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(2003.1.13 八王子・八王子乗馬倶楽部)
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これ、試合前の練習のときですね。
手前が相方、奥が私。こうしてみると寒そうね…。 試合前の練習風景
明日はいよいよ、八王子乗馬倶楽部で開催される新春ホースショーの日です。
I野先生と7時に待ち合わせているのですが、5時に起きないと間に合わないのでそろそろ寝ようかな…と思っていた午後10時、私の携帯電話が鳴りました。取ってみると日の出乗馬倶楽部の先輩のAさんからで、「今仕事で出張中なんだけど、明日試合だと思って、ひとこと言いたくて電話してみたんだよ」ということでした。「相方にだけは負けるんじゃないよ」と励ましの言葉をいただき、明日に備えて寝ることにしました。

試合当日、5時半に家を出ると、まだ空には星が出ています。
7時、I野先生との待ち合わせ場所である秋川駅に到着。あーちゃんを連れた先生の車に乗りこみ、4人で八王子乗馬倶楽部(以下HRC)へ向かいます。
HRCの駐車場には、馬運車が数台。いろいろな団体が、馬を連れて参加しているようです。Cちゃんと合流してクラブハウスに入り、トイレで着替えさせてもらいました。今日の格好は上らんに白シャツ・白タイ、ベージュのキュロット、ゴム長靴。髪はY先生のお勧めにより、ヘアネットでまとめました。
おとといI野先生に言われたように、Cちゃんから拍車を借ります。拍車は効きの悪い、良く言えばマイルドな丸拍車。シャンク(拍車のかかとから出た棒)の先がまるくつぶしてあるもので、シャンク長さは1.5センチ程度です。
初めて拍車をつける私は、着け方さえ良くわからない。Cちゃんとあーちゃんにつけてもらい、用意を整えて待機。クラブハウスでパンフレットをもらうと、すでに配馬が出ていました。私の乗る馬はボスキーとなっています。

もうひとりの選手であるSさんとも合流し、試合会場へ。会場ではスタッフらしき人達が、馬の下乗りをしています。最終のレッスンをしている人もいる様子。
スタッフさんがI野先生のところに挨拶に来て、「9時からの競技ですが、8時40分くらいから10分間だけ練習の時間を作りますので、乗る準備をしておいてください」とのこと。先生が「うちでは普段拍車を使わせてないんだけど、こちらの馬にはつけたほうがいいですか」と聞くと、「そうですね、うちの馬は拍車がないと動かないと思います」ということで、拍車をつけて乗ることが決定しました。
時間まで、股関節を回したりアキレス腱を伸ばしたりして、少しでも体をあっためます。10分間の練習と、競技時間20分。たった30分の騎乗で良い状態に持って行くためには、自分も体をほぐしておかないと。

「ただ『巻き乗り』って言われたら?」「各個に8mの巻き乗り」「隅角はきっちり回して、前の馬から遅れてても、直線で歩度を伸ばせばいいんだから」など、I野先生とあーちゃんを相手に、まるで試験勉強のように最後の作戦会議。そうこうしているうち、HRCのオーナー先生がI野先生のところに挨拶にみえました。オーナー先生がスタッフに指示して、今日の騎乗馬を紹介してくれます。
私の乗るボスキーは、すでに馬場に出て下乗りをされていました。黒鹿毛の、体が小さめな子です。うちのロッキーちゃんくらいかな?
下乗りをしていたスタッフの方が下馬して、「ボスキー乗りましょうか」というので、あわててグローブをして短鞭を持ち、馬場に入ります。ボスキーの鼻をなでて、「よろしく頼むね」と挨拶。おとなしそうな馬です。
鐙の長さを合わせてから、スタッフの方に足上げをしてもらい、騎乗。相方と私が騎乗したところで、スタッフの方が「号令ってだいたい分かります?『列へ』とかは」だいたい分かるけど、ローカルルールがあるかもしれないし、知らない振りをして教えてもらっとくのが得策だな。「教えてもらえますか?」「じゃあちょっと、隣の馬場でやりましょうね。こっちの馬場はちょっと散水車入るんで」
ラチを開けてもらい、隣の馬場へ馬を進めると、もといた馬場に大きい車が入り、水を撒き始めました。馬がびっくりするのではないかと一瞬不安になりましたが、ここの馬は慣れているらしく身じろぎもしません。うちの馬なんて、塩撒いただけでもふっとぶのになぁ。
散水車が入っている間に、馬場の地面に図を書いて説明してもらいましたが、「列へ」とは蹄跡を常歩で回っているときに、「列へ」と言われたら、先頭はその場から馬場中央へ入り、次の馬は一馬身奥まで進んで馬場中央へ入る、という、結果的にはいつもやっていることでした。相方のハーグ、私のボスキーの順で蹄跡を常歩で周回し、「列へ」の練習をさせてもらいます。

