子、けっこう怖いかも…体でっかいし…。

鞍と頭絡を取りにいくと、鞍とランニングマルタン(=ハミ受けを良くする装着具)は見つかったのですが、頭絡が見あたらない。
手近にいたスタッフに聞いてみると、
「それは先生に聞いたほうが早そうですね。聞いてきます」
さっき先生と呼ばれていたSさんが来て、
「昨日手入れで油とか塗ってたから、乾いてないのかも。代わり探してきますから、鞍を先に着けておいて下さい」
私はこのクラブの従業員をみんな一緒くたに「スタッフの方」と思っていたんですけど、従業員にも「先生(指導員)」「スタッフ(アシスタント、雑用)」の身分の違いがあったのをやっと知りました。そういえば着ているものも違うわ。

で、鞍を着けるためにジェンヌの左側に立つと、あらためてでかーい。
鞍の下に敷く毛布やジェルパッドを背中に乗せるのだけど、手を伸ばしてやっと背中に手のひらが触れるくらい。鞍を乗せるときもやっとこさ、高さに余裕がないために、中の毛布を引っかけてよれてしまったりしました。
で、腹帯を締めようとしたら、またさっきのS先生が
「あっ、この子腹帯締められるの嫌いで倒れちゃったことあるんで、私がやっちゃいますねー」
先生…そんな恐ろしいこと、にこにこしながら言わないで…(深刻な顔で言われたらもっといやだけど。)

それからS先生が持ってきてくれた頭絡は、「やっぱりジェンヌのが見あたらなくて」ウェンディのでした。
実はハミを咬ませるのを一人でやるのは初めてだった…でもジェンヌは、ハミは素直に咬んでくれました。けど、この頭絡じゃちょっときついかも(笑)
耳がなかなか入らなかったけど、ジェンヌはじっとがまんしてくれました。
さっき先生を蹴ろうとしていた馬とは思えない。あんた、体の前半と後半で性格違うんじゃないの?

さて、なんとか馬装を終えて、今日のレッスンは午前中4鞍のうち、1鞍目と4鞍目という変則タイム。
1鞍目までまだ10分くらいあるので、馬とコミュニケーションを図ろうかな。
「これ、パリジェンヌですよね?下乗りがあるので連れて行きます」
突然女性のスタッフさんに言われる(きっとハタチそこそこ、ういういしい感じ)。
「この子、下乗りしないと走りにくいのかな?」
「そんなことはないと思いますけど、先生に言われたんで…あーお客さんの下乗りするなんてキンチョーするー!」←かわいい。

というわけで、ジェンヌはレッスン前の馬場に引き出されて行きました。
ほかにすることもないので、自分より上手い人が同じ馬に乗るやり方を見て勉強しようと思って、時間まで見学していました。鐙の調整や腹帯の締め直しにすこし時間がかかったものの、あとはけっこう軽快に動いてる。
レッスンの時間が来て、馬場に降りていくと、スタッフさんがジェンヌから降りて「この子乗るんでしたよね?」と遠くから私に声をかけました。
近づいていくと、嬉しそうに「この子乗りやすいですよ!反応が良くて、何もしなくても乗れるかも」

しかし私には、その前の関門がありました。この高さの馬に、踏み台なしで上れるだろうか?
見ると、先に乗っていたスタッフさんは私と身長があまり変わらない。変わらないんだから、私にもできないことはないはず。
鐙の長さを、一番長いところからひとつ短いところにしてみると、やっぱり足が届かない(泣)。一番長くしてなんとか鐙に足がかかったので、気合いを入れて上るぞ(というより「登る」かも…)。
「鞍の一番上がつかみにくかったら、途中でもいいんですよ。つかむのは鞍のどこでも」
なるほど。右手で鞍の途中をつかんで、左手でたてがみと手綱をつかんで…あ、この鞍もサドルホルダーないや。ちょっと無理矢理でしたけど、体が鐙の上に持ち上がった。ここまで来れば大丈夫。
パトリシア落っこち事件はなんだったんでしょうか…慣れればできるのね。

さてレッスン。
この鞍の指導はF先生です(急に先生と呼ぶことにした)。
今日のF先生のイメージ指導:「みなさんの手が倍くらい長ければ手綱はいりません。手が短くて、ハミに届かないから手綱があるんですね。だから、みなさんの手がずーっと長くなったイメージで、手綱と手が一本だと思って乗って下さい」

常歩で隊列を組んで部班運動。
「1鞍目ですから、みなさんも馬も体がまだ固いです。ほぐれるまで、ゆっくり常歩で」
常歩ではほとんど崩れはなかったんですが、軽速歩を始めると自分のバランスがバラバラ。馬とちっともリズムが合わない。なんでだろう?
さっきのスタッフさんは、すごく乗りやすいって言ってたのに…