散水も終わったのでもとの馬場へ戻ると、「じゃあここからは先生に見てもらってください」と、I野先生にバトンタッチされます。I野先生があとから言うには、「まさか俺を馬場に立たせてもらえるとは思わなかったな」とのこと。Sさんもアモンに騎乗していて、3人で蹄跡を常歩で。最初、私が先頭で出たのですが、突然手応えが変わって前に出なくなりました。ダメだ、この子はたぶんハナが切れない。競技では自分が3番騎だということは分かっているので、この際無理して先頭に行かなくてもいいだろう。相方に「先に行ってくれる?この子、前に馬がいないとダメだ」と頼み、相方のハーグ、私のボスキー、Sさんのアモンの順になります。
「もっと元気良く歩かせて」の先生の指示で脚を使いますが、拍車が気になって思い切った脚が使えない。拍車のことも分からなければ、馬も知らない馬なので、効きすぎてふっとんだりされることを考えると、どうしても慎重になってしまいます。
「はやあーし」の指示で、脚を強めに使いますが、速歩がまるで出ない。うっ、この子重いわ。自分ではかかとで強く圧迫しているつもりだけど、まるで出ない。速歩を出すのに、こんなに苦労するのは久しぶりです。
どうにかこうにか速歩は出ましたが、持っていた短鞭をI野先生に取り上げられ、長鞭と取りかえられました。
できるだけ隅角をきっちり回ることをこころがけながら、蹄跡を速歩で行きますが、なかなか歩度が伸びないので前の馬に追いつけず、結果的に隅角をショートカットすることになります。かっこわるいなぁ。
さっき散水した水で、蹄跡に少し水がたまっています。ボスキーくんはそこを通るのがイヤだったらしく、ちょっと変な動きをしました。跳ねるとまではいかないのですが、たたらを踏んだという感じ。大したことはなかったのですが、慣れない馬なので、大丈夫かな?とちょっと不安がかすめました。
ふとラチ外を見ると、日の出の会員さんが応援に来てくれていました。馬歴は後輩にあたる人たちなので、みっともないところは見せられないなぁ。

時間がきたので、相方と私だけ騎乗したまま馬場に残り、先生とSさんは馬場の外に出ます。
そのまま蹄跡を常歩していると、ほかの2頭も入って騎乗しているようです。この競技へのエントリーは4名、ひとりはHRCの会員さん、もうひとりは大学馬術部からの参戦、それから相方と私です。
蹄跡を常歩していた相方と私の前後に彼らが入り、なし崩し的に部班の形になりました。「列へ」の号令で、さっき習ったとおりに馬場中央に入ります。
馬を並べると、「第3競技、部班馬場馬術5級認定者班の競技を開始します」とアナウンスが入り、それぞれ馬名と選手名を呼ばれます。あとで知ったのですが、アナウンスは馬事公苑などのイベントで活躍されている北野あづささん。彼女に名前を呼ばれただけでももう満足です(笑)。

「前へ」で、全頭同時に発進、蹄跡を右手前に出ます。常歩ではできるだけ上体であおらないように、隅角をきっちり回すように気をつけながら行きます。鞍の上で自分の座骨を動かしすぎないようにと思うのですが、つい動きそうになってしまいます。それで、いつもはあまりやっていないのですが、拳の随伴を少しおおげさにやることにしました。これが一番いいわけじゃなくて、一時的な対処法だと分かってはいますが、なにしろ今はきれいに乗ることが先決。
常歩のまま斜めに手前を換え、ボスキーくんはあまり内にささらない馬で、ちゃんと前の馬よりも外めを通っていけます。
「速歩用意」あ、ここではこういう号令なんだ。さっき全然速歩が出なかったので、かかとで強めに刺激。もし間違って早めに出ちゃっても、抑えればいいんだから。「速歩」号令とともに軽打、あれっ。すいっと速歩が出ました。これは号令に反応して出たんだろうけど、この際出ればなんでもいいや。

ボスキーくんの反動はあまり高くなく、正反動をとって座っているのは苦になりません。ただ、散水した水がたまっているところだけ、ちょっと反動が大きくなります。きっと水を踏むのがイヤで、足を高めに上げちゃってるんだろうな。
この子は重くて、前の馬から少しずつ距離が空いていきます。やっぱり馬間距離は1馬身にするものだから、できるだけ前に出したいんだけど。隅角もできるだけきっちり回していたのですが、そうすると前の馬からどんどん遅れていく。うーん困った、舌鼓が使いたい。でも舌鼓は副扶助だから、競技上はあんまり使っていいものじゃなさそうだ。
軽速歩の指示が出て、軽速歩をとってもほとんど歩度が伸ばせません。なんとか前に、と思って腰をあげるタイミングを早め早めにしていきましたが、あまり効果なし。いけないな、こんなに焦っていては、前傾する悪い癖が出る。落ち着いて、最近本で読んだ「体の前に大きい風船をかかえているつもりで」姿勢を整えます。

速歩のまま、「輪乗り」先頭について、10×20Mの細長い馬場の半分をつかうようにして輪乗りの進入をします。進入はとても素直な子で、前の馬よりちょっとだけ外めに回す、というのがとても楽。先頭の馬が止まりそうになったので、この隙に追いついておかなくちゃ。
1周して、蹄跡に出ます。「あれ?」先頭の馬が、また輪乗りの進入をしていきます。あ、そうか、輪乗りっていうのは巻き乗りと違って、指示が出るまでずっとぐるぐる回ってるものだったっけ。とりあえず素直に前の馬についていきます。「軽速歩」輪乗りのまま、軽速歩を取ります。そのまま5周くらいしたところで、「前へ」これはきっと、輪乗りをやめて蹄跡に出る指示だな。先頭がやっぱり蹄跡に出ていったので、続いて蹄跡へ。微妙に慣れない号令があったので、先頭じゃなくてホントに良かった。

蹄跡で軽速歩をしますが、やはりどんどん前の馬から遅れていきます。自分の目の前の馬は相方なので、ちょっとは私に気を遣ってゆっくり行くとかしてよぅ、くっそー(あとで聞くと、一応後ろの私が近づいてこないのに気づいていたそうですが、私を待っていると自分が前の馬との距離が離れてしまうから、あんまり抑えなかったらしい)。
斜めに手前を換えるとき、ついに「こういうところでショートカットしていいですからね」と言われてしまいました。言われるままにショートカットしましたが、こんなん言われてる時点で優勝はないな。 しかし拍車をつけているので、馬の腹をこすりあげるような脚を使うのに躊躇してしまいます。せめてキレイに乗るしかないので、ララミー牧場のグリーンカップでの評価表に「つま先を内へ」と書かれたことを思い出して、膝が鞍から離れないように、できるだけ親指で鐙を踏むつもりで軽速歩をとります。
審査員席から一番遠い隅角、日の出のメンバーが陣取ったあたりを通るときに、I野先生の小さく抑えた「拍車、拍車!鞭!」という声が聞こえます。もちろん馬場内の選手にアドバイスを送るのは反則で、それが分かっていても先生は言わずにいられないほど、私の騎乗がもどかしかったのでしょう。軽く肩に鞭を使いますが、それでもなかなか前に出せない。でも今日初めて乗る馬に、ピシッと鞭をくれるなんてことをやるためには、ちょっと勇気が足りません。

それでもボスキーも調子が出てきたのか、なんとか前の馬と2馬身くらいを保てるようになってきました。「いいじゃないボスキー、頑張ろうね」低い声で馬と自分を励まし、馬を走らせ続けます。
そういえば、手綱の手応えが軽いな。もしかして手綱が長すぎかな、と思ってちょっと下を見ましたが、そんなこともないみたい。でもなんだか手応えがふわふわして、馬に引っ張られてる感じもなければ、自分が引っ張ってる感じもない。もしかして、これが「馬の口がやわらかい」ってやつ?
常歩の号令がかかり、常歩に落とします。「列へ」あぁ、もう競技終了なんだ。やっとこの馬が分かってきたのになぁ、もう少し乗っていたかった。
先頭から順に、馬場中央に馬を進めて停止。うん、今の停止はうまくできたぞ。全頭がならんで挨拶、競技は終了しました。