私がへたくそなのでジェンヌも集中できないらしく、この日は虫が多いこともあって、やたら首を振る。
軽速歩で周回している最中、何に驚いたのかは分かりませんが、急に馬体が一回跳ね、走り出してしまいました。軽速歩の走り方とは明らかに違う、かなりスピードの出てしまいそうな走り。
「ひゃっ!」
「ブレーキ、ブレーキ!落ち着いてブレーキして!」
ここでF先生が言っているブレーキというのは、普段から使っている手綱を引くブレーキ、それから膝で馬体を締めること。
私も急に走り出されたので相当パニックで、膝で馬体を締めてはいたんですが、手綱にしがみつく感じになってしまい、手綱を引くどころではありませんでした。
でも前の馬と3馬身程度しか離れていなかったので、前の馬に近づいた所でやっとジェンヌがスピードを落としてくれました。これはほんと、彼女が乗馬の調教をされているからだと思います。競走馬や未調教馬だったら、前の馬を追い越してどんどん走っちゃうんじゃないかしら。
実際は3完歩か4完歩程度のものだったと思うんですけど、長い一瞬でした。

そういえばその後、ジェンヌが跳ねたのと同じ場所で他の馬も跳ねて走り出してしまい、鞍上の女性は(終了時間が近かったこともあって)馬から下りてしまいました。いったいあそこに何があったんだろう…たぶん虫がいたんだろうと思うんですけど。

1鞍目が終了し、馬たちは2鞍目は休憩。
馬から降りて鐙をまとめ、蹄洗場に引いていく準備をしているとき、F先生が声をかけてきました。
「怖かったね!」
「怖かったですぅ。焦っちゃいました」
「でも自分で戻せたからね。あれが駈歩ってやつです。」
「そうなんですか…私にはまだ無理そうです」


14鞍目・虫のいどころは
(2001.6.23 千葉・オリンピッククラブ)
15〜16鞍目→
ほら眠そう。
蹄洗場のジェンヌ
午前中4鞍のうち、馬たちは2鞍目が休憩、私たちは2・3鞍目が休憩。
食事は3鞍目の時間にとることにして、2鞍目の時間は馬と遊んだり写真撮ったりすることにしました。
蹄洗場に戻ってみると、ジェンヌは眠そうでした。
この蹄洗場は7頭用で、3頭と4頭で向かい合う形になっています。ジェンヌを入れたのは3頭側の、馬場に一番近い端っこ。
ジェンヌや他の馬と遊んだりしているとき、突然背後でものすごい音が!
ジェンヌの対角の位置に繋がれていたコスモスが、突然後ろ足で壁を蹴ったのです。
何が気に入らないのか、高くいなないては(ヒヒンというより、キューンという感じの声)前脚で立ち上がり、蹄洗場の後ろの壁をどかどか蹴り続けます。馬は後ろ脚の力がものすごく強いし蹄鉄を履いているので、その音と言ってはもう、車が激突するくらいの音。
蹄洗場の壁に貼ってあるベニヤ板に穴が開いてしまいました。怖いよぅ。

一頭そういう馬がいると、他の馬も落ち着かなくなります。
コスモスの隣に入っていたルーラ(これはうちの相方が乗っていた馬)を、スタッフが慌てて2つ離れた蹄洗場につなぎなおします。
ジェンヌもあまり触らせてくれなくなり、ジェンヌの隣の馬も後ろ蹴りをはじめました。
自分の馬のそういうところを見てしまうともっと怖くなりそうだったので、とりあえず退散して食事。

さて午前中4鞍目の時間(私にとっては2鞍目)。
ジェンヌは3鞍目で他に乗っていた人がいるので、その人と交代。

私の前(午前中3鞍目)に乗っていたお姉さんはおそらく2日目か3日目(10鞍以下)の人だったのですが、私が踏み台無しで馬に登ろうとすると、びっくりした様子で「何もなしで乗れるんですか?」
「はい…まぁさっき大丈夫だったし、何とかなるんじゃないかなぁ…」
今度もなんとか、踏み台なしで上れました。
そのお姉さんの方が私よりも7〜8センチ背が高い感じだったので、このちっちゃいのが?と思ったんでしょうねぇ。そういえばさっきの3鞍目を見ていたら、彼女は踏み台を使って上っていた。
でも私も、1日目や2日目のときはジェンヌに上れなかったと思う。ほんとに慣れなんですね。

2鞍目の指導員はK先生。小柄な若い女性、私はこの人に習うのは初めて。
レッスン開始前に、K先生が私のほうに寄ってきて、「鐙が長くないですか?」と聞く。1鞍目と同じ長さなんだけど。で、1鞍目の長さはスタッフさんに見てもらって決めたんだったんだけど…
「やっぱり長いですね。ひとつかふたつ短くしてみてください」(鐙を吊っている皮は、ベルトのような感じで穴で調節できるようになっています)
短くしてみると、鐙が安定した感じがして、鐙の上で立ち上がるのが楽にできる。
「あ、いいみたいです」
「大丈夫ですね。じゃあ始めましょうか」

常歩から軽速歩へ、この辺は1鞍目とまったく同じなんですが、鐙の長さが違うだけでこうも違うか!
馬のリズムに合わせるのもうまく行くし、鞍に座るときも軽い感じで座れる。
何よりも、馬体を脚でちゃんと感じることができる。

私の乗り方が変わったのだろうと思うのですが、この鞍はジェンヌも機嫌良く走ってくれました。
軽速歩の際、鞍に立ったり座ったりするとき、鞍の後ろのほうにお尻をついたらすごく楽だったので、しばらくそれで走って、自分なりに上手くできたつもりでいました。
K先生はこまかい指導をする方で、後半のほうで一人一人にポイントを指導してくれます。
私には、「ちょっと脚が前ぎみなのと、鞍に座る位置はもう少し前ですね。」
えっ…つまり、正しい乗り方とは反対の姿勢で、自分で悦に入っていた訳だ(泣)。
かかとを下げ気味にして、脚を後ろに引き、座る位置は前。なおかつ前屈みにならないように。考えながら走っていると、また虫が飛んできてジェンヌが耳を絞ってまた暴れそうになる。
うちの相方が乗っていたルーラは、ついに後ろ脚で立ち上がって列を離れてしまい、部班から一時離れさせられていました。

自分としてはものすごく課題が残る騎乗のまま、今日のレッスンは終了。
馬場から蹄洗場に連れて行く途中の道で、またジェンヌが文字通り道草を食いそうになる(笑)
除草剤味の草を食べさせるわけにはいかないので、引き綱を引っ張ってやめさせたら、すでにジェンヌったら小枝を口にくわえてる。
それを引っ張って取り上げたら、むっとした顔をしていた(ような気がする)。

蹄洗場に連れて行き、馬装解除。ジェンヌは午後もお仕事があるので、手入れはなしでそのまま馬房でごはんになります。
馬装解除のとき、3鞍目で乗っていた人が「馬装解除やるんですよね?手伝います。どうしたらいいですか?」とやってきた。
「馬装解除はやったことあります?」
「1回だけ、手伝ってもらって」
私だってあなたに比べて、そう経験が多いわけじゃないのよ…指示を求められても(泣)。
一応私の方がちょっとだけ先輩だということで、解除の仕方を説明しながらやったのですが、このお姉さん、頭絡をつけたまま無口を上から着けようとする。一時休憩のときは確かにそうしますが、馬装解除のときは上から無口をかけてしまうと、その下の頭絡が外しにくいんですよね。

どうにか馬装解除を終えて、ジェンヌを馬房に連れて行きます。
連れて行く途中、ジェンヌの馬房があるのと反対側の方向の馬房の入り口に干し草が放置されていました。
道草を食べるくらいのジェンヌがそれを見逃すはずがない!
「ジェンヌ!どこいくの〜」
引き綱を引っ張っても、もちろんお腹空いたジェンヌのパワーに勝てるはずもなく、ぐいぐい引っ張られて干し草のある馬房のほうに連れて行かれてしまいました。
そのまま他馬の馬房に入ろうとするので、馬房の角で引き綱を激しく引っ張られて、手にすりむき傷と軽いやけどを負ってしまいました。
S先生が飛んできて「大丈夫ですか!」と心配してくれたのですが、私はちょっと呆然としていて
「大丈夫だと思いますけど…そうか、引き馬のときも手袋してないといけないんですよね、今手袋の必要性が分かりました」
「とにかくクラブハウスに行って、マキロンとバンドエイドくらいならありますから」
この傷は3日くらいで治りましたが、やっぱり手袋は大事だ。うん。

レンタルのメットやプロテクターを返して、ブーツ(これだけ自前)を脱いでクラブハウスに行こうとしているとき、馬房からものすごい音が聞こえました。どうもさっきと同じく、馬が後ろ脚で馬房の壁を蹴っているようです。「キュイーン」という感じのいななきも聞こえる。
するうちに、同じ音があっちでもこっちでも。馬は繊細な動物と言いますが、誰かがそうやって暴れ始めるとその気持ちが伝染してしまうのでしょうか。
なんだか馬房がただならぬ雰囲気でした。この日はハエやトンボが多かったので、そのせいではないかと思うのですが。
夏の乗馬って、そういう怖さもあるんですね。

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