ボスキーくんの首をたたいて愛撫、下馬。彼をスタッフさんに返し、自分は馬場の外に引き上げます。
日の出の会員さんたちに「お疲れさまでしたー」と迎えられ、I野先生のところにいって「すみませんでした」と言うと、「前進気勢不足だったな、拍車の練習はしとくべきだったなぁ」と言われました。拍車の付け方も問題だったようで、「もう少し高い位置にしとけば効いたのに」ということです。知らない、ということはこういうことなんだよなぁ。ただ自分としては、ここのところ一番気にしている騎乗姿勢がそんなに悪くなかったと思うので、納得の行く騎乗ができて良かった。
次はSさんの3・4級認定者部班、このクラスは駈歩部班です。速歩で輪乗りをしていたので、ここから駈歩に移行するな、と注視していると、やはり「駈歩用意」。そこから「かけあーし」の号令の瞬間、全頭が同時にふわぁっと駈歩が出て、感動してしまいました。
続いてCちゃんの一般速歩部班競技。Cちゃんは乗馬歴は私と変わらないけれど、若いだけあって私よりはるかに上を行っていて、どうみても部班の中で一番上手かった。これは優勝間違いなさそう。

参加費の中に昼食代も含まれているので、それをいただいてから日の出に引き上げることにしましたが、全員の競技が終わったのは10時半。お昼まで、I野先生のおごりで缶コーヒーなどを飲みながら待っていると、もう審査結果が貼り出され始めました。
自分の出た競技の結果を見に行くと、4人エントリー中、1位はうちの相方。確かに彼は、後ろから見ていても姿勢がきれいだった(悔しいことに)。私はと見ると、あろうことか4位。自分ではかなり悪くない騎乗だと思っていたので、納得が行かない。でも自分から見えなかった4番騎の方が相当上手かったのかもしれないし、でも悔しいなぁ、うーん。
I野先生が「点数差もちゃんと見てこい」とおっしゃるので見に行くと、1位の相方は43点、2位が39点、3位が37.5点、4位の私は36点。3位の人と4位の私の差は1.5。
「1.5なら、それはもう運がなかっただけだな。3つの賞品のうち、2つも日の出に持ってかれちゃ立場ないから、1人しかくれなかっただけだよ」と、先生は冗談交じりになぐさめてくださいました。

結果的に日の出の選手4人のうち、Cちゃんと相方がそれぞれ1位だったので、表彰式に出席しないわけにはいきません。お昼をいただいてから一度日の出に帰り、表彰式の時間までにHRCに戻ってくることにしました。
お昼を食べて日の出に帰ると、I野先生から電話連絡を受けていたママさんが出迎えて、「なんて言っていいやら…。」「えへへ、ダメでした」日の出にいる間は、会員さん達と「あかんかってーん」と笑い話にしながら使役したりしてました。時間が来たので、I野先生の車でまたHRCに戻ります。
到着競技時間がずれこんでいるらしく、最終競技のメーター障害飛越の最中でした。オーナー先生が気さくにも「冷えてきたね、どんどんあたって」と燃やしてくれた火にあたりながら、時間まで待ちます。すべての競技が終了し、会議机で作った表彰台が設置されます。オーナー先生や茂先生(アジア大会メダリストの細野茂之さん)がそこに並び、表彰式が始まりました。
表彰台の後ろには大きなラン科の植物の鉢、「ちょっとあれもらってくるの?うち置くとこないよー」と大騒ぎしながらも、この段階に至ってものすごく悔しくなってきました。何しろ相方はライバルであるので。くそー、次は負けねーぞ。

終了後、ふたたび日の出に帰ったのは6時を回っていましたが、会員さんや非常勤のY先生が待っていてくれました。相方が賞品にもらった大きな鉢植えは、記念品と称して倶楽部に引き取ってもらうことに。
後日、Sさんがデジカメで撮った写真を送ってくれましたが、その写真を見て確信しました。やっぱりあの試合では、騎乗姿勢だけは相方以外に負けてはいない。じゃあ何が負けたのかというと、前進気勢ということでしょう。馬を前に出せないということが、それだけ大きな減点対象になるということです。それじゃどうして前進気勢が足りなかったのかというと、拍車や鞭が思い切って使えなかったから。もちろん初めて拍車を付けたというハンデは大きかったのですが、普段の騎乗からの馬に対する気の弱さがモロに出てしまったという感じでした。馬に乗るときの思い切りが足りないということがよく分かって、新たな課題ができました。
I野先生があとからおっしゃるには、「姿勢だけなら2位だったんだよ、俺が見てても。俺の作戦ミスだよなぁ、あんなことなら棒拍(車)つけさせれば良かった。なんならリン拍(拍車の棒の先が滑車っぽくなっていて、ギザギザがついていたりするもの)でも良かったよな」「やめてくださーい、そんなもん付けたら余計こわくて脚使えません〜」
とりあえず、拍車の購入を真剣に検討することにしました。最近、馬場馬術をやりたいと思い始めているので、馬場をやるなら拍車必須だし、慣れておくのも大切かも。

